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30話

 


 ああなんてことだ。最高に気分がいい!!




 思わず鼻歌を歌ってしまいそうになるほどに、気分が高揚している。

 足取りは軽く、自然と早足になる。

 もうじき休憩が終わり、調停が再開するが、その人物はまるで今から楽しい場所に赴くような程に足取りは軽やかだ。




 顔にかかる髪を振り払えば、金糸雀色の髪が照明に照されキラキラと光り輝く。


 目眩ましを掛けておいて良かった。

 じゃなければ浮かれている自分を誰かに見られてしまうからね。



 控え室へとたどり着き、扉を開け足を一歩踏み込んだ瞬間に今までの纏う空気が一変した。




「貴女の事だから急な変更も覚悟しておりましたが、調停で驚かされるよりも先にどうなさるのか教えてくださいよ。

 それで、次はどうなさるつもりなのですかヒルデハイア様」


 ソファーに腰掛けるのは、サイドに刈り上げられた漆黒の髪にガーネット色の瞳をした彼が、眼鏡を外しながら彼女に話しかけた。

 そんな苦言を気にもとめず向かい側のソファーに腰をおろすと、ため息が聞こえるが聞こえぬ振りだ。



「そうだな、今回は和解で許してやろうと思っていたが、やめだ。私は奴の持っている資産を奪ってやるつもりだ」

「薄々そうだとは感じておりましたが、分かりました。それで()()()をいつ表に出すつもりで?」

「あれについては既に手配済みさ」


 賑やかに話す彼女とは裏腹に苦虫を噛み潰したような表情をした彼は一息吐き、立ち上がる。



「分かりました。ではそのように遂行させていただきます。私も今回の件で漸く()()()を降りられます」

「あっさり引き下がるのだな」


 彼は眼鏡を掛け、声を変える。


「何事も引き際が大事ですので」

「それはお前が少々はしゃぎ過ぎたからではないのか?」

「そのくらいやらなければ、あの公爵の目に止まらないですよ」



 確かにそうだなと笑い声を上げれば、次には目の前の男は消え部屋の纏う空気が一変した。

 そして漸く彼女は背もたれから離れ、前のめりに態勢をかえる。そしてニヤつく表情を隠しもせずに思案する。


 漸く表に引っ張り出した狸だ。奴のどの資産に手を付けるからは既に決まっている。殆どの資産は国に徴収されてしまうだろうが、それも既に算段済みだ。あとは今後の研究にどう着手するか、スポンサーはどれくらいつくか等、脳内で凄まじい速さで計算していく。




 部屋の扉をノックされ、時計に目をやる。

 再開の時間か…。


「さて、と」



 立ち上がる時、金糸雀色の髪が頬に掛かる。

 視界が金糸雀色がベールのように視界を覆う。


 不意に先程出くわした少女を思い出す。

 顔を赤らめて私を見ていたあの少女。

 思わずふっと声が出る。



 態々こうして迎えが来たんだ。この問題をさっさと終わらせて、こちらも向かうしかねぇなぁ。



「夢物語を夢で終わらせないために、行くしかねぇよなぁ。そうだろ?」













































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