08
俺はなんとか彼女に伝えた。
俺のギフト、『探しもの』のこと。
ギフトで探した運命の人のこと。
そしてそれが目の前の女の子であること。
「私の名前はノーラ・ウィルホーゲン。運命の人って言われても、その、困る」
「でも本当なんだ。俺と君が……その、運命で結ばれているのは確かなんだ」
「なんかその言い方だと、違う風に聞こえるんだけど」
「う、いや。でもそうだ! 毎日、剣を振ってるよね? あの庭で。ギフトは剣の才能かなにか?」
「どうして知ってるの……?」
「え? だって俺はいつでも君がいる場所を探せるから……」
「なんかそれ、すごくキモい」
「……う、そう言われるとそうかも」
気まずい沈黙が落ちた。
「……いいわ。ギフトのことは分かった」
「うん。でも運命の人と会ったら何かが起こるとかじゃないみたいだなあ。もっとこう、どばーっと人生に変化があるのかと思ったけど」
「そうね。私の方にも特に何も変化は……ない」
「ん?」
「ないわ」
「ああ、うん」
プイっと横を向くノーラ。
「あ、いいこと思いついた。私の運命の人を探してよ」
「え? ノーラの? それって俺だろ?」
「そうとは決まらないじゃない。もしそうなら、それでもいいけど、とにかく探してみてよ」
「そうだな……やってみるか」
運命の人の、運命の人?
確かに探したことはない。
ノーラの運命の人は?
応答あり。
しかも、…………俺じゃないぞ!?
「…………お、俺じゃない」
「え? あ、そ、そうなんだ? ……意外」
「つまりこれはどういうことなんだ?」
「……多分だけど。私の運命の人を探すために会いに来た、とか?」
「え、それってなんか俺の運命じゃなくて……」
「そうね。私の運命を変えるためにやって来たことになるわね」
「そんな…………」
俺は愕然とする。
まさかそのような結末になろうとは。
「じゃあイクト。その、私の運命の人の運命の人は探せる?」
「あーそれは……無理そうだ。ギフトが反応しない」
「そう。直接、会わないといけないのかも」
「そうだな、そんな気がする」
俺の運命の人には別の運命の人がいた。
それは衝撃的な事実で、7年越しの思いが木っ端微塵に砕けた気がした。
「じゃあ私の家に来て、イクト。私が私の運命の人に会うために、案内しなさい」
「…………え?」
それって俺の運命も、割と大きく動くのでは?




