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異世界を行く魔力引きこもり  作者: はむかに
第2章 ヘリストラウス動乱
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石動耕兵の冒険者入門

「コーヘイ・イスルギ……ふむ、読めるわね」

「よかったですコーヘイ様っ!」


 普通だったら馬鹿にされている場面だが、初めてこの世界の文字で自分の名前が書けたのだから、ここは素直に喜んでおこう。

 本屋での異世界文字の習得に結局半日かかってしまい、皆と合流してからは、まず昼食となった。


 この街は冒険者がよく利用するのか、軽食店や食事つきの宿屋が結構ある。もちろん夜の繁華街も。

 女子が多いという事で、テラス式の小洒落たカフェ(らしき場所)でお昼となった。

 ミルミのおかげでレパートリーは増えたとはいえ、森では肉類中心になりがちだ。なので全員がパスタやピラフのような炭水化物メインの食事になった。栄養素の知識は普及してないみたいだけど。

 何より米が普通に存在しているのが有難い。


 食後のお茶もついて値段は銅貨80枚。日本の感覚で考えると銅貨一枚で10円くらいなのか。

 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨10枚が金貨1枚となる。さらに大金貨、白金貨と続く。


 そう考えると、魔道具の最低価格は約100万円か。高い。

 魔剣ともなれば金貨100枚は下るまい。

 冒険者の収入しだいになるが、いつか買えるといいなあ……。


 そんなことを考えながら、俺は買ってきた地図帳を捲る。

 依頼に関係する地域の詳細な地図はギルドから支給されるらしいが、俺はまず、この世界の事を知っておきたかったのだ。


「広い……」


 やはり世界は広かった。

 いま俺たちのいるのはイルクラント大陸。ヘリストラウス王国はこの大陸では最大級の国家だ。

 ゆがんだ逆三角形のような大陸の、南半球部分をほぼ占拠している。


 北半球は魔王山脈を挟んで『魔界域』になる。

 漠然とした海岸線と大まかな区分が引いてあるだけで、その実態は謎のようだ。


 他にも4つほどの目立つ大陸・諸島群が海を隔てていた。


(当然というか、知っている地形はどこにも無いな……ん?)


「え~と、ま……ムー大陸……」


 あるのかよ!

 というか、なんであるんだよ!?


 ひょっとすると、初代勇者か、別の召喚者が名付けたのかもしれない。

 探すと『アトランティス』もあった。こちらは列島だったが。


 意外な所で見つけた懐かしい単語、その意表をついた俗っぽさに、俺は思わず笑ってしまった。

 いつか行ってみたい!

 俺の異世界ライフの目的が、またひとつ出来たな。



 木造建築の多い街中にあって、ギルド支部は石造りの頑丈そうな二階建てだった。

 ヒイラギによると中庭に半地下式のグラウンドがあって、そこでランク認定試験を行うらしい。


 両開きのドアを開けると吹き抜けのエントランスがあった。

 壁際に依頼表の張られた掲示板、中央にはテーブルと長椅子、奥まった所に受付カウンターがある。

 お役所的な清潔感は意外だったが、おおむね予想通りの印象だった。


 カウンターでお姉さんから登録用紙を貰い、皆でテーブルを囲んで記入する。

 因みにヒイラギは定期的に登録を更新していたようで、身分的には現役冒険者だった。


 名前は大丈夫だが、俺については生年月日と出身地が問題だな。

 生まれた年は今年から16年引けば良いとして、日付は俺がこの世界に召喚された日、双月の6日とした。

 そうなると出身は召喚を行った神殿という事になるだろうが、実はこの街の近所という事で、いろいろ詮索されるとまずいので止めておいた。


 他に思いつく案もなかったので、ミルミと同じ村の名前を書いておいた。

 既に全滅した場所なので、もし聞かれても誤魔化す事ができるだろう。


「コーヘイ様と同じ……えへへ」


 ミルミがにまにましてる。まあ本人が満足しているならそれで良し。


 登録用紙は無事受理され、次はランク認定試験となる。

 これは別に受ける必要は無いのだが、そうすると最低ランクからのスタートとなり、薬草採取や土木工事の助っ人など、地味な仕事で日銭を稼ぐことになる。

 もちろんそれらは重要な仕事ではあるが、街から離れて暮らしている俺たちは毎日ギルドに足を運ぶわけではないので、出来ればなるべく実入りの良い大口の仕事を請けられるランクで始めたい訳だ。


「破壊魔王がちまちま草むしりなんてやってられますか! ここは華々しくデヴューして、ベテランどもの度肝を抜くのよ!」


 そういう意見もあるが、あえて無視しとこう。


 冒険者のランクはE~Aの5段階。さらにAの上にS、SSとあるようだが、これはほとんど名誉称号のようだ。

 最低のEランクには年齢制限が無く、小遣い稼ぎの子供やボケ防止の老人までいた。まあ薬草集めは人手がいくらあっても足りなさそうだしな。


 Dランクからは13歳以上の制限があり、実質命がけの依頼が入り始める。

 そこで試験官が実力を測り、任務達成に支障が無い者を選別するわけだ。いくら自己責任といっても、そうそう失敗して死なれてはギルドの仕事にならないだろうからな。


 俺の目標は、まあDランク以上。

 ヒイラギの登録ランクがCだったので、Dランクと3人以上のパーティを組めばCランクまでの仕事が請けられるからだ。

 戦闘能力の無いミルミはEランク確定で応援に回った。


 試験官は副支部長だった。暇なんだろうか?

 ヒイラギとは顔見知りらしく、何か話している。俺は試験場の脇に立てかけてある武器の中から木刀を選んで対戦位置に進んだ。さすがに石を投げたらダメだろうか。


「それでは試験を開始する。内容は対戦三本勝負、うち一勝すればDランク、三本全勝すればCランクだ。では始める!」


 俺は悠然と構える試験官に向かって、上段から打ち込んだ。当然のようにかわされるが、そこからの反撃も早かった。

 半ば本気で横合からの攻撃を避け、牽制を入れながら距離をとる。


「なにやってんの! さっさとやっちゃいなさいよ!」


 シルカがうるさいが、俺の目的は別に勝つことじゃない。ここであまり目立つのも問題だしな。

 身体強化は日常の最低レベル。ヒイラギから教わった剣術を使いながら、ギルドのベテラン冒険者の太刀筋を見る。これも修行の一環と考えていたのだ。

 思考加速をしながら相手の出方を読み、自分の手札を増やしていく。最初は裏をかかれて敗北したが、徐々に隙をつけるようになって行った。


 結局ぎりぎりまで時間を使って試験官の技を吸収し、最後に一勝してDランクが確定した。シルカは睨むの止めなさい。


「油断が無ければ二勝してたな。この分ならすぐにでもランクアップ出来るだろう。期待するぞ」

「ありがとうございます」


 副支部長さんの激励に応える。かなりの勉強になったし、実際感謝です。


「あ~もう! 見てなさい! あたしの華麗なる歴史が今始まるのよっ!」


 次はシルカの番だ。

 魔法使いの彼女の試験は、グラウンドの反対側にある的への攻撃。どうやってるのか、上下左右に動いてるのがあるんですけど。


 結果を言えば、彼女はDランクになった。

 的はおろか周囲の機材全部に火をつけ、あわや全焼の惨事を巻き起こしかねない事態になったため、最初の一撃で試験終了となったのだ。

 威力だけなら文句無くCランク以上だが、行動に難ありということで、ヒイラギ監督のもとパーティを組むことが条件とされた。


 シルカはぷんすか文句を言っていたが、機材の弁償をしなくて良かっただけでも有難いと思え。

 ある意味ギルドの度肝を抜くことにはなった訳だしな。



 こうして、晴れて俺たちは冒険者パーティとしてギルドの一員になった。


 パーティの名称が『破壊魔王シルカ一派』になっていたのに気づくのはまだ先の事であったが。


通貨とか物価とか難しいですねえ。年号や暦も必要な分しか考えてません。

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