プロローグ
俺、石動耕兵には路上で睡眠する習性はない。ゆえに、現在の状況を理解するのにかなりの時間を要した。大理石のような硬質な床の上に、パジャマ姿で寝ていたのだ。
「……なんだこりゃ?」
石であるはずなのに冷たさは感じず、床全体がほんのりと光を発している。その光に目が慣れてくると、周囲の状況が視界に入ってきた。白い石壁、ぐるりとめぐる石柱。頭上には満月と来た。なんか二つあるんですけど。
意識するように体を動かしてみる。石の手触り、体にかかる重力。……夢……じゃないよね?これ。
「動いたぞ!」
「せ、成功したのか?」
「確認します、……くれぐれも刺激しないように」
足元のほうから声が聞こえる。俺は一段高い場所に寝かされていたらしい。祭壇か?ここ。立ち上がってはっきりと見渡せる、自分の周囲に複雑に描かれた、丸い輝く図形。――魔法陣。
「……ファンタジー……」
やばい、これはやばい。
これはアレだ、中二病ってやつだ。いつも読んでた幻想小説やゲーム・アニメの世界に脳が毒されてる。コレはない。だって日本語聞こえるよ?下の人たち日本語話してる。どう見ても外国人、というか、いかにもな鎧とかローブとか着てるし。もしくは自分には日本語に聞こえるだけなのか?主人公補正だ。ご都合主義ってやつ?こんな恥ずかしいことが現実な訳がないっ!
「あわわわわっ!」
「もしっ!……もし、どうかお静まりください。……私の声が聞こえますか?」
今更ながらにおたつく俺に声をかけてきたのは、祭壇に上がってきた20くらいの女の人だ。光沢のある白いローブは、ところどころに金糸の刺繍が施してある。ちょっとおっかなびっくりだな。
「き、聞こえ、ます」
「よかった!……まずはご挨拶申し上げます、異界の人よ。ようこそヘリストラウス王国へ」
ほっとした様子で胸の前で両手を組み合わせる。……むにゅってした。今むにゅっとしたね?こんな場合でも目が行っちゃいます。どんな時でも男って奴ぁ。
「へりすと……王国?」
「ヘリストラウス王国、ここは北の国境に近いヤハルマ伯爵領の神殿です」
聞いたことのない名前。見たことのない場所。
どうやら、俺は、本当に、異世界に『召喚』されてしまった。
パジャマ一丁で。
初投稿です。出だしで一番悩みますね。一人称か三人称かで一週間悩んだり。
こんな調子で連載できるのか不安ですが、ぼちぼちやっていきます。




