94話 手加減してください。
「ねぇねぇねぇ、アルベロ先生。さっき居たあの黒い小人さんは一体何なんですか?」
「あ〜アレはな、一応精霊らしいぞ?」
「うそっマジで!?精霊って、あんな風にプニプニ頬っぺで変な喋り方するモノなんですか先生!」
変な喋り方?…ああ、エセな関西弁の事か。『私』の記憶のせいでそう言う違和感はあんまり感じなかったわ。
「いやな、恐らくアイツは他の精霊より特別変なんだよ。何て言うか…感情表現がハッキリしてるし。」
「本当にプニプニしてそうでしたね、あの頬っぺた。…はぅ、触ってみたかったな。」
カネレさんが、薄く頬を染めながらうっとりと呟いた。…長い前髪のせいで目元は見えないけど、きっと潤んでいるに違いない。(可愛らしいモノ好きなんでしょうかね?)
「あの精霊って、性別はなんでしょうかね?“僕”と言う一人称だけだと男以外にもルナもそうだし…。」
僕っ娘ですからね、ルナさんは。…それはそれで可愛らしいですが。
「さあな?つか、精霊に性別とかあるかどうかも不明だしなぁ……っと、お前ら早く教室行かねぇとそろそろ遅刻するぞ~。」
…わお、腕時計確認したら後五・六分しかないじゃねぇか。
「…皆さん、走りま「ほら行くぞ夜風っ。」ちょ、腕引っ張って走らないで下さいよヴェールさん!」
って掴んだのはヴェールさんでしたか…ってイダダダダダ!何コレ腕もげる!それ以前にヴェールさん足速いなオイ!
「(腕痛ぇぇぇえ!!)あの、ヴェールさん?もう少し腕の力を抜いてくれませんか?」
「ん〜、何か言ったか夜風?」
言いましたとも!腕痛い、痛いのよ!(ああっ、私の声が小さいのと走ってるせいで上手く聞き取ってもらえない!つか痛い!)
「おっとっとっと…よし、どうにかチャイムには間に合った!」
いてて…つか、ルナさん達をほっといて来て大丈夫なのか?
「あ、コトハ来た!」
…何で私達より先に居るんですか。
「コトハが腕時計を見ている時に僕達は先に行ったんだけど、いくら待ってもコトハが来そうになかったからヴェールに頼んで連れて来てもらったの!」
「それなら、一言くらい声を掛けてくださいよ。」
ヴェールさんの握力が強すぎて、私は腕がもげるかと思いましたよ…。…痣になってないといいなぁ。
授業中、こっそり掴まれていた所を見てみると、ほんの微かに青黒く変色していた。…そりゃあ痛い訳だわ。
放課後、とりあえず影の精霊さんに初めてあった校舎裏の木陰に来てみた。
「居るかなぁ。…ん?」
木の枝が不自然にゆさゆさ揺れてる?何事だ?
「う〜、引っ掛かってしもたぁ。」
「……。」
何してるんですか精霊さん。
「はっ、この気配はあの時…指環の時のお嬢さんやないですか?ゴメンやけど、助けてください!」
…ドジなんだなぁ、この精霊。でも…。
「私木登り出来ないので、その頼みは聞けないんです。」
「んな無慈悲なぁ!」
「…あ、枝を折って落すってのは「せめて受け止めて!」…じゃあ、気が向いたら受け止めます。」
抗議の声が上がる前に魔力を収束させた魔法弾を、影の精霊が引っ掛かっている枝の近くに打ち出してへし折った。
「うにゃぁぁあ!」
ポスンッ
「まぁ、何て気の抜けた声を出しているんですか。」
まあ、一度は踏むって言う目的は達成した訳ですから優しく接してあげますよ。
「え、え?お嬢さん受け止めてくれたんか?」
「どーせ、物理攻撃は効かないから受け止めなくても…「ありがとうお嬢さん!僕嬉しいで!」…まあ、喜んで頂けたなら結構です。」
むきゅーっと私の胸元に抱き着いてくる影の精霊の頭を、何となく撫でてみた。(いや、義妹のペルラと似たような行動をするもんだからつい…。)
…意外と髪の毛サラサラなんだなぁ。
「えへへ、何やお嬢さん攻撃的だけやないんやなぁ。」
「…それは貴方のせいです。私の普段はもう少し大人しいですよ。」




