51話 独り言は、本当に一人の時に。
中庭から走ってにげてきたはいいけど…まあどうにかなるでしょ。
「はぁ、暫くはクローシュ君との噂はされるだろうなぁ。「双子萌えぇ、ハァハァハァハァ…。」…ん?」
何だ、この私以外の荒い息は。しかも双子萌えって…え?
「ふひゃひゃ、やっぱりソル君は天然黒で攻める感じよね!あ、でもルナちゃんもあの天然ぷりで攻めてもらっても美味しいわ…。ルナちゃんはソル君が自分以外の女の子に優しくしているのを見て嫉妬して、その嫉妬心でルナちゃんはソル君を攻めてみるけど、逆にソル君の天然黒を発動させる…よし、今月はこの題材で新刊書こう!あ、漫研にもこの事連絡入れなきゃ!」
…うわぁ、引いてしまうくらいスゲェなこの人。(新刊って…小説書く人なのかな?漫研にも連絡入れなきゃとか言ってたし、漫画を描く人ではないんだろう。)
題材がソルさんとルナさんの双子兄妹…やべぇ、少し気になる。その小説はちょっと読んでみたいかも。(文字になる…と言うか、二次元化すると大抵そう言うのは大丈夫になるんです…何でだろう?)
「ああ〜、でも由榎ちゃんのあの女王様っぷりも攻めとして捨てがたいわ。由榎ちゃん×ルナちゃんも、確かな需要あるし…。いや、このネタは文化祭まで取っておきましょう、我慢我慢。……でも、ネタをメモるのは良いわよね…こう言うのって、書いとかないと忘れちゃうものね!」
わぁ、あの女の人凄い。どっから取り出したのかはいまいち分からないメモ帳に、ガリガリと凄いスピードで何か書き込んでいってる。…話の流れ的に、今書き込んでいってるのは、きっとアレなネタ何だろう。
「はっ、ディオ君総受けってのも良いわね!皆でディオ君を取り合っているんだけど、当の本人であるディオ君は全然気付いていないとか…やっべ、キタコレ!」
「…普段はあまり目立たないけど、琴波ちゃんも結構良いわよね。他の同級生からは一歩引いた所から物事を観察している感じ…。この子目線からのソル×ルナ、由榎×ルナ、ディオ君総受け…うん、イケる!」
…名前も知らない女の人、のその発想力には感服です。
しかも、考えている話の全てが『現実で起きても、別にあり得ない話ではない』ってのが凄いわ。
…少しきになるのが、何で私達の事を知っているんですか?
う〜んと悩んでいた私がふと視線をそらすと、少しばかり遠くの方から誰かが、恐らくあの女の人を呼んでいる姿が見えた。
「おーい、ニゲル先輩!凄く良いネタ持ってきまし「部長とお呼びなさい…って、それは真か後輩ぃぃぃ!」先輩っ、ソレ完璧に女の子がする顔じゃないです怖いですこっち来ないでくださいやぁぁぁ!!」
「ちょ、待てコラ後輩逃げんなぁぁぁあ!」
「そんな顔で迫ってこられたら、普通に誰だって逃げますって!」
「この顔は生まれつきだよ、悪かったなチクショー!つか止まれバカ!!」
「嫌ですよ、先輩顔怖いし!」
「顔から話離れろコノヤロー!」
大量の砂ぼこりを舞い上がらせて、『ニゲル先輩』と呼ばれた女の人は走り去っていった。(結局、建物の影に隠れていた私には気付かなかったみたいだ。)
…元気って…若いって本当に良いな。あんな風にバカ出来るから。(話していた内容は別にして、あの人達もなんやなんやで青春してると思うんだ。)
「…まあ、こう言う創作をするかどうかなんて結局は個人の自由ですし、別に私がどうこうと気にしたことではないんですがね。」
私がカップリングされているわけではなかったのが一安心よね。(ルナさんも由榎さんも好きだけど、そう言う『好き』では断じてないからね。)
双子については…あの言動は家族愛の範囲だと思っておこう。そう思っていた方が、何かといい気がする。
「ふむ、クローシュ君がブラコンとな?で、弟さんのシロエ君のために琴波ちゃんに様々なアプローチ、告白をするも玉砕したと…。」
「まあ、新聞部の信号機頭の三つ子姉妹達の調べだとこんなんだそうです。…ニゲル先輩、何か良い案が浮かんだんですか?」
「(…クローシュ君×琴波ちゃんと、シロエ君×琴波ちゃんも良いかもしんないな。)…よし、ありがとう後輩。私はまだ頑張れそうだ!…後輩よ、お主も悪よのぅ。」
「ニゲル先輩…ゲフン、ニゲル部長こそ。」
文芸部部長ニゲル・ベギーアデ・アルブスとその後輩は、何やら悪い微笑みをしていたとか。




