45話 知らなくてもいい事ってあるよね。
ペリペリペリペリ――
「チッこの手紙、意外としっかり糊付けされてやがる。…いっその事一思いに破り開けて、この封筒を買って入れた方が早いか?…封筒を見つけ出すのが面倒だからやめよ。」
ペリペリペリペリ――ベリッ
お、やっと剥がせた。…ちょっと封筒から不穏な音がしたけど、それは私の気のせいだよね!
封筒の中から出てきたのは、二つに折られた一枚の便箋だった。…当たり前か、手紙だもの。
「ええっと、何々…『拝啓 突然お手紙を書いてしまってごめんなさい。どうしても貴方に伝えたい事があったから…。』…ふむ…ここまで読む限りだと差出人は女性の方かな?言葉の選択や字が、どことなく女の人っぽい…ってだけで、まだ特定はしていないんだけど…。」
『貴方は、いつも静かに周りを見ている。…まるで別世界からこちらを覗いているかのように。』
…差出人は中二病な方なのか…?別世界とか何だよ。確かに、精神は別世界からきたけどさ。そこだけは認めるけど…これはねぇ?
『騒がしいクラスの中でも、砂埃が舞うグラウンドでも、静かな図書館の中でもいつも静かにいて、人の本質を見抜いているような瞳に、心を奪われました。』
アレ、私そんな大層な事してないよ?ただボーッとしているだけよ?ボーッとしている時は、大抵獣人のクラスメイトを見て、『…あの耳モフモフしたい。…尻尾でも可。』とかくっだらない(そしてセクハラ紛い)事考えているだけよ?差出人さん、私に幻想抱きすぎたよ……いや、待て待て。この手紙は私宛に書いたものとは限らないんだ。…ふぅ、何か落ち着いた。
『夜風・ヴェヒター・琴波さん。良ければ僕、クローシュ・ヴェレーノ・ジェニーと付き合って下さい。』
名指しきたぁぁあ!?え、男の人!?て言うか、ジェニーさんって誰だっけ?…確か同じ委員会の人だったような気がするようなしないような…。(私は図書委員です。どうでも良い情報ですが、ディオさんは保険委員、ソルさんとルナさんは揃って無所属、由榎さんは私と同じ図書委員です。)
あ、う、えぇぇえ!?……あ、あれか。バツゲーム的なあれか。ジェニーさんは、バツゲームで私にラブレター的な手紙を書いたのね?そうなのね?(どうでも良いど、『拝啓』で始まったんなら文末に『敬具』付けろよ!…変なとこでキレたな、自分。)
「ふぃぃ、これなら納得。…柄にもなく動揺してしまったぜ。」
「何がぁ~?」
「いや、だから……って、うお!!ルナさん!?…いつ辺りに帰って来てたんですか?」
後ろかどこからか声がして、何の気なしに答えようとして横を向いたら、意外と至近距離にルナさんの顔があって驚いた。
「う?コトハが『柄にもなく動揺してしまったぜ。』って言った辺りから!」
よし、結構最後の方だ!手紙の内容を見られているわけではないし、このまましらばっくれれば…。
「…(ジーっ)…コトハ告白されたの!?やったじゃん!!」
開きっぱなしにしていた手紙をガン見されてた!?(完璧に自爆じゃないか!)……いや、ラブレターを貰って恥ずかし気持ちはありますけど、どちらかと言えば、『何で私なんだよ!!!?』と言った困惑の方が大きいわけでして…。つか、これが本気で書かれたものかも確証がないのに、この手紙に書いてある事全ての内容を鵜呑みにするのはちょっと…。
その旨を懇切丁寧ルナさんに説明したところ、「またまた照れちゃって〜!コトハ可愛い!」と言われた…。だーかーら!何でそうなるんだ!照れてないよ?それ以前に顔に熱なんぞ集まっていませんよ?寧ろ冷や汗が大変なことになってるんですが!!
…愛の告白なんぞ、今の今まで――『私』の時も琴波になってからも、非リアの私はされたことなんて一度たりともありませんとも、ええ。かなり初ですよ、悪いですか?




