33話 心臓に悪い事はヤメテ。
気が付いて目を開けたら、真っ白な天井が目に入った。
「あれ、ここどこだろ「コトハが起きたぁぁあ!!」グヘハァア!?」
「良かったよ~!いきなり教室で倒れるし、意識戻らないんだもん!!」
目を覚ましてすこしばかり声を発した途端、腹部に強烈な衝撃を感じ、またさっきと違う意味で意識が飛びかけた。
こ、声は…ルナさん…だな。…このとてつもない衝撃は、全力で体当たりでもしたのか…?あと、体当たりした後の腹部がギギギッと締め付けてくる…。腹の中の、いろんなものが…出る……!!と言うか、その小さくて細い腕のどこからそんな腕力が出てくるの!?いや、マジで教えて。
「オイコラ、ヘニミス妹。夜風が違うベクトルの眠りに入りそうだから、いい加減離してやれ。」
「先生!違うベクトルの眠りって何ですか?」
「違うベクトルは違うベクトルだ。それ以上でも、それ以下でもない。」
「先生訳分かんないよ!もっとちゃんとした説明してっ!」
「わりぃ、俺こういう説明苦手でさぁ。…とりあえず、違うベクトルの眠りに入りそうだから離してやれ。」
「話が振り出しに戻ったよ、先生!」
ちょ先生、もっと本気尚且つ真面目にルナさん止めてぇ!?マジでヤバイから!マジで入学式当日に母様にやられたみたいに昇☆天しそうだからぁぁあ!!(自分で思っといてなんだけど、やっぱり“☆”ウザいな。…うん、今度から絶対使わない。)
「ル…ナさん、か…なり苦し…いからは、離し…てくださ…い。」
「うぅ、分かったよ。…って、コトハ顔真っ青!まだ具合悪いなら寝てなきゃ!」
やっとの事で声を発せたよ…。…具合悪くさせたのルナさんですよー…なんて言えるわけもなく、ルナさんによってベッドに押し込まれる私。(知らぬが仏とはまさにこの事を言うんだろうな。)
「ヘニミス妹、今のは腹部を締め付けたお前が悪い。」
「うぐぅ…だって、コトハの事心配だったんだもん。今朝から顔青かったし、教室に入ってちょっとしたら急に意識飛ばすし…。」
随分と心配掛けてしまったようだ…、謝らなければ。
「すみません、ルナ…ゲホッゴホ…さん。私は…ゴホッゴホッ!!…大丈夫なので、心配しなくても…ゲホッゴホッ…ゴホッ…だいじょうゲホァッ!」
「うん、夜風が大丈夫なのはレッヘニミス妹や俺にも十二分に伝わったから、もう喋るな。余計に風邪が悪化するぞ。……ファイスカの親父さんには、俺からちゃんと言っとくから。」
…はっ、重大な事忘れていた!ファイスカ家当主のヴォルカン・イグニース・ファイスカ様に会う(そして恐らく消し炭にされる)約束してたんだ!
「は、這ってでも…芋虫のように這いつくばってでも行きます…!」
「いや、俺一応保険医だから。一応医師免許も…外科だけど持ってるから。…ドクターストップだ、諦めろ。」
「先生!例えドクターストップだろうがティーチャーストップだろうが、今ヴォルカン様の所に行かないと私の家が社会的にアレな事になるんですよ!」
「ティーチャーストップなんて言葉は聞いたことないぞ?…あと、アレな事ってなんだよ、アレな事って。」
「…私の口からはとても言えない様な、悪い意味で凄い事になるんですよ!」
もし家族(ユリナさん達含む)になにかあったら…私……私。
「斯くなる上は腹を切るしか道はっ…。」
「イヤ、保険医の前で怪我しようとすんなっつの。」
先生、これは止めないで!私の覚悟だから!
「いやぁ、最近の子は面白いね。それに、ちゃんと社会の事も見ているんだなぁ…おじさん感心しちゃったよ。」
先生と、端から見れば寸劇の様なやり取りをしていたら、後ろから声がした。
やな予感がしつつも振り返ってみて、直ぐに後悔した。
そこに居たのは、ファイスカ家現当主にしてリアマ嬢のお父上の、ヴォルカン・イグニース・ファイスカだったからだ。
あ、死んだ。私、確実に死んだ。




