表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの捜査官  作者: ハチワレ
学院編
8/17

第8話 愛人(誤解)

放課後は第5魔術研究室——改め、ソルベ研に向かう。


入学してから私の魔力量、本当に基礎魔術4つの適正が無いのかの確認や、私の能力についてソルベール先生に調ベてもらっているのだが、進捗はあまり良く無い。


「……本当にあるのかな。」



ないも同然の魔力量なんて、意味がない。

こんなんじゃ——調査してくれている先生にも、送り出してくれたお父さんとお母さん、それに村にも…私は何も返せなくなるの…?


なけなしの魔力があっても魔法が使えないならただの人だ。


今はとにかく先生に任せるしかない。

少なくとも、ここにいる間は、たくさん学べるのだ。村の助けになれるよう、いただいていけるものはいただいておこう。


(…プラスに考えよう、よし!)



「あれ?」


研究室に先生の姿はなかった。


ソファーに腰を下ろして先生を待つ。

ここは北校舎であまり使われることがないせいか、廊下まで空気の流れが止まっているみたいにすごく静かだ。


窓から聞こえる学生の遠い声が、まるでここの世界だけを切り取ったみたく、居心地が良い。

柔らかいソファーに身体を預けたとたん、ふっと肩の力が抜けた。


しばらく耳を澄ましていると、廊下からテンポの速い足音が聞こえてきた。


(先生?

別に急がなくても大丈夫なのに。)


「ライラン・ソルベール!!!」


ガタンっ!

大きな音と共に入ってきたのは先生ではなく、焦った顔をした同じクラスの男子生徒だった。


名前は…なんだっけ?

銀髪が綺麗で特徴的なので外見は覚えてる。


彼は先生が居ないとわかったのか苦い表情をした後、私に気づいたようだった。


「あれ、君、確か…」


先生に用があるなら、一緒に待たないか誘ってみよう。

話しているうちに仲良くなるかもしれないし。


「あの、もし良かったら、いっしょに——」


「ライラン・ソルベールの愛人か。」



…は?


……は???


「あいつも子どもに手を出すとか悪趣味だよね。

君がここにいるってことは、ソルベール子爵もすぐに戻るんだろ?

僕は邪魔になりたくないからお暇するよ。じゃ。」



…アイジン?

……あ、異人?

………I‘m JIne?


……………“愛人”?!?!?!


待て待て待て待て待て待って!


だんだんと小さくなる男の子の背中を追いかける。


「待ちなさいよおおおおお!!!!!」


彼は私の声に振り向くと、「うぉ!」っと小さな悲鳴をあげてさらにスピードを上げる。


階段を脱兎の如く駆け降りる彼に対し、私は手すりを飛び越えてショートカット。

山を駆けずり回っていた脚が、ここぞとばかり火を噴く。


「ぬぐっ!」

「待って!」


飛び乗って押さえ込んだのは、彼が1階に降り立った瞬間だった。


「さっきのどういう意味!?

私は先生の愛人でもなんでもないんだけど?

というか、私だけでなく先生に対しても失礼だって、わかってるの!?」


胸に跨り、胸ぐらを掴んで捲し立てる。


彼は目を白黒させたと思ったら、いきなり私を睨みつけた。


「…普通、ありえないでしょ。追いかけてくるとか…馬乗りとか。」


「いいから訂正しなさい。さっき言ったこと撤回して。」



「いやー青春ですか。いいですねぇ。」


スッ…スッ……


微かにローブの擦れる音が、階段上からじわりと迫ってくる。

けれど——靴音が、ない。

その不自然さが、ゾワリ…背筋を凍らせる。


「でも、少々残念です。俺は子供を相手にするのはあまり気が進みません。

しかも、2人に増えたなんて…非常に残念です。」


降りてきたのは、背の高い黒ずくめの人間だった。

体型を隠しているのかヒダの多いローブが印象的だ。


「どけっ!早く逃げろ!」


予想だにしない急展開にさっきの私の威勢はどこえらや。


状況を理解するより速く、こちらに向かって投げられたナイフが視界に飛び込んだ。


しかし…次に瞬きをした時、目の前にあったのはナイフ——…ではなく、深緑が綺麗な壁だった。



いや、違う。

それは壁じゃなかった。


スーツを着たソルベール先生の大きな背中に、思わず息が止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ