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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
終章 打倒! 悪のヤドリギ!
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イケノくん戦!7



「バカやろう! さっさとしないと手遅れになるぞ!」


 ワレスさんに罵られた。

 ですよね。すいません。


「でも、母上が……」


 蘭さんは自分のお母さんのことだ。判断がにぶってる。

 僕がかわりに指示を出す。


「シルバン! ミダスタッチ! ロランのお母さんを石化させて」


 シルバンはうなずいて走りだしたけど、素早さ数値が低いからね。

 夢遊拳のロレーヌ様に、ヒョイっと軽くよけられた。


 見かねたワレスさんが舌打ちをついて、ロレーヌ様のまわりに竜巻を呼んだ。身動きをとれなくしたのち、その中心に雷を落とす。

 ロレーヌ様は戦闘不能になった。

 ワレスさんはロレーヌ様を抱えて戻ってくる。


「今だ、やれ!」


 そのあいだにも、イケノくんの体は膨張し始めていた。

 僕はあわてて叫んだ。

 傭兵呼びじゃ心もとない。

 もう、まにあわないかもしれない。


「全財産なげうつ〜!」


 わあッとときが響き、ダカダカと、よろいの集団が現れる。

 イケノくんの姿はよろいに囲まれ、まったく見えなくなった。


 なにやらボコボコにされてるようで、ヤドリギの悲鳴が聞こえた。

 王様の体のときに一回、これで二回めの総額なげだ。

 ヤドリギにはこれでも足りない。

 コイツのせいで、世界中の人が苦しんでる。

 僕たちの知ってる人たちだけじゃない。僕らの知らないところでも、コイツの起こした悲劇が数えきれないほどあっただろう。

 そのすべての人の思いと痛みだ。

 たっぷりと味わってもらわないと。


 数分後、よろいの集団は去っていった。

 床にイケノくんが倒れてる。

 さすがに戦闘不能だろう。

 ところがだ。

 出だしでちょっと手間どったせいだろうか。


 どう見ても死体にしか見えないイケノくんが、ズルズルと不自然に動く。

 体じたいが手足を使って這ってるわけじゃない。まるで、見えない手でひっぱられているようだ。人形がひきずられるように、スッ、スッと硬直したまま床の上をすべっていく。


 あッ! 喉のところがモコモコしてる。プツン、プツンと少しだけ肉がゆらいだ。

 ヤドリギだ。カケラが悪あがきしてるんだ。

 ここから逃げだし、増殖の種を使って、まだ再生しようとしてる。


 僕がかけだそうとしたときだ。

 そっと、アンドーくんが手を出して制止した。


「アンドーくん」

「わにやらせてよ。セイヤを自由にしてやらんと」

「うん……」


 アンドーくんはかけだした。

 ナイフを片手に、イケノくんの上に馬乗りになる。


 刃がきらめいた。

 アンドーくんはイケノくんの喉に、切っ先をつっこんだ。

 イケノくんの口から、人でも獣でもないような轟音が発した。

 トドメだ。

 わずかに残った増殖の種に、その一撃はクリーンヒットしたようだ。


 あけたままのイケノくんの口から、黒い霧が炎のように立ちのぼった。

 その霧は人の顔のように見えた。悪のヤドリギだ。鏡に映っていた青い肌の薄気味悪い男。


「あれが本体だ!」


 僕が叫ぶと、蘭さんがうなずく。


「最後はみんなでやりましょう。みんな、行くよー!」


 蘭さんの号令のもと、その場にいる全員が最強の呪文を唱える。

 風や雷や炎や水が、いっせいにヤドリギの本体を襲う。

 霧は水や氷で冷やされ、風にさらされ、雷に打たれて粉々になり、さらにはカケラも残さず焼きつくされた。


 やった……。

 今度こそ、やったんだ。


 悪のヤドリギを倒した!

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