表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
終章 打倒! 悪のヤドリギ!
365/377

クズのなかのクズ



 長い洞くつをいっしょに切りぬけて、レッドドラゴンのときには助けてもくれた。

 もとの友達に戻ってくれたんだと信じかけてたんだけど。


「セイヤ……なに言っちょうで? もとに戻っただなかったか?」


 アンドーくんの問いかけにも、皮肉に笑うばかりだ。


「一度、取り憑いた者を、そう簡単に手放すと思うか? 愚か者めが。友達ごっこは楽しかったとも。なぁ、勇者ども」


 ん? なんか僕に話しかけてる?

 変だなぁー。

 勇者は蘭さんなんだけど。ま、いっか。


 みんなの目が、「コイツ何を勘違いしてるんだ? バカじゃないのか?」って言ってたんだと思う。

 ヤドリギはとうとつに怒り狂った。


「なんだ? おまえたちのその目はー! いいか? 私が本気になれば、おまえたちなど敵ではないのだぞ? 目にもの見せてくれます。ほほほ」


 そう言うと、ヤドリギのイケノくんは走った。

 む? えらそうなこと言って逃走するのか?


「待て! ヤドリギ! 逃がさないぞ」


 僕らはこわれた扉から逃亡をはかるヤドリギを追いかける。

 城内をあっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

 けど、ヤドリギは逃げるつもりじゃなかった。ヤツはヤツなりの戦いかたをしてただけだったのだ。

 ほんと、クズいなぁ。


 ヤドリギがかけこんだのは、最上階のすみにある扉。

 今回、お城のなかを見物してないんで、僕はそこがなんの部屋なのかわからなかったんだけど、蘭さんの顔色が青ざめるのはわかった。


「この部屋は……」

「どうしたの? 蘭さん」

「ここは……王族に不義や謀反などの問題行動のある者が出たときに入れておくための、専用の牢屋のようなものです。今は使われていないはずなんですが……」


 今度はワレスさんの顔つきが変わった。チッと小さく舌打ちをつく。舌打ちついても美男子はさまになりますね。


「ロラン。今ここで言っておく。シルキー城で、おれが助けに行ったとき、おまえの父上はまにあった。現在、王都から離れた小さな城で身分を隠して養生していただいている。だが、隣室の母上は……まにあわなかった。すでに魔物にさらわれたあとだった。言うとおまえの心が乱れると思い、話をはぐらかしてばかりいた。すまない」


 そうだったのか。

 ということは……イヤな予感がする。

 シルキー城を襲ったのは、猛(裏切りのユダ)の隊だ。

 でも、蘭さんのお母さんをさらったのは別の隊だったのかもしれない。

 それが、もし、ヤドリギの隊だったなら……?


 イヤな予感は、たいてい当たる。

 扉をあけると、イケノくんをのっとったヤドリギが真正面に立っていた。

 一人ではない。

 蘭さんによく似た、とても美しい女性を小脇にかかえていた。女の人は意識がない。魔法で眠らされているのかもしれない。


「母上!」


 ああ、やっぱりね。

 蘭さんのお母さんだったか。


「ひひひ。それ以上、近づくと、この女の命がないぞ?」


 むーん。

 この外道がぁー!


 どうする?

 どうする? この状況。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ