表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
終章 打倒! 悪のヤドリギ!
364/377

これで終わり……ではなさげ



 これで、すべてが終わったのか?

 悪のヤドリギ、意外とあっけなかったな。

 てか、二千億ダメージとか、あっちゃダメでしょ。チートにもほどがある。じっさいに、いくら持ってたのかはちょっとわからないんだけど、ダンジョン一つ攻略すると、だいたい、それくらいは拾えてるから。

 二億ダメージで充分だったのに。


「兄上。ごめんなさい。でも、兄上の守りたいものは守れましたよね?」


 蘭さんが石になったお兄さんを見つめて、ポツン、ポツンと涙をこぼした。


 そのころになって、僕らが破壊して入ってきた扉から、ワレスさんたちがやってくる。


「すまない! 足止めに時間を食った。大丈夫だったか?」


 ハアハアと荒い息をつきながら、僕らのようすをながめたワレスさんは、ポンと蘭さんの肩をたたいた。


「……よくやった」


 それは、ただ強い敵を倒したって意味じゃない。蘭さんにとっては身を切るようにツライ決断をした上で、雄々しく戦った、という意味だ。

 だてに長年、ワレスさんの小説を書いてるわけじゃない。彼の心の機微はなんでもわかっちゃうんだよ〜


「それにしても、足止めって、ワレスさんの腕前でこんなに時間がかかるなんて、すごく強い敵だったんですか?」

「いや。攻撃力と防御力はたいしたことなかった。だが、ものすごい速度で自己再生する変なスライムみたいなヤツだった。それが足にまといつくから、ひとかけらも残さず焼きつくすまでに、そうとうの労力が必要だった」

「足止めには最高の敵ですね」

「ああ。あんなモンスターみたことがない。最初はほんのアメ玉ていどだったんだが、一秒ごとに倍どころか、百倍ずつくらい大きくなっていくんだ」


 めんどくさそうな敵だなぁ。

 そういうヤツにこそ、二千億ダメージだったのになぁ。


「ところで、ヤドリギをやったのか?」

「と思います」


 僕は地下で聞いた鏡の真実や、ブラン王との会話、その後の大広間での戦闘について、手短に説明した。


「なるほど。王の体内に憑依した状態で、石化して封じこめたというわけか。それなら、確実だな」


 よかった。

 これで終わりか。

 ブラン王の決意も、蘭さんの思いもムダにならなくてすんだ。

 この国を建てなおすには、これからが大変かもしれないけど、恐ろしい悪魔の思うがままにあやつられることはなくなったんだ。


 ——が、そのときだ。


 ほんと、ヤダなぁ。

 こういうボス敵って、たいてい復活したり、影武者がいたり、あれやこれやで二回戦、三回戦ってなるよね。


「ふはは。ふははははーッ! ほほ」


 どこからか高笑いが響きわたる。

 んんー? この声は……?


「そんなていどで、この私を倒したつもりですか? それは甘い認識というものですよ。ほほほ。私が鏡にとりこまれていたあいだ、何もしていなかったと思うのですか? 今日までの幾星霜いくせいそう、いったい、どれほどの数の人間に宿ってきたことか。夜ごとに私の魂のカケラを飛ばしては、傀儡くぐつを増やしてきました。こんなときのためにね。たしかにブラン王のなかに入っていたのは私の本体だが、魂のカケラだって、相当数は外にいたのです。それらすべてを呼び集めれば、本体の半分……いや、それ以上の魂が残っている——来よッ! わが魂のカケラたちよ。今ここに集まれ!」


 長々としゃべるその人を、僕らは、そっとふりかえった。

 ため息が出るなぁ。

 やっぱり、そうだったのか。

 ヤツが自然に出ていくなんてことなかったんだな。


 赤く目を光らせて、両手をひろげてるのは、残念。イケノくんだ。

 まだ取り憑かれてたんだね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ