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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
終章 打倒! 悪のヤドリギ!
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兄上戦!3



 兄の手に、いつのまにか、懐剣がにぎられていた。

 ロランはするどい痛みを胸に感じた。

 血がとびちり、急激に体がしびれてくる。次いで、立っていられないほどのめまいに襲われる。


 ああ、死ぬ。

 自分は死ぬんだ。

 死とはこんなにも簡単にやってくるものなのか。


 ロランは遠のく意識のなかで、床に倒れる。

 兄が笑っている。

 ゲラゲラと声をあげて。


「たわいもない。どいつもこいつも、チョロすぎて笑ってしまいますよ。ほほほ。おっと、おとなしくするんだ。誰もその場から動くな。でないと、このまま、らんらんの首をかっ切ってしまいますよ?」


 おどされて、仲間たちは動けない。


「あ……兄う……え」

「だから最初から言ったでしょう? 私はおまえが大嫌いなんだと。憎らしいほど愛くるしい顔で、両親の愛をひとりじめしていたおまえ。早くこの世から消えておしまいなさい」


 ドクドクと血が流れる。

 目がかすむ。


 ヒヒヒといやらしく笑いながら、兄は続ける。


「おまえが死んだら、次はコイツらだ。そのあと、夜明けには地下牢に入れておいた、おまえの友人たちを死刑にする。牢屋のなかから逃げだしたようだが、あそこにはレッドドラゴンがいる。引き返して牢に戻るしかないんだよ。ほほ。すぐに、あの世でいっしょになれますね。楽しみに待っていなさい」


 やっぱり自分は甘かった。

 だから、世界も大切なものも、何一つ守れない……。


 そのときだ。


「まー!」と叫び、クマりんが突進してきた。


 パパを呼んだらしい。

 巨大なテディーキングが天井から降ってくる。

 それを合図にしたように、バランや、バランに変身したモリーもかけてきた。

 素早く兄のふところに入りこみ、ロランから遠ざけるようにして、なぐりかかる。


「えーい! ジャマだ。きさまたち。あっちに行ってなさい。やっつけますよ?」


 みんながポカポカしてるすきに、スズランが走りよってきた。


「お兄さま。しっかりしてください! 元気いっぱい〜!」


 スズランが叫ぶと、傷口がふさがり、痛みがひいていく。


「ありがとう……危なかった……」


 兄は怒り狂った表情で仁王立ちになる。

 兄の体から邪悪な黒いものがしみだしていた。


「違う……これは、兄上じゃない!」


 強い。

 とても強い魔力だ。

 兄の体が急激にひとまわりも、ふたまわりも大きくなったようだ。

 これまで戦ったどの魔物より、はるかに強いことがわかる。


 ロランは不安になった。

 こんな化け物に、自分は勝てるだろうか?


 すると、そのときだ。

 バタバタとろうかを走ってくる足音が響いた。


「お待たせ! ロラン。加勢に来たよッ!」


 かーくんたちだ。

 ロランはふたたび涙があふれてくるのを感じた。さっきまでの苦い涙ではなく、それは、もっと、あったかい。

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