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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二十一章 いよいよ、ミルキー城攻略!
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ブラン王の秘密



 カツカツカツ。

 靴音が止まった。


 キッ——


 鏡の真横の壁が急に、くるりとひっくりかえった。

 誰かの足が松明の明かりのなかに、ふみだしてくる。


 ブラン王だ。

 ちょくせつ見るのは僕は初めてだ。

 でも、あの鏡に映る映像のなかで見た顔。

 なんだか、顔色が青い。

 それに表情がうつろというか、頭痛に耐えるように苦しそう。

 見えない糸にあらがうように、両手で何かをふりはらう仕草をするものの、けっきょくはその力に逆らえなかったようだ。

 ふらふらと鏡の前に立った。

 すでに、ようすがおかしいぞ。


 王様は鏡をのぞきこむ。

 なにやらブツブツつぶやきながら。


「……違う。私は憎いわけではない。決して、いなくなればいいと思ったわけでは……」


 と、どうだろう。

 鏡の表面がぼんやり光って、変な声が聞こえだした。


「ヒヒヒ。そんなこと、おまえの本心じゃないだろう? それはおまえだってわかってるはずだ。子どものころから嫉妬していた。母上が亡くなったあと、おまえには父上しかいなかった。新しい母上が来たときには、優しいかたで安心した。また以前のように家族仲よくやっていけると、ホッとした。ところが、そうはいかなかった。新しい母に妹が生まれたとたん、おまえはさけられるようになった。父上にも、新しい母上にもだ。まるで、おまえがバイ菌であるかのように、妹に近よることを禁じられた。おまえは一人になった。いつも家族と遠く離れ、ひとりぼっちで、さみしくすごしていた。妹さえ生まれてこなければよかったと、何度、考えたことだろう? なあ、そうだろう? ブラン?」


 なるほど。蘭さんが勇者だとバレると、魔王に命を狙われるからだ。

 お父さんやお母さんは、まだ赤ん坊の蘭さんを守るために、ほんとは男なのに女だと偽って、誰もそばに寄らせないようにして世間から隠したんだ。

 ブラン王を一人にさせたいわけじゃなかった。でも、結果的にブラン王は一人になって、孤独のなかで育った。

 それが兄弟の確執の根本的なところなのか。


 蘭さんは両親に愛されて大切に育てられてきたから、お兄さんのこの思いには気づかなかっただろうな。


 蘭さんはあれほどの世にもまれなる美形だ。子どものころは、それはもう、なめまわしたいくらい可愛かったに違いない。じゃっかん言いまわしがヘンタイっぽいが、そこスルーだ。

 まわりの大人たちに無条件で愛されることが、蘭さんにとっては、あたりまえのことだった。

 だから自分を嫌うお兄さんを異質なものとして、さけた。


 なんて悲しいすれ違いだろうか。

 誰も悪いわけじゃないのに、いつのまにか家族は二つに引き裂かれてしまった。


 それにしても、いったい誰がベラベラと王様の内面の思いをしゃべったんだろう? まさか王様?

 いや、なんか鏡のなかから聞こえたような?


 あんまり離れると隠れ身の範囲から外れてしまう。遠くまでは行けないんだけど、僕は少しだけ近づいて、王様の肩ごしに鏡をのぞいた。


 鏡には当然、王様のおもてが映ってるはずなんだけど……。


 僕はギョッとしたね。

 鏡に映っているのは、王様の顔じゃない。王様はお父さんによく似た和風のイケメンだ。現実世界の蘭さんのお兄さんにそっくり。


 だけど、今、そこに映ってるのは、異様に青い肌のヒゲ面の小男。

 ヒゲって言ってもボウボウじゃなく、クルンと巻いた口ひげと、あごのさきに逆三角形にひっついてるヤギひげだ。

 目はつりあがり、眉毛はへの字。

 口は薄くて、冷酷そう。

 なんとなく気持ち悪い。


 誰だ? コイツ。

 もっ、もしや、これが……?

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