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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二十一章 いよいよ、ミルキー城攻略!
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これが問題の鏡?



 細長い一室は、どっちかと言うと古い遺跡のろうかにあとから手をくわえて、両端を壁でふさいだって感じ。

 天井が高いし幅もあるので、馬車でも充分、入りこめる。


「かーくんさん。おつかれさまです。ご無事で何よりですね」

「あっ、どうも。クルウさん。だいぶ待ちましたか?」

「いえ。三十分ほどです」

「すいません。レッドドラゴンがいたので、ボス戦で長引いちゃって。そっちは大丈夫でしたか?」

「こちらはガーゴイルやゴーレム、バジリスク隊長などの固くて火力の強い連中でしたが、ボスモンスターはいなかった。こちらも力でごり押ししましたので」

「僕らは火祭りでしたよ。出てくるのが全部、火属性」

「なるほど。そちら側だったら我々も苦手だった」


 両側から歩みよって、まんなかで言葉をかわす。クルウたちのほうにも回復の泉があったのか、見たところ疲労はない。


「……これが問題の鏡ですね?」

「ですね」


 僕らはその鏡を見なおす。

 どこと言って変わったところはない、ふつうの鏡だ。

 もちろん、一般の家庭にあるような鏡かと言われれば、そうじゃない。とても大きいし、縁どりの装飾も黄金製で、ひじょうに豪華だ。そこをのぞけば、よくある楕円形の姿見。


「これをどうしたらいいんですかねぇ?」

「毎晩、ブラン王が来て、のぞくわけですよね? そのようすをながめることができれば」

「あっ、でも今日はロランたちと会食だから、王様、こんなところまで来てるヒマないんじゃないですか?」

「どうかな。すでに来たあとなら、丸一日近く待たなければならなくなる」


 丸一日……ヤダ。そんなのヤダ。

 もうご飯もないし、あるのはお菓子だけ! それにこっち側から、さっきの回復の泉に帰るには、どうしたらいいわけ? トイレは? 部屋のなかじゃ、さすがにそのへんでしとけばってわけにいかないよ?


 ちょうど話してたときだ。

 頭上のほうから、コツコツと靴音が細く聞こえてくる。


「誰か来る」

「そのようですね。ブラン王かもしれない。隠れましょう」

「隠れるって、どこへ? 馬車は? うちのは小さい猫車だけど、そっちは立派な四頭立ての戦車でしょ?」

「もう一度、さっきの場所に戻ることができればいいのだが」


 早口で話してると、アンドーくんが遠慮がちに会話に割りこんできた。


「わとセイヤが隠れ身使ええけん、両方のパーティーにわかれて、一人ずつついたらどげだ?」


 ごもっともです!


「じゃ、お願い」

「わかった」


 アンドーくんはクルウたちの隊といっしょに、さっきの仕掛け扉の前まで馬車ごと下がった。

 僕らは僕らの入ってきたほうの壁ぎわに下がる。

 僕らの目から見て、クルウたちの隊が消えた。隠れ身が使用されたのだ。


「イケノくん。お願い」

「うん。任せて」


 自分ではわからないけど、たぶん、僕らの姿も消えたんだと思う。


 息を殺して待っていると、静寂のなかにコツコツと足音が近づいてきた。

 まもなく、あの鏡のむこう側で止まる。


 誰かが、入ってくる。

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