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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二十章 ミルキー城をめざせ!
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炎まみれの洞くつ



 薄暗い洞くつ。

 ときどき熱風が吹きぬけていく。

 壁はときどき石組みになり、奇妙な彫刻がほどこされている。

 柱で支えられた部分も。

 噴火山の地下ってわけでもないのに、妙に地熱が高いなぁ。

 火属性たちの住処だからかもしれない。


「広いねぇ」

「そげだねぇ。枝道も多いねぇ」

「ダディロンさんはさきに街側の出口から脱出してもいいんですよ?」

「なんの! ここは鍛冶素材の宝庫だ。まだまだ集めるぞ」

「……そうですか。ありがとうございます」


 元気なおじさんだなぁ。

 この洞くつのなかでは、冷却水はかなりの戦力だ。つれていこう。うん。迷わず!


 にしても、ほんとに広い。

 これまで、けっこう洞くつや地下通路はさ迷ってきた。でも、ここは規模が違う。今までのなかで広いなぁと思ったのは、廃墟の研究所から二キロあまり続いていた地下洞くつ。

 ここはその倍はありそうだ。

 歩いても歩いても、終わりが見えない。


 出てくるモンスターは、火竜の子にサラマンダーにビッグブッキーに、ミニドラゴンに、炎スライム。

 たまに、さまよえる魔術師ってのが出てくる。これは赤いフードつきマントをつけたガイコツだ。めっちゃ強いし、謎の言葉を吐くし、死ぬ前はふつうの人間だったんじゃないだろうか?


「……はぁ。どこまで歩けばいいのかなぁ? お城から離れてしまってる?」

「どげだやら」

「あっ、宝箱だぁー。やったねー。おおっ、ハープだよ。ハープ。たまりん。炎のハープだって」


 ゆらり〜


「装備品魔法は四ターンに一度かかるっていう『火炎のルンバ』か」


 ルンバって言われると、なんとなくお掃除ロボットみたいな気がしてしまうけど、詳細を見ると、これがなかなかのもの。

 火炎のルンバの効果は、そのターン、パーティーメンバーの力が二倍になる、だ。


 力が二倍ってことは、攻撃力が上がる『がんばろ〜』系の呪文とは似てるようで、ちょっと違う。

 がんばろ〜系は攻撃力をパーセンテージで上げていき、重複効果が最大200%までって上限がある。けど、力そのものが上がれば、そのがんばろ〜の効果の基礎値が高くなるってことだ。


 一ターンだけの効果だけど、力が二倍ってスゴイよ?

 ほんとにいいのっ?

 神様、ゲームバランス大丈夫っ?

 つまみ食いのときも思ったけど、僕らに優しすぎないか?

 まさか、それくらいしないと、魔王には勝てないのか?

 むしろ不安になる。


 ともかく、炎のハープはたまりんの詩神のハープにセットした。

 カチン。

 炎のって言うだけあって、攻撃力じたい50もあったんで、詩神のハープの攻撃力がいっきに100になる。

 たまりんが前衛で戦うことは、そうそうないんだけどね。


 そのあとも広大な地下空間を僕らは歩いていく。


「ぎゃー。また、ビッグブッキー! 鋼鉄のブーメラン! スライムが火を噴くよぉ」

「かーくん。ここの敵、強すぎらん?」

「うん。ケロちゃんたちだけじゃなく、僕らのレベルも尋常じゃなく上がるね」


 ビッグブッキーは、全体攻撃のできるブーメランでクリティカルって戦法で乗りきった。

 サラマンダーが必ずと言っていいほど出てくるんで、つねに緊張感がただよう。


 ようやく、回復の泉を見つけた。


「ああ、ここでひと休みできるね」

「よかった。けっこうMP使ったけんねぇ」

「ハハハ! 近ごろの若者は軟弱だな」


 そう言いつつ、ダディロンさんはまっさきに泉の水を飲んだ。

 なんだよぉ。おじさんだって疲れてるじゃん。


 あたりは遺跡っぽい場所で、女神の像と清水の湧きだす小さな泉がある。

 石組みの壁にもたれてすわった僕は、ふと光を感じた。

 僕の頭のよこあたりにスキマがある。そこから光がもれている。


 ん? なんで光?

 この壁のむこうに何かあるのかな?

 僕はそこに目をあてて、のぞいてみた。


「ああー!」

「どげした? かーくん」

「壁のむこうに部屋がある!」

「えっ?」


 壁のむこう。

 薄暗いけど、松明の明かりで照らされる室内だ。室内って言っても、豪華な城内や、生活感にあふれた民家ではない。

 地下室なんじゃないかな?

 壁紙などの張ってない石の壁。

 調度品もほとんど見あたらない。

 見えるのは、鏡だ。

 大きな姿見がスキマの真正面の壁にかけてある。


「ねぇ、これって、ロランが言ってた例の鏡なんじゃない?」

「えっ? どれどれ?」


 アンドーくんやイケノくんも頭をよせてきて、かわりばんこに穴をのぞく。


 悪のヤドリギにあやつられてるブラン王が、毎晩、見にくるっていう問題の鏡。

 もしかして、これかな?


 壁のむこう側は無人だ。

 のぞいていると、鏡に像が映ってきた。


 あっ! あれは、もしかして蘭さんじゃ?

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