君に届け、預かりボックス!
さっそく手紙を書いた。
日本語で書いたけど、よこで見てたアンドーくんが何も言わないから読めるんだろう。
あいかわらず、便利な世界だ。
どうも夢じゃなくて、異世界召喚みたいだけど、そのへんはどうなってるんだろ? 日本語が世界基準なのか?
「これで、あとは返事を待つだけだね」
蘭さんができるだけ早く気づいてくれるといいんだけどなぁ。
明日の朝っていうのが夜明けって意味なら、火焙りまでにあんまり猶予がない。
火焙りはイヤー! 火焙り反対ー!
はぁはぁ……。
お願いだー。蘭さん。早く気づいてくれぇー。
僕はたぶん、十秒ごとに預かりボックスの扉をあけてみていた。
なんの変化もない。
「まあまあ、かーくん。落ちつくだわね。ロランやつも王様と会って、大変だと思うわ」
「うん。まあね。王様はヤドリギに取り憑かれてるかもしれないもんね。今、何時ごろかなぁ?」
「まだ捕まってから三時間ぐらいしか経ってないだない?」
「そうか。王都についたのが昼ごろだから、夕方くらいかぁ。ぽよちゃんたちが心配だなぁ。モンスターだけで街なかにとり残されて、人間にイジメられてないかなぁ」
「みんな、猫車に乗っとったけん、見つかっとらんとは思うけど」
「そうだねぇ……」
ああ、連行される僕のほうを見ながら、心配そうに「キュイー!」と叫んでたぽよちゃん。
愛猫を戦地に置き去りにしてきた気分だ。あっ、これは猫好き的に、そうとうツライって表現だよ?
長旅のせいもあって、疲れが出たのか、そのあとちょっと、うたたねしてしまった。
こういうときはアレだよね。
夢を見てしまう。
——かーくん。かーくん……。
えっ? 僕?
いや、違うな。
僕のような僕じゃないような僕が、金髪碧眼の美少女と、それは楽しそうに談笑している。
いいなぁ。うらやましいー。
すると、その背後から僕らを見つめる人影があった。
んん? 誰だ? 猛か?
猛っぽいけど、猛じゃない。
猛より少しだけ肌色が浅黒いよね。
兄ちゃんも日焼けはしてるけど、これはもう日焼けとかじゃなくて、褐色。黄色人種の肌じゃない。
なんか、すごい怖い目で僕らのことにらんでるなぁ。
と、さらに背後から誰かが、その猛もどきに声をかけた——ような気がした。
そこで目が覚めた。
すべては夢だった。
「うーん……」
なんだか、またあの女神様っぽい人に声をかけられたような気がしたんだけどなぁ。
ぼんやりしていた僕は、預かりボックスの扉がカタン、カタンと動いているのを見た。
あわてて、ひらく。
「クピー。コピコピ。クピピコ、ピーピコ」
あっ、やったー!
クピピコがボックスのなかからとびだしてきた。
これで、やっと牢屋から脱出できるぞ!