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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二十章 ミルキー城をめざせ!
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そのころの城内?



 ミルキー城のとある場所。

 魔法の鏡をのぞく人物。


「ほほほ。おもしろいエサが釣れましたね。これでまた楽しく料理できますよ。そうは思いませんか? ユダ」

「…………」


 ユダ、と呼びかけられたのは、黒竜の皮のマントをかぶったラーメン髪の美青年。

 もちろん、猛だ。


 えーと、これまでずっと僕の視点で書いてきたんだけど、話の進行上、ちょっと猛の視点を借りてみることにする。これは、あとになって猛から聞いたことをもとに想像をまじえて書いてる。

 物語は一人称を超えてきた!


「あんたも悪趣味だな。今度は何をするつもりだ? ヤドリギ」


 猛は興味なさげなそぶりで、しれっとたずねる。


 ヤドリギは鏡を見つめたまま、ほほっと、いつもの薄ら寒い笑い声をもらした。

 何が寒いと言って、四天王でこの見ためのくせに、うっすらとオネエ感をただよわせてくるところだ。たまに猛の手をにぎろうとすることもあって、正直、キモイ。


「勇者が城に帰ってきたようですね。お友達をたくさん、ひきつれて。これは歓迎してさしあげなければなりますまい。はたして兄と弟で、どんな茶番を演じてくれるものでしょう。ほほほ……」


 数日前、国境の火竜が倒されたことはわかっていた。いずれ来るとは予測していたが、けっこう早かった。

 ヤドリギが卑怯な手段を使って、途中の村で足止めしていたが、あまり効果はなかったようだ。


「ふん。勇者か。まださほどの強敵じゃない。今のうちに確実にしとめておけと、あのかたからのご命令だ」と、猛は四天王らしく皮肉な調子を作って言った。


「委細承知ですよ。わたくしめにお任せあれ——と、あのかたには伝えてください。最高のお芝居を用意してありますからね。さあ、勇者たち。楽しませておくれ。わたくしの可愛いマリオネット。ほほ」


 寒い。じんましんが出そうだ。

 猛は限界を感じて立ちあがった。

 ついでに、ヤドリギがのぞいている鏡をうしろから見てやろうと思ったのだ。


 そこに映っている姿を見て、猛はギョッとした。

 勇者と言うから、てっきり蘭が映ってると思っていた。なのに、映されているのは蘭ではなかった。

 かーくんだ。

 かーくんとアンドーとイケノが兵隊たちに囲まれて、ひっくくられていく。


 なぜかはわからない。

 わからないが、ヤドリギは薫を勇者だと勘違いしている。


 そう言えば、以前、ゴドバと話したときも、勇者を捕まえたと言っていたのに、その人相風体は、かーくんらしく思えた。勇者をぽよぽよにしてやったと豪語していたが、どうやら、それはなんらかの手違いだったようだ。


「おや? どうしました? ユダ」


 わずかに首をまわし、ヤドリギが猛に視線を送ってくる。

 猛は平静をとりつくろった。


「いや、別に。たしかに伝言した。おれはもう行く」

「あなたもゆっくりお芝居を見物していけばいいのに」

「そんなヒマはない」

「あらん。つれないのねぇ」


 猛は無言で去った。


 いったい、ヤドリギは、なぜ、かーくんを勇者だと思いこんでいるのだろう?

 あるいは、そこに重大な秘密が隠されているのかもしれないと考えながら……。

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