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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
二十章 ミルキー城をめざせ!
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ふたたび、ドロボー?



「いや、違うって! だから、お金払いに来たんだよ? ほら、五十円!」


 僕はあわててカウンターに五十円玉を置いた。

 しかし、あいかわらず、お姉さんは融通がきかない。


「利息がつきます。お客さんは、うちの商品を持ち逃げされましたからね」

「いくらならいいの?」

「五億円です!」

「えっ?」


 五億……払えないことはない。

 今の僕なら、十数メートル歩くごとに、十五億は拾うんだから。

 でも、そうは言っても、五十円の商品がたった一ヶ月やそこらで五億円にはねあがるなんて、理不尽すぎるんじゃないだろうか?

 あまりにも消費者を無視した横暴なやりくちだ。

 現実世界でも、ここまでヒドイ暴利をむさぼる闇金融はないんじゃない?


「ちょっと高すぎませんか? ふつうに考えて、ありえない値段なんですけど」

「うちの商品を持ち逃げしましたよね?」

「えっとぉ……しました」

「あなた、ドロボーですよね?」

「そうなりますね。はい」

「ですので、示談金です」

「ええー! それにしても高いよ。五十円の商品の示談金なら、せいぜい一万くらいが常識的な値段じゃないの?」


 それだって価格の二百倍だ。ありえないと思うけど。


「わかりました。払わないんですね?」

「いや、払わないとは言ってないよ。高すぎるなって」

「払わないんですね?」


 あっ、ヤバイ!


 すうっと深呼吸したお姉さんは、ふたたび大声で叫ぶ。この世の終わりを告げるラグナロクのラッパのように。


「ドロボーーッ!」


 外から笛の音が響いた。

 続いて、たくさんの軍靴の足音が。


 ああ……このパターンは以前と同じ。

 なんで、こんなことに?

 僕はただ、木刀の代金を払おうとしただけなのに?


「ドロボー! ドロボー! 兵隊さーん、こっちです。こっち!」


 お姉さんがさわぎたてるんで、しょうがなく、僕は店を逃げだした。

 街路の正面からお城の兵隊が列を組んで押しよせてくる。

 五十円の木刀一本ちょろまかしただけにしては、仰々しすぎる。

 まるで連続殺人犯か、はたまた王様のふところから国宝を盗んだ大ドロボーのあつかいだ。


 隊長の顔には、なんか見覚えがあるなぁ。前にも僕を追ってきた人じゃないのか?


「あっ、きさまは、らんらん姫を誘拐した犯人ではないか!」

「えっ? 違いますよ? らんらん姫は自分で逃げだしたんでしょ?」

「問答無用!」


 アンドーくんもあわてて仲裁に入ろうとする。


「ちょっと待ってごしなはい。この人は悪い人じゃありません」

「あっ! きさまは兵役をなげうって逃げだした逃亡兵!」

「えっ? 違ぁけんね。任務の途中だったけん、戻ってきただけだないか」

「問答無用!」


 イケノくんも隊長をなだめようとするが、

「隊長さん。わやつは任務から帰ってきたとこで、逃亡しちょったわけじゃないけん」

「きさまも逃亡兵だな。問答無用!」


 話になんない。


 僕らはわぁわぁと吠える兵士たちの集団にかこまれ、あっというまにお縄にくくられる。


「よし。ひったてろー!」

「ハッ!」

「了解であります!」


 僕、アンドーくん、イケノくんの人間三人は両手を縛られ、兵士にひきずられていくはめに。


「ああー! ぽよちゃーん!」

「キュイー!」


 猫車が遠くなっていく。

 ああ……どうしよう。

 ぽよちゃんたちと離ればなれになってしまったー!

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