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【完結】聖女なんて破廉恥な役目、全力でお断りします!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第1章 聖女に選ばれし乙女

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12.逃げる令嬢と追う騎士の攻略戦

「いない、のか?!」


 騎士ガウナが追い付いた荷馬車の一団は、リシマキアの城塞門をくぐったところで止められた。普段なら奥の広場まで移動してから各地へ移動するのが習いだ。しかし王太子の命が下ったことで、空の荷馬車以外は広場に残された。


 少額を払って運んでもらった国民は、よくわからないものの大人しく従う。乱暴されたり脅されたわけではないし、もう家に帰るだけなので逆らう理由がなかった。そんな人々の間で、セントーレアはそわそわしている。早くクナウティアのことを伝えなければ……。


 皆が王太子に注目している間に、クリーム色の帽子を握り締めて数歩後ろへ下がる。誰も注目していない。今なら1人くらい足りなくなっても気づかないだろう。気合を入れたセントーレアは後ろを向いて走り出した。家の方角は左側、自宅より少し奥にクナウティアの家がある。


「あ!」


「こら、君。待ちなさい」


「あの子は?!」


 様々な声が上がるが無視だ。セントーレアの頭の中は、親友のことでいっぱいだった。聖女が家に帰れなくなるなんて知らなかった。だから駄々を捏ねる妹分の背を押すつもりで、彼女の必死の抵抗を無駄にしてしまったのだ。申し訳なさから、逃げ足に加速がかかる。


 ドレスの裾が翻り、はしたなくもシュミーズの裾が見えた。それでも大きく足を踏み出して全力で走る。追いつかれる前に、クナウティアの状況を彼女の父や兄に伝える責任がある――思い込んだら一直線のセントーレアは、その真面目さを遺憾なく発揮した。


 走り抜けたセントーレアの薄茶の髪が風になびく。そのまま高速を維持して、滑るように交差点を曲がった。転ばないように左手で街灯のポールを掴み、ぐるりと向きを回転する高等テクニックを披露する。幼い頃から街の職人の子達と走り回ったセントーレアは、クナウティア同様身体能力が高かった。


 貴族令嬢として上品に育てられたわけではないので、多少ドレスがめくれて足が見えても3秒以内に隠せば平気と思っている。緩い家庭環境のお陰で、差別意識も特権階級の貴族である自覚も育たなかった。


 そんなセントーレアの後ろを騎士が追いかける。ガウナも騎士に見合う実力も持ち主だ。少女に逃げ切られるわけに行かなかった。本気で追いかけるが、何分(なにぶん)装備が重い。それに加えて街の地理に不案内だった。


 城塞都市リシマキアは外部から攻め込まれた際に、王都の盾となって守るための砦だ。そのため道はくねくねと曲がり、見通しが悪かった。こんもりとした丘の頂上に砦を建てて、周囲をぐるりと囲む形で街が発展している。どの門から入っても坂を上る仕組みだった。


 侵入する敵を、砦の中から弓矢や大砲で攻撃可能だ。さらに街全体を簡単に掌握できるよう、一番高い位置に砦を築き、城塞都市を預かる辺境伯が住んでいた。貴族の屋敷はすべて辺境伯の屋敷と砦を守る形で上に位置する。猫の額ほどの小さな領地をもつ男爵家も盾として、同様に上部に家があった。


「っ、はあ……くそ、どっちへ」


 騎士にあるまじき言葉が漏れる。騎士は平民出身者も多いため、訓練中の仲間同士の言葉は結構荒い。舌打ちしたい気分で顔を上げ、額の汗を乱暴に袖で拭った。見た目の整ったガウナの仕草に、数人の女性が頬を染めて見惚れる。


 そんな秋波に気づく余裕もないガウナが大きく肩で息をしながら、砦の方へ目を凝らした。薄茶の髪は多いが、逃げた少女は水色のドレスを着ている。水色の服はさほど多くない。汚れが目立つ色なので、平民女性が纏うことは少なかった。


 ならば逃げたのは貴族令嬢か。あの逃げっぷりではそう思えないが、どの家庭にもお転婆娘がいるものだと苦笑いし、ガウナは気合を入れ直した。ガウナの妹もドレス姿でお転婆をして、よく母に悲鳴を上げさせたものだ。


 懐かしく思い出しながら、剣を下げるベルトを少し回して位置を変えた。走りにくい原因である剣を置いていくわけに行かないが、多少ずらす程度の着崩しは許されるだろう。聖女様の一大事であり、王太子殿下の命令があるのだから。


 方角をもう一度確かめ、最短距離を探った。砦攻略用に地理も叩き込まれるため、騎士は初見の砦であってもある程度の構造に通じている。地元の少女に追いつくため、ガウナは大きく息を吸い込んで再び足を踏み出した。

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