表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/35

クトルフ・ヴィルカ


 クトルフの後について行った先は、家の近くにある納屋だった。扉を開けて明かりを点けると、そこにいたのは、すでに荷車に繋がれた1頭の馬だ。


 クトルフはその荷台に、そっと担いでいたリコを寝かせると、落ちないように固定する。


「死神。さっさと操縦席に乗ってこの娘を連れて行け!なぁに、わしがここで出来る限りの時間稼ぎをしてやる!」


 クトルフはそう言うと、納屋の壁に飾ってあった両手斧を手に取った。


「あんた、ここで死ぬ気なのか?」


 操縦席に飛び乗ったレイは、手綱を握りながらクトルフに言うと、彼はふっと笑った。


「ふんっ。もう知れことだ。この土地にはわしの大切だった妻が眠っている。グールなんぞに荒らされてたまるか……!」


 クトルフは言うと、もう一度荷台で眠るリコを見て、優しく頬を撫でる。


「死神よ……。この子を連れだした後は、好きにすればいい。だが、もしもリコを悲しませるようであれば、わしは死んでもお前を呪い殺してやるから覚悟しておけ……!がはは!」


 強迫じみた言い草にレイは小さく「分かったよ……」とつぶやき、クトルフに向かって


「なぁ……あんたに一つだけ聞いてみてもいか?」と言った。


 レイのクトルフに対する質問は1つだけ。



「あんたは、傭兵になって、楽しいと思えたか?」


 レイの質問に、少しばかり考えたクトルフは答えを出した。


「あぁ、こう見えても割と面白かったぞ……。お前はそうではないのか?」


「……俺が、傭兵業をしてきたのは、すべては金のためだ。もう二度とあんな惨めな思いをしないために……。でも最近分からなくなってきた。俺が今までしてきたことが、本当に正しかったのか、それとも間違っていたのか。このまま進んでいいのか、それとも……」


 そう言うレイに向かってクトルフはふっと笑った。


「お前が、今までどんなにつらい過去を乗り越えてきたのかは知らんが、今まで見て来た傭兵の中でも、お前が一番、なんだか生きづらそうに見える……。まるで、今も暗闇の中で行きつく場所も分からずに、彷徨っている様じゃ……。解決策も見つからないままに……」


「解決策なんて、人それぞれじゃないのか……?」


「確かに、解決策なんて人それぞれじゃ。だけど問題を乗り越えた者は、必ずあることを第一に考えるもんじゃ……」


「あること……?」


「それは、自分のやりたいことを精一杯、そして自由にやることだよ……!」



 ――自由……。


 レイはそう思いながらふと、言葉が詰まった。


「お前は、金だったり名声だったり、権力だったりと、色々なことを考えすぎだ。だから、もっと自由に、そして、自分が心の底から面白いと思うことを、とことん突き詰めればいい。そうすれば、お前の見ている世界はたちまち姿を変え、人生は大いに色づくだろうよ……」


 ――面白い事か……。とレイは心の中でつぶやいた。


「まぁ、今わしが言っていることが分からんでも、いずれこの娘が気付く手伝いをしてくれるだろうよ……」


 クトルフがそう言うと、納屋の外で何やら暗闇にうごめく、魔物の鳴き声が聞こえて来た。それは、もうグールが近くに来ていることを意味していた。


「さぁ、行け死神よ!奴らが来る前に……!」


 クトルフは叫び、馬の尻を思いっきり叩くと、そのことに驚いた馬は甲高い鳴き声を上げて。納屋の扉から飛び出すように駆けだした。



 2人を乗せる馬車が、無事に村の門を抜けるのを見届けたクトルフは、掲げた松明を家や納屋に放つと、その明かりで今夜の招かれざる客に向かって、持っていた武器を構える。


 闇夜に紛れながらやって来たグールだ。


 彼らはそんなクトルフを囲むように立ち回り、口からはよだれをたらしている。



「さぁ、最後の大仕事だ!かかって来やがれ!」


 クトルフは、がははと笑いながら、握っていた斧を振り上げるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ