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8 王室の仕事(2)

「それでですよ。」

「はい・・・。」

私は懸命に村人の相談を受けているが、長蛇の列は途切れることがない。

それに・・・・この人たちは疲れる・・・。例えばーーーーー、


                    ♦♢♦♢♦


『アマノ王女、聞いてください。学校っていらないじゃないですか。』

『はああ・・・。』

『それでっ!!』

〈と言って自分の膝をたたいた。彼は机を叩きたかったようだが、机はないので痛がった。〉

『学校、つぶしてください。』

『はああああ?!』

(何を言ってる、学校はすばらしいとこなのに・・・)

『アマノ。』

〈そう言ってガシスは私の肩に手を置いた。〉

『そうやって、心を乱すな。この方の言うことは大したことがない。』

(大したことがない??そんな訳ない!!学校はしっかり卒業しなきゃ!)

『あの・・・あなたはなぜ学校をつぶしてほしいんですか?』

『はあっ、ははっ!!その質問待ってました!』

〈そう言ってまた彼は膝をたたいた。あのたたでさえ、チャラいかっこうがもっとチャラく見えた。〉

『ゲームをしたいんです!でも学校があるからできない!!学校よりもゲームの方が楽しい!!』

『はあああ??!!!』

〈私の声が玉座の間に響き渡り、列に並んでいた人がビックっと反応した。〉

『アマノ』

〈ガシスはまた私の肩に手を置いた。〉

『ここは任せろ、プロの方がいい。』

(まあ、ガシスがそう言ってるんなら任せてもいいかも・・・。)

〈ということで私はガシスに相談の回答を任せた。きっと私のことを分かってると期待していると・・〉

『そなた。』

『はい、なんですか?王様。』

『名前は何という?』

『僕の名前ですかあっ?』

〈彼は指を自分に向け、ガシスは「ふむ、そうだ」とうなずいた。〉

『僕の名はジャン。ジャン・スナイパー。』

『そうか・・・、ジャン。これからそなたは学生ではない。』

〈ジャンの目がきらりと輝き、私はカッとなってガシスに目を見開き睨んだ。〉

『本当ですかっ!!じゃあ一日中ゲームしてていいんですかっ!!?』

〈ガシスは嬉しそうに「そうだ」とうなずいた。〉

『もう学生に縛られることはない。好きにゲームをすればいい。だが村人としては働いてもらうぞ?』

『待って下さいっ!王様!』

(そんなことしちゃダメでしょ!何考えてんの、ガシス。)

〈ガシスは「なんだあっ?!」と私に怪訝な顔を向けた。〉

でも時すでに遅し。

『やったあ!王様、ありがとうございます!王女よりもずっといい人です!』

(何気に失礼・・・。)

〈私は怪訝な顔をし、ジャンは嬉しそうな顔をし、ガシスは「うんうん」とうなずいた。〉

『そうかそうか。君のお役にたてて嬉しいよ。』

〈と、ふいに去ろうとしたジャンが振り向いた。〉

『ジャンですっ!』

『うん・・・。』

〈とガシスはうなずいた。〉

(いやいや、ガシスこの時の対処の仕方知らないでしょ。)


・・・・一応言っておくが、これは一番対処がおかしい例である。王様が言うと、おかしい、ダメ、この国はやっていけない。ということだけは・・・分かった。


               ♦♢♦♢♦

「っていうことですよ。」

「??」

・・・回想にふけいったせいでこの目の前の中年ぐらいの彼女の話を聞いていなかった・・!

彼女はすぐにそれを感じ取り怪訝な顔をした。

「王女様・・・大丈夫ですか・・・?疲れが残っているようで・・・・」

まあそれは合っている。

「大丈夫です、でもごめんなさい聞いていなかったので・・・もう一回言ってもらってもいいですか・・?」

「はあ、そうですか。」

彼女はため息をした。

「まあさっきは長かったので短くまとめますね・・。」

「はい。」

その方がいい。長蛇の列の人はまだ減るということがない。・・・上、まだ朝ご飯を食べていない。

というかこの国のご飯、まずいから食べなくてもいいけどね・・・。

「あのですね、私たち農家は、貧しい。」

「は・・はい。」

何をいきなり・・・。

「なので、採った作物を八割、納めるというのを減らしてほしいんです。」

「はい。」

やっと、まともなことを相談してくれた・・・。

「どのぐらいに納めるようにしたいんですか・・・?」

「う~ん・・・、そうですね・・・四割、三割ぐらいがいいかと。」

「そうですー、」

「何をしてる!?」

か。という前になぜかガシスの声が割り込んできた。

しかも長いひげには米をつけながら・・・。

え?もしや私が回想にふけたり、相談にのっているときに朝ごはん、食べ終わった?!

あと、なぜ割り込んできた・・・?

「王様、何をしてるって、相談に乗っていますが?」

なにか?と言いたげな顔で私は王様を見た。

「いや、まあそうだが・・・。」

となぜかガシスは急に真顔になって農家だという、彼女に向き合った。

「今、四割、三割に減らしてほしいと言っておったな。」

なあんだ、聞いてんじゃん。

もしかしたらガシスが私の思っていることをしてくれるかも・・と期待すると・・・。

「だめだ、この国のルールを破ることになる。」

「はい?」

「はああああ??」

彼女は目を思い切り大きくし、私は()()ガシスに呆れた。

ルールがあるんなら、さっきの学校問題もルールの一部でしょ!?

「なんでですか、私たち農家暮らすの精一杯なんですよ!?」

「だからなんだ。」

他人事・・・・。

「そうですよ、王様。私たち王族は(と言っても私は中学生だけどね・・)豪華な暮らしをしていますが、

 (でもここの料理は超まずい。)農家たちはどうです?農家も国の一部じゃないですかっ!」

ガシスは真顔で向き合った。

「でもルールはルールだ。」

そしてガシスはその顔のまま彼女を見た。彼女の方はというと、中年なのにシミのついた頬を膨らませている。

「悪いが、そなたの相談は・・希望は受け付けられない・・。」

そしてなぜかこのタイミングでガシスは息を思い切り、吸い込んだ。

「帰れえっ!」

ガシスは私が聞いた中で、大きな声を出した。

近くにいた私はもちろん、列に並んでいた人たちがびっくと反応した。

しかしなぜか農家の彼女はピクリともびっくともしなかった。ただただ涼しい顔で王様を睨んだ。

「へえ、そうですか。でもいつか恨むことになりますよ、農家の力はすごいんですから。」

何気に一番この人が怖いかもしれない。

そして彼女は後ろを向くと、「そうだ」と切り出した(後ろを向いたまま)。

「アマノ王女。なにかの希望にしっかり応える姿勢、いいと思います。

 変わったんですね、いい人になった。」

彼女は静かに去っていった。


は?その前にこれ、なんなんだろう。

先生でもないのにかっこつけてる・・・。

やはりこの国で育つと、どこかしら必ずおかしい人になってしまうのか・・・。

うう、怖い・・・。


                   ♦♢♦♢♦

さて、なぜかやっと朝ごはんが食べ終わった直後、ガシスに呼び出された・・・・いつもの・・・・・

「王様の玉座」に。

「なんですか、王様。」

「今日の相談乗りのことだ。」

ガシスはもう、玉座に早速座っている。

「今日はあまり良くなかった、少しはわしを見習え。」

私は明らかに分かるムッとした表情で無言で対抗した。

見習え?

明らかに常識外れの人を?

そんなことできるのは、私ではなく本物のアマノ王女ができること。

「はああ(と、ため息)。何を言ってるんですか、おかしかったのは王様の方ではないですか?」

「なぜだ?」

ガシスは前のめりになってグッと私に近づいた。

いや、そんな興味持たなくても・・・。

「だって・・・あの、学校をやめさせ、仕事を早くからやらせることとかー、」

「なぜだ、あの子、嬉しそうだったじゃないか!」

「・・・とは反対に農家の農作物を四割、三割納めるのを反対することとかー、」

「なあに、ルールはルールだ!まだそのこと引きずってるのかっ!」

ガシスの「引きずってるのかっ!」という言葉には笑い、からかいが半分含まれていた。

なんなんだろう、真面目に言ってるのに割り込んでくる・・・。

私は再びムッとした顔をした。ガシスはさすがに悟って、黙り込んだ。

「なぜですか?この国にはルールがあるなら、なぜ学校の件は許されるものなのですか?」

「なぜだ、どうせ学校は嫌で建てたし。」

「はあああっ!!」

私は息をのんだ。

こいつ、学校でも農家のことでも他人事・・・。

「あの子・・・ジャンの将来はどうなるのですかっ!計算もできなくて歴史も分かんなくて、文字も分から ない。ただできるのはゲームをすることと、仕事を嫌でもやること。そしたら国が問題になると思います がっ!」

「う、うるさい!」

いきなりあの「帰れ」と同じ大きさの声で言われた。

今度は慣れてしまったのでびっくともしない。

「いちいち、国のことに頭を突っ込むな!あんたは王女だろ?王女は王女らしく黙ってついてけばいいん  だ!どうせ、何も知らないくせに。」

思い切り言葉が汚くなっている。

多分、彼は、彼なりの説教だと思っている。でも効き目がない。私は王女じゃない。

何も知らない・・・この国のことは。勉強はきちんと分かってる。知ってる。

「いいですか?私は王女じゃない、天野 姫。何も知らないのはガシスの方。 

 本物のアマノは逃亡中。あなたの本当の娘のことですよ!」

ガシスは私の大声にびっくっとした。

強気なのは見た目だけか。

「それに大体、誘ってきたのはあなたの方じゃないですか!褒めてやってもいいじゃないですか!私は日本 人。ゾルラン人じゃない。だから、まだ戸惑ってる、怖い、帰りたい、でもとりあえずアマノのふりをし

 てる。私の名前を覚えていってください。私もうこの国嫌です。」


私はきれいに回れ右をすると、小さく「ふん!」と言いながらドスドス、響かせながら去っていった。


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