71 最後の仕事(1)
相談をもちかけてくる・・・・というよりは、祝福の言葉を一人一人もらっているという感覚だった。
まあ、もちろんいつも通り考えれば分かるような相談をもちこんでいる人もいたが。
「次の方どうぞ~」
いつの間にか、お城の侍女が案内をしている。
・・・・・この光景を見ると、森の中のあの建物内で案内をしていた『オリレル』を思い出してしまうのだが・・・。
しかし、次の人は予想外の人だった。
「リディア?!」
「ええ。そうです・・・・・ってテンヤ?」
なんということだ・・・!
リディアという人は一目見て私に気が付いた・・・。
・・・・・どんだけ鈍感なの・・・ここの人・・・・。
「なんでここにいるんだ?てっきりもう帰ってしまったのかと・・・」
「そ、その予定だったけど・・・色々あって・・・・」
まあ・・・その色々はアマノ王女のせいだけど・・・。
「ああ、アマノのせいなのね」
・・・・えっと・・・・なんで分かったんだろう・・・。
「そ、それよりなんでリディアはここに来たの?」
そう言うと、リディアは恥ずかしそうに自分の頭をなでた。
「・・・・てっきりアマノだと思って・・・・『ガリバー王子との結婚おめでとう』とか言おうと思ってきたんだけど・・・・」
「・・・・・ガリバー王子って・・・評判悪いの?」
「うん、すごく」
・・・・即答・・・。
誰が見てもあれは悪い感じにとらえられるんだねえ・・・。
・・・・絶対モテてないよ・・・・・。
・・・・・いや、それよりも・・・・。
「リディア・・・・隣にいる人は・・・誰?」
・・・・・ずっと気になっていたけど・・・。
知らないおじさんがリディアの隣でずっと私たちの話を聞いている・・・。
「あ、ごめん・・・・説明するのを忘れてた・・・。この人はレヴィ。あたしの夫」
・・・・・あたしの夫・・・・。
というか・・・・旦那いたんだ・・・・。
それよりなんで今更旦那が出てきたんだろう・・・。
私はリディアの夫に会うのは初めてだ。
「な、なんで今・・・?」
「・・・・・ずっとあたしから逃げて他の若い女とイチャついてたみたいなんだけど・・・」
・・・・なんだか『若い』というキーワードをなぜだか強く主張している気がする・・・。
そう言いながらリディアは鋭い視線をレヴィに向けた。
レヴィは、リディアの視線を感じて困ったようにうつむいた。
「それで・・・・なぜだか最近戻ってきて・・・・」
「・・・・・そうだったんですか・・・」
「彼は牢屋から戻ってきたらしいんだけど・・・・」
・・・・・・・ん?
えっとそういえば・・・・前メアイから一回聞いた話では牢屋に入ったときの隣の人がレヴィとかいうおじいさんだったって・・・・・・・・もしやこのレヴィ?
・・・・逃げたってことなのか?
「どうした?テンヤ・・・」
「い、いやなんでもない・・・」
私はレヴィをじっと見つめた。
・・・・・メアイの話ではその隣の『レヴィ』は『髪と、口周りのひげが白く、そして、ひげは変な形に整っていて襟足まで残し、目はしらすのように細い人』だった・・・・。
しかし目の前の人はその条件にぴったり合っていた・・・・。
・・・・ま、まさか・・・・。
この人が・・・・隣の『レヴィ』・・・・・!
「レ、『レヴィリディ』のお店の名前の由来ってもしかして・・・リディアとレヴィの名前から抜き出したの?」
「そう・・・・・夫のレヴィは手伝ってくれないけどね」
そう言いながらリディアは鋭い視線をまたレヴィを向けた。
レヴィはまたリディアの視線を感じてうつむいた。
・・・・・私はどう返事をしたらいいか困ってしまった・・・。




