29 さあ、最初の一歩だあっ?!(挿絵付)
「本当になんだこれ・・・・」
木々がたくさん生えている異世界の森にこんな、きんきらきんの三角形の建物があったなんて・・・。
なんだかピラミッドに似ている・・・。
・・・・・見てるとなんか目がチカチカするなあ・・・。
この建物が気になって気になってしょうがない。
私は建物と一体化している、これまたきんきらきんの階段に足を踏み_
「ひいいいいいいいいっ」
「動くなっ、黙れっ!」
私は何者かに横から口をふさがれ、おまけに階段に足を踏み入れようと足をあげた真っ最中だったのでころりと横に転がってしまった。
「んっんんん!」
「喋るなっ!」
私がしゃべろうとすると、口をふさぐ手をさらにきつくした。
その人は、全身真っ黒で、そして辺りが真っ暗なせいで全く顔が見えなかった。
・・・・ったく、なんで私は誰かに襲われなきゃなんないの?
ほんと、この国大っ嫌いっ!
「あれ、ガムテープどこ行ったかな・・・」
その人は私の口を片手でふさぎながら、辺りをキョロキョロし始めた。
ガムテープ・・・はあ?ガムテープ?!
こいつ、私の口をガムテープでふさぐ気だあっ!!
もしかしたらついでに体を縛られるかも・・・・。
そんなの、お断りだからっ!
「あれ・・・?」
その人はまだ、ガムテープが見つからないようだ。
よしよし、この隙に逃げれるぞお・・。
私はそっと、口をふさぐ手をゆっくりどけ始めた。
幸いなことにその人はガムテープに探すことに夢中。どうやら、異変には気が付いていない。
それと同時に体をゆっくり起こし始めると、斜め横の大きな袋の中が見えた。
この大きな袋は襲撃された人の所有物だ。
中には長い綱、円柱の形をしたクリームケースが入っていた。
「・・・ん?」
待って・・・・。
この今も言っている
「あれ・・・?」
この声はもしかして・・・?
この綱、クリーム、かわいらしい声、見たことのある横顔の輪郭・・・。
「メアイっ??!」
「うわあああああああああああああああっ」
急に私が一気に体を起こすから、こんどは彼女が悲鳴をあげることになってしまった・・。
「なんですかあ・・・・・心臓に悪いじゃないかっ!」
彼女はまだ分からない。
「ほら・・分からないの?・・・これっ!」
私はさっき脱いだ、かつてメアイからもらった農民の服を上から重ねた。
あと、ついでにつけているが、手で丸を二つ作って、目の辺りに置いた。
眼鏡の再現だ。
「・・・・あっ!テンヤさん・・・?!」
「そうです」
やっと彼女は私だと認識した。
しかし、どうして侍女のメアイがここにいるのだろう・・?
「なんでここにいるんですか?」
質問はメアイが先に訊いた。
「いろいろ・・あってね・・・」
「だから、その色々って何?」
そんなに私の生活を知りたいのか?
「・・・あのあと、逃げてから、護衛に追われて、逃げきれて、ある店に立ち寄ったけど、護衛がそこを突撃してきたけど、店主の人が追い払ってくれて・・・で、店主の人にお願いして、泊まらせてもらって、泊めてもらったところがとてつもなく汚くて掃除して暇つぶしをしてたけど、三日目の朝、飽きてゾルランの町を探索して、そこである服やで、新しい農民の服を買おうとしたけど、とても高価なワイドパンツを買ってしまって、店長に怪しまれて、ついには私がアマノ王女だと誤解してしまって、店長とそのやじ馬から
なんとか逃げ切ると目の前は森で、仕方がなく森の中を散策しながら奥に入ってお腹がすいていたら、リスが食べ物じゃないけど、川まで連れて行ってくれて、その後なにやら音楽が聞こえてきて、怪しくなった私は、川の向こう側を渡ってみたら、地面に宝石が落ちていて、それをたどっていったら、このきんきらきんの建物にたどり着き、階段を上ろうと第一歩目を踏み出そうとしたら、その直後、あなた・・・メアイに襲われて、今となるわけです・・・」
メアイは目を丸くした。
一方、私は全て声に出してスッキリだった。
今までのおさらいもできたし。
「・・・・・あのちょっと待って、何言ってるか、聞き取れなかった」
・・・・・
しかしメアイはそうでもなかったようだ。
「もう、分かったんじゃないですか?」
「いや、早口だよ・・・・あとめちゃくちゃ話長いし」
「だからいろいろって言ったじゃないですか・・・」
全く・・・・面倒くさいから、色々で済ませた意味がない。
「あの・・・ゆっくりもう一回確認したいんだけど」
「つまりは・・・
店に寄ったら、護衛の人が追いかけてきたと」
「で、店主の人が追っ払ってくれたんです」
「その人の名前は?」
なぜそんな細かいところまで知りたいのだろう。
そんなことをいちいち聞いていたら、朝になってしまうというのに。
でもなにも言わず、私はあっさり答えた。
「リディア」
それを聞いて、メアイは眉間にしわを寄せた。
「その人がやっているお店の名前は?」
「『レヴィリディ』」
「・・・はあああっ、マジか・・・」
へえ、ここでも「マジ」は通用するんだ・・。
メアイは呆れたように、疲れたように頭を抱えた。
「テンヤさん、すごいですねえ・・・アマノ王女をかくまっていた人と会うなんて」
「そ、そうですか・・」
でも、リディアがアマノ王女をかくまっていたのは、知っていた。
「で、リディアに泊まらせてもらったんだって?」
「はい・・・でも泊まらせてくれる倉庫の中がとても汚くて」
「リディアはよく自分が掃除嫌いだというのに、泊めらせてくれたねえ・・・」
メアイもよく知っているほど、掃除嫌いなんだ・・・リディアは・・。
「掃除をして、暇つぶししてたんですけど・・・泊まらせてくれた三日目の朝にとうとう暇でもう我慢ができなくなって・・・・ゾルランの町を探索しようと思って」
「あなた、分かってる?外に出たら、狙われるって」
メアイが話にのめりこんで言う。
でも、もうそれ今言っても遅くない?
それ、あの時のリディアに全く同じ言葉を言ってほしかった・・・・。
そうすれば、こうはならなかったから・・・。
まあ、あの時のリディアは忙しくて私の朝ごはんを忘れていたくらいだから、しょうがないけど。
自己責任だよね・・・自己責任・・。
だから、もうメアイの問いかけはほっといて、話を進めた。
「それで、長らくお風呂に入ってなかったから、服を買おうと、ある服屋のところへ立ち寄りました」
「その服屋の名前は?」
「『ミスター』です」
またメアイが確認した。
別に確認しなくてもいいというのに・・。
しかし、私が答えると、メアイはまたまた、眉間にしわを寄せて、呆れたように「はあああああっ」とため息をつくのだった。




