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21 倉庫の掃除

「じゃ、お願いね」

リディアにそう言われ、私はきったない倉庫の中を掃除することにした。

いや、私が掃除してたからリディアが後から「いいよ」って言ったからだけど。

今日は倉庫掃除で一日取られそうだ・・・・。

そうだ、ゴミ袋聞くの忘れちゃった・・・・・今リディアって忙しいのかな・・・。


リディアはこの隣の建物で家、兼「レヴィリディ」というお店をしている。ただ、とても狭い、小さい。

もしかしたら、モーニングで人がたくさんいて、行列もあるかもしれないのだ。


ま、いっか。

そーっと、裏口のドアから入る。相変わらず、汚い。そして、今日の朝食のトレイもその一部と化してしまった・・・・・・。かわいそうに・・・。

つい、トレイたちに同情してしまい、「あっ、そうだそうだ」と本来の目的を思い出し忍び足でキッチンを通った。忍び足で来る必要、なかったのに・・・。

「いらっしゃい・・・・、はい、いらっしゃい。ご注文は?・・・・・ありがとねえ」

リディアの声がまじかに感じられる。お店と、家はたった薄い変な柄のカーテン一枚で区切られている。

聞こえるのももちろんだ。

そんなカーテンをぺらっとめくると、お店の賑わいの風景が見えた。

それが、だれだか全く分からないが、軽く世間話を交えながら、リディアは店の中を駆け巡っていた。

みんな、とても楽しそうで、この店にこんな賑わいがあふれていた光景を見るのはのは初めてだった。

見るからに忙しそうなのに、なんで人を雇わないのか不思議である。

せめて・・・・せめて、このモーニングだけの時間帯とか。

・・・・そういえば、この国はどこにも「バイト募集」だとかの求人広告を全く見ていない。

お店に貼ってあってもおかしくないのに・・・。

「あら、どうしたの・・・・なんでここにいるの」

駆け巡っていたはずのリディアがいつの間にか私の前に立っていた。

色々と考えていたからか、気が付かなかった・・・。

「あっ・・・・ここにゴミ袋があるかなあ~って思って・・・」

「う~ん・・・ゴミ袋ねえ・・・今忙しいから忙しくない時間帯に探すかな・・・今は無理」

リディアは頬にしわしわの手を当てて、「困ってる」感を出してきた。

「でも、いらないものはどうしたらいいんですか?そのためにゴミ袋が必要なんですけど」

「とりあえず、外に出しておいて。なんか小さな芝生の場所があるじゃない?その所にどんどん積んでおいて」

いやいや、そんなことしたら、倉庫じゃなくて、芝生がゴミ屋敷になるのでは?

と、言いたかったが、お客さんの一人が「あの~」とリディアに声をかけてきたのでリディアはその人に

「は~いっ」と声をかけて、私には

「じゃっ」

とそそくさとその人の元へと駆け寄った。

まあ・・・・、しょうがないか。そうするしか。

私は「うん」と一人でうなずき、倉庫に向かって走った。


めちゃくちゃ・・・、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ集中力を使って倉庫を片付けた。

何度も何度もゴミの山を見て気力がうせたけど、なんとか保って倉庫を片付けることに成功した。

でもきれいに何もなくなった倉庫はほこりまみれ。今にもねずみとかが出て、「きゃあ」と発狂しかねないので、また私はリディアにほうきがどこにあるのか聞くことにした。あっ!そしてついでにゴミ袋も。

もう、辺りを見渡しても暗くなっていた。異世界はいつも見てる空みたいに満点の星なんかきらめいていなかった。

私はまた裏口のドアを開けて、キッチンを通り、カーテンをめくった。

夕方近くの「レヴィリディ」は朝のモーニングと違ってリディアはワイングラスを布で拭いて、時間を持て余していた。

カウンターにはたった一人の客しかいない。しかも、食べるのに集中していて、その客もリディアも私に気が付いてないようだ。

「リディア」

「・・・・」

「リディアっ・・・」

「・・・?あっ・・・」

リディアはやっと気が付いて、私に目を向けた。リディアはさっき「探しておく」って言っていたけど本当にゴミ袋を探していたのか?

「何?」

「リディア、ほうき、知らない?あとさっき探しておくって言ってくれたゴミ袋も」

「・・!ああ、そうね」

リディアはなぜか、奥の方に急に駆け出したので、私は身を壁に寄せる羽目となった。

リディアは私が行ったことがないところへ足を踏み入れた。

そこは裏口のドアと並んでもう一つ、ドアがあるところで、家がいびつな形にならないように、裏口のドアよりも、そのドアの方が突き出ている。

そのドアの部屋にたくさん物が入っているようだ。

私はリディアの後ろでちらりとその中を見た。

「きたなっ」

やっぱり倉庫同様、汚い。ここの国には掃除の習慣がないのかっ!!?

そんな国に、「ゴミ袋」と「ほうき」なんて存在してるのかしら?

「う~ん、多分あなたの言ってるものだけど」

と、手に持っていたのは、なんか普通のサイズよりもでかめの白いポリ袋と、机の上とかを掃除する用の小っちゃいほうき!あの・・・・ちょうどいい大きさというものを知らないのかっ?!

って、生産されたものにケチ付けてもしょうがないので、私はしぶしぶそれを受け取った。


「やっぱりちっさいなあ」

倉庫の大きさはほうきの何倍もあるというのに、こんな小さいほうきじゃ、効率が悪いし時間がかかる。

「あ~あ、柄の長いほうきが恋しいな・・・」

こうしてしょうがなくたくさん時間をかけて、倉庫の中をほうきではいた。

でもこれだけでは悲しいから、掃除している間に出てきた、黄色のドット柄のカーテン(そういえば、倉庫に窓が付いてたことが分かった)、そのままなぜか突っ込まれていたベット、そしてシーツ・・・は見当たらなかったので、カーテンで代用した。

しかし、カーテンは二枚しか、見つからなかったので布団なしでまた寒い夜を過ごす羽目に。

あ~あ、家に帰りたい。

こんな暮らし、やめたい。早くあの変な王様親子から解放されたい。

さらわれてから、何日も経っている。数学の計算とか、その他勉強だとかもう何日もやってない。

それどころか、逃げてばっかりで、運動神経の悪い私に立ちはだかる試練ばっかり・・・・。

もう、アマノ王女、ホントわがままだよ・・・。

「お~い、ご飯できたよ・・・・って名前は何ていうの?」

リディアが、遠くでそう言ってるのが分かる。

なんで今更、名前なんか・・・?

「はい・・・私は天野てんや ひめですけど」





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