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嫉妬深い彼女

 いやいや心霊関係ないじゃん

 ふと思う…ヤンママさんの自主退学理由って心霊現象とか事件が原因じゃなくて…妊娠したからじゃない?

 もう、胡散臭いだけですわ

 ジト目の私に、お姉ちゃんは「エコバッグ開けてみな」と言った

 「へ?」

 エコバッグの中にはスーパーで買った稲荷寿司が入っていた…はず…

 私はずっとエコバッグを持っていました、ヤンママさんの家でも座る時には膝の上に置いていました…それなのに…稲荷寿司が消えていました

 いや、ただ消えていたのではなくて…容器はそのままに中身だけ消えていたのです

 ヤンママさんの「報酬分働く」って意味は稲荷寿司の分って事?

 どうやって稲荷寿司だけを取ったの?

 つまり…お狐さんは本当に不思議な力を持っている?

 ヤンママさんの言った「狡いやり方」ってのは報酬の稲荷寿司を先に食べさせて依頼を受けるしかなくすって事?

 どちらにしても…お狐さんは本物らしい…

 

 その後…私には恐怖体験が…ありませんでしたー!

 はい、全く何も起こらなかったわけです

 お狐さん効果なのか?そもそも霊障なんて勘違い?

 そんなわけで私の一番の悩みは再び恋の悩みになったわけです

 毎回、図書委員のお仕事の時に先輩とご一緒してましたが…特に進展もなく…変わった事と言うか分かった事が一つ…脚の悪い先輩の友人は我が校の生徒で先輩と同じ三年生って事…まあ、だから何?って話ですけど

 

 そんな、ある日です

 私がショッピングモール内にある大きな本屋に行ってラノベの新刊数冊を買った時でした

 その本屋には中に喫茶店がありまして、買った本を読む事が出来るわけですよ

 そして、その喫茶店には先輩がいらっしゃったのです!

 神様ありがとう!チョコパフェは…いりませんよね?神様ですし…

 「偶然ですね」

 なんて言いつつ私は先輩の座っている席へ

 「あの…ご一緒してもいいですか?」

 我ながら頑張りました!いや、この程度で?とか言わないで下さい…ヘタレ舐めるな!

 先輩は笑って「どうぞ」って言って下さいました

 よっしゃー!と内心ガッツポーズしつつ、私は紅茶をオーダー、買ったばかりのラノベを開きました

 先輩と相席…普段の図書室と変わらないって?

 いやいや外だと雰囲気が違うわけですよ!内心では「デートみたい」なんて思っていたのです!

 先輩は、やっぱり恋愛小説を読んでいました

 私は読んだ事がない作品でしたが、ラストは、ハッピーエンドなんですかね?

 先輩が読んでいると何となくラストはハッピーエンドの小説って気がします

 二人とも本を読み終わってショッピングモール内をちょっとウィンドウショッピング

 私は煩いくらいに先輩に話しかけました

 本当にマシンガンみたいに

 あまりにも煩かったからなのか別のお客さんに睨まれちゃいました、白い和服の女の子にです

 

 その本屋は先輩の行きつけのお店でした

 私は、なるべくその本屋で買い物するようにして、先輩を見かけては相席をお願いし続けました

 ストーカー?違います!恋する乙女です!ストーカーじゃありません

 そして先輩と一緒の時間が増えるたび…私の恋心は大きくなっていきました

 自分でも信じられないくらいに…

 

 告白…告白…告白…するべきか?せざるべきか?

 毎日毎日毎日毎日悩みましたとも

 だいたい女子高生の悩みの7割は恋の悩みだと思うんですよ!

 少なくとも私は、そうです

 私の場合は後の3割の内…2割が学業関係で1割が全然大きくならない胸です…胸です…胸です…はぁ…お姉ちゃんが羨ましい…

 『恋は出来る内にした方がいい』

 先輩の言葉です

 もうすぐ先輩が卒業する…もう先輩に会えなくなる…もう先輩に恋出来なくなる?

 私は、人生の先達に相談しました

 そう、お姉ちゃんにです

 お姉ちゃんは明るく「どうせフラれたって卒業したら、もう会えなくなるし同じでしょ」と…

 まあ、それも間違ってはいませんが…

 どうせ会えなくなるのなら…先輩の言葉に従います!恋は出来るうちにします先輩!

 人生最大の決心でした

 

 告白場所に選んだのは校舎屋上

 本来立ち入り禁止なんですが鍵が壊れてるのは公然の秘密

 季節は冬

 寒い屋上に来る生徒は、まず居ません

 大事な相談がありますなんて言って先輩を呼び出した私は、白い息を吐きながら…先輩を待ちました

 ドアを開けて先輩が屋上に来ました

 さあ!勇気を出せ!私!

 「先輩!私は先輩が!」

 好きと言おうとした私…何故…空が見えるのでしょう

 私は…何かに押されて…屋上から…落下…しました…

 ああ…死ぬのかな?助かっても骨折くらいするよね…痛いのは嫌だなぁ…

 走馬灯が見え…地面に…落ちました…

 痛すぎると麻痺するんでしょうか?

 それとも痛覚の神経すら壊れたんでしょうか?

 全く痛くありません…地面に横たわる私を狐のお面を付けた幼女が覗き込んでいます…誰?お狐さん?いやお狐さんは男性ですし、こんな小さくないですよね?

 あれ?私?全く怪我してないんじゃない?

 立ち上がっても全く痛い所はありません…傷一つありません…

 何で?

 その時…遠くから「屋上から誰か落ちた!」って叫びが…

 私は…思わず逃げ出しました

 もしも、我が愛すべき母校に通う後輩の皆さんが居ましたら…一つ言わせて下さい…学園七不思議の一つ『屋上から飛び降りる幽霊』の正体は…私です!

 

 翌日…私は先輩に呼び出されました

 場所は放課後の図書室

 今日は休館日にしてもらったとの事ですが…先輩にそんな権力が?

 図書室には本日休館日の札が下がってまして…中に入ると…

 居ましたよ…お狐さんが!!

 狐のお面を付けた男子生徒が座っていました

 テーブルには三人分のお菓子と飲み物が用意されていて、一つはお狐さんの席

 お狐さんは無言で席の一つを示しました、私に座れとの事のようです

 その席にはペットボトルの紅茶とコンビニの小さなケーキ、そして一冊の本が置いてありました、私が以前に読んだ『怖い話シリーズ』ってオカルト本でした

 二人無言のまま図書室で待つ…んっ?お狐さんの肩の上に?幼女?昨日見た狐のお面の女の子?とりあえずお狐ちゃんと呼びましょうか

 お狐ちゃんはお狐さんの肩の上に乗っていました…直立した状態で…サーカス団かよ!いやいや、もちろんサーカス団じゃありません

 よく見ると、お狐ちゃんは半透明で…お面じゃなく顔が…狐だったのです

 お狐ちゃんは私の視線に気付くと消えました…ああ…稲荷寿司を食べたのは、お狐ちゃんでしたか?

 お狐さんが本物って言われてた理由…こんなの見たら本物って信じますよね…

 

 空席に座る最後の一人…つまり私を呼び出した先輩が入室して来ました

 先輩は空席の前に来ましたが座ろうとしません

 そして…

 「今回の事は全部、僕が悪いんだ、ごめんなさい」と頭を下げました

 私は意味がわからなくて頭に『?』マークが出てました

 突然、お狐さんがパンっと手をうちました…すると…先輩の隣に白い和服の女の子が…半透明の女の子が…見えました

 「彼女は僕の恋人なんだ」

 先輩はそんな事を言いました

 

 お狐さんは私の前にあるオカルト本を指さしました

 栞が挟まれてます

 そのページには『死後婚』って話が…

 わかりやすく要約すると未婚の死者の魂が現世にあるうちに結婚させてあの世に送る儀式

 結婚相手は同じく死者だったり生者だったり…

 先輩は言いました

 「僕は彼女と死後婚してるんだ」

 先輩の話によると先輩の産まれた村は滅茶苦茶田舎で独特の古い風習があったのだそうです

 死後婚もその一つ

 過去にも死後婚は行われていたのに先輩みたいに霊が実際に憑いたって話は無いとか

 先輩は物心ついた時から幽霊の女の子と一緒に過ごしていて、過疎化で子供がいない村では唯一の遊び相手だったとか…

 そして二人は恋に落ちた…

 彼女さんは元々は優しい幽霊で他人に危害を加えるような事は無かったそうです

 しかし先輩が1年の時に問題が起きたそうです

 先輩を好きになった当時三年生だった生徒が先輩に告白して断られるとストーカー行為を始めたんだとか

 ストーカー行為はエスカレートしてどんどん悪質になっていった

 そして彼女さんが怒って…その三年生に祟ったのだそうです

 最終的にストーカーの三年生は窓から落ちた…

 そんな先輩の元に現れたのがオカルト研究会…最初、先輩は彼女が祓われると恐れたそうですが

 オカルト研究会の会長さんは「彼氏に危害を加えられたら怒って当たり前だ!幽霊だろうが同じだろう!」って言ってくれたんだそう

 オカルト研究会はストーカー行為の証拠を揃えて警察に訴えストーカーは逮捕、彼女さんを抑えてそれ以上ストーカーを祟らないようにしてくれたのだそうです

 でも問題が残ってしまったのだそうで…幽霊の彼女が先輩に近づく女子を警戒して霊障を起こすようになってしまいました

 何でも霊は肉体が無い分だけ感情が剥き出しで強い感情を持つと歯止めが効きにくくなるんだそうです

 一度激怒した彼女さんは怒りの感情が強くなって抑えにくくなってしまったのだとか

 私に霊障が出た理由は先輩に近づき過ぎたから…ああ…先輩が私を決して名前で呼ばなかった理由は彼女さんに誤解させないためでしたか…

 

 先輩がハッピーエンドの恋愛小説が好きな理由…生者と死者…近くにいるのに触れ合う事さえ出来ない恋人たち…二人にはハッピーエンドが用意されていないから…物語の中にハッピーエンドが見たかったんでしょうか?

 二人並んだ恋人たち…それは何て綺麗で…何て切ない…

 この話の主役は、きっとこの二人…私は脇役で名前すらなくて役名には『後輩』なんて書かれるんでしょうね…

 これが私の体験した、ちょっと不思議な話と先輩の恋のお話

 

 さて、最後にお狐さんの話をして締めくくりましょうか

 お狐さんの正体を明かすのはルール違反でしょうけど

 私たちの街にお狐さんは、もう居ないので許してくれるでしょう

 私がお狐さんの正体を知ったのは、ただの偶然

 ヤンママさんが赤ちゃんと赤ちゃんのお父さんと三人で歩いているのを見かけたから

 その赤ちゃんのお父さんは杖をついて脚を引きずって歩いていました

 なるほど…映画の時にも私は守られてたんですか…そしてお狐さんが一言も喋らない理由…声で正体がバレるからでしたか…

 

 何はともあれ…これで私のお話はおしまい

 ご静聴ありがとうございます

ミッドナイトノベルの方に書いている『許嫁物語』の執筆で更新が遅れました

暇つぶしにでも読んでもらえたら幸いです

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