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DOG LIFE  作者: MIYABI
第2章 森の海
9/21

Ep2-1 陸の、上の、鮪

 (マグロ)らしき物体はじっとこちらを見つめ続ける。

 思考は停止する。

 それはそうだ。森の中。暗闇の中。魚類に遭遇するなんて思いもよらない。

 というか、思いつく存在が異常だ。

 童謡だっただろうか?熊と出会うならまだ分かるかもしれない。落し物を届けてくれるのか?そんなわけがない。むしろより危険か。

 目の前の鮪は、当然のことながらただの魚類ではない。まるで爬虫類のごとく手足を持っていた。

 魚+爬虫類。見た目はあれだろうか?手足の生えたオタマジャクシ、という感じだ。ぶっちゃけ気持ち悪い上に、生臭い。

 もしかすると、これがアザリーが言っていた魔物だろうか?

 いや、落ち着け、俺。一方的に決めつけるのは良くない。

 こういった種族であるだけで、何らかの意思疎通を行う事が可能かもしれない。まずは会話からだろう。

 会話による意思疎通によって平和的解決を目指そう!

 ・・・・・まあ、対立を深めるのも会話だが。

 正直に言うと、こういった形で意思疎通を行うことなど苦手である。勉強ばかりしていて、人とまともに対峙することが少なかったと言える。

 改めて鮪の目を見据え、できるだけ友好的に、穏やかな表情を心掛けて声を上げる。


 「わ、わふっ(こ、こんにちわ)」



 この世界に来て初めて出した声は鮪へのあいさつでした。



 瞬間、右の頬に灼熱の痛みを感じる。

 何が起こった?

 視界は突如回転。まるで洗濯機の中に放り込まれたような、という使い古された表現を使うべきだろうか?まさにあれだ。

 ぐるぐるぐるぐる

 気が付くと顔を地面に押し付けていた。

 あわてて起き上がろうとするが力が入りにくい。

 右の頬は痛い、というよりも熱い。

 混乱する俺は状況を把握することができない。頭はふらふらするし、足元はおぼつかない。口の中は血の味がする。

 はっきり言って最悪だ。

 『な・・・・・・な・・にがっ』

 視界が歪む中、再び目線を上げると鮪との距離が空いていた。

 ほんの少し前までは普通に立っていた鮪。だが、少し離れた位置にいる今は左手を振り上げていた。

 それを見て理解する。

 殴られたのだと。

 理由はわからない。

 挨拶が気に入らなかったのだろうか?それにしては、他になんら反応はなかった。

 平和的に解決?一瞬で不可能だと悟った。

 鮪は、明らかに敵対する意思を持って行動しているのだから。

 殴り、殴られることがこの世界での友情の証?

 どんな、どSどM集団だってんだ。河原で殴り合う人間だって、もっと言葉を投げかけあうものだ。決して、ただ殴り殴られるだけの関係ではない。


 まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい


 突然に事態に思考は空回りし始める。

 そう、俺には覚悟が足りなかった。

 自覚を持とうとしても、自覚が足りなかった。

 野生の世界に放り出されたのだ。

 ここは弱肉強食の世界なのだ。

 意思疎通を図る?そんなことをまず気にするよりも、真っ先に安全を確保しなければならなかったのだ。

 後悔、先に立たず。

 そういった益体もないことを考えていると、再び吹き飛ばされる。

 今度は腹に一撃。結構、重い一撃で咳き込んでしまう。

 痛みと息苦しさの中、混乱を深めるが、同時に違和感を感じる。

 どうしてだろう?手加減されているように感じる。

 鮪からしたら、殺そうと思えば殺せているのでは?なにせ、こちらは何もできずに、ただ突っ立っていただけなのだから。

 一撃で致命的な攻撃を加えることは可能だろう。致命的な攻撃手段を持っていなかったとしても、続けて攻撃を加えていれば、こちらはただ一方的に殴られて、抵抗できないまま昇天していたのだ。

 再びよろよろと体を起こしながら目を上げてみる。

 鮪の目を直視する。

 そこに浮かんでいる感情は――――――――――嗜虐心

 残酷にも痛めつけ、虐げることに感じる喜び。

 表情はないが、その瞳に明確に浮かんでいるものは愉悦。


 頭の中に灼熱のマグマのような感情が湧き上がる。



 ふざけるなっ!!



 なけなしの自尊心(プライド)が心に灯をともす。

 負けてたまるかっ!!

 くじけそうになる心を蹴りつけて目の前の鮪と対峙する。

 どうする?戦う?

 今にもとびかかりたい衝動があるが、残念なことに前世界の俺は喧嘩すらしたことがない。そして、学んだはずだ。何事も、ある程度やり方を知らないと危険だという事を。

 正直、このまま逃げるという選択肢は考えたくない。

 しかし、人であった時ですら戦い方を知らなかったのに、今では犬だ。さらにどうやって戦えばいいかわからない。

 怒りにまかせてとびかかりそうになる意思もある。しかし、それを押しとどめる理性もある。

 相反する心から、まずは第一手を思いつく。

 何をするにしても、このまま無抵抗であれば相手はさらにいい気になって攻撃を加えてくるだろう。

 こちらもいつまでも殴られたままではない、そういう意思をっ!!

 まずは反抗の意思を吠えるべきだっ!!


 「きゃん、きゃん、きゃんっ!!」


 正直、威嚇にしても迫力がない。まだまだ子犬なのだから仕方ないともいえる。

 だけど、抵抗の意思を持っている、との意思表示になれば多少の牽制になるだろう。

 稼いだわずかな時間で対抗策を探るべきだ。むざむざ殺されてたまるかっ!!


 相手はこちらが無抵抗なか弱い存在と思っていたのだろう。突然の威嚇にやや戸惑いと、苛立ちを感じているようでもある。

 その気持ちに反して、より強い愉悦を感じているようでもある。

 相手の反抗はむしろ自分の悦びを高める手段。無駄な抵抗を嘲笑いながら、甚振りながら一方的に相手を踏みつぶす、そんな未来を想像しているのだろう。

 相手が油断している間に、そのわずかな時間にこちらの対抗手段を模索する。

 今まで取得した知識の中に何かないかを必死に探す。しかし真っ先に思い出すことは絶望的な事柄。


 鮪は他の小魚などを捕食する。

 つまり鮪は肉食である。


 この異常な鮪の生態がどういったものかわからない。だけれども、野生でただ嬲るために襲ってきたとは考えづらい。昔、そういった目的で他生物を狩るのは人間だけだとも聞いた覚えがある。

 負ければ死ぬのは当たり前だろう。

 そして――――――ただ死ぬわけではなく―――――負ければ喰われるという可能性が高い。

 背筋に怖気が走る。

 冗談じゃない。たまったもんじゃない。

 逃げるか?

 だけど、さらに絶望的な情報を思いだす。


 鮪は水中で最速80㎞/hくらいで移動することができる。


 ここは陸上だ。だからどの程度の速度で移動することができるか見当がつかない。

 だけどなぜだろう?全く楽観視できない。

 その頑丈そうな足から繰り出された蹴りを浴びたからだろうか?間違いなく、こちらよりも移動速度は速い、確信してしまう。


 そういった知識がさらに焦りを加速させるが、どうやっても対抗手段が見つからない。当然だ。

 勉強くらいの知識しか持っていないのだから。

 できることは――――――――――ただか細い声で威嚇するだけ。


 喰われる最悪の未来に震えながら―――絶望的な気分の中―――ふと思う。


 ラノベの主人公だったらこういったときはどうするのだろう、と。


 途端に稲妻のように考えが閃く。

 そう、こういった場合、まずは相手を『鑑定』して強さを測っていた。

 物語の中では当然のように主人公自身の能力も『鑑定』できていた。そして、ここにきて自分の能力をろくに見てもいなかったことを思い出す。

 敵の強さと自分の強さ、これがわからなければ対策の立てようもない。

 自分の能力で打破できる未来があるかも知れない。


 まさに、敵を知り、己を知らば百戦危うからず、である。


 『鑑定』できるか?自分にはまさにそれに相当するらしき能力があるはずだ。


 真眼(サードアイ)


 さっそく真眼(サードアイ)を発動してみる。


 名前                      

 種族    陸鮪                    

 職種    狩人                   

 位階    LC                  

 BLv    2                    

 SLv    2                   

 HP    80/80

 MP    10/10

 STA   16 

 ATK    9

 DEF    8

 MIN    2

 INT    1

 AGI   10

 RES    5

 FSE    5



 極技 疾風(ダッシュ)

 能力

 魂源


 『鑑定』することができた!!

 まだまだ安心することができない状態ではあるが、できることがあっただろうか?そこにわずかな希望を見出したからだろうか?


 もしくはいまだに自分の置かれている状況を正しく判断していなかっただけだろうか?


 俺は『鑑定』できたことに、こんな状況にもよらず無邪気の悦びを感じていた。

 すぐに絶望するとは知らず。

 続けて自分を『鑑定』する。


 名前                      

 種族     犬                    

 職種                    

 位階    LC                  

 BLv    0(1/365)

 SLv    0(0/50)

 HP    31/50

 MP    10/10

 STA    1/99 +Status 0%

 ATK    1/99 +Status 0%

 DEF    1/99 +Status 0%

 MIN    1/99 +Status 0%

 INT   21/99 +Status 0%

 AGI    1/99 +Status 0%

 RES    1/99 +Status 0%

 FSE    1/99 +Status 0%

 

 極技 

 能力

 魂源 無色透明(クリスタルスフィア)

    真眼(サードアイ)

    渡鳥(ポラリス)

    真言(ビナー)


 はっ?


 ステータスを見比べて、理解が追い付かない。

 数値的な大きさにどのくらいの力があるのかはわからない。しかし、それでも彼我の差に覆しようもない絶対的な壁があることが理解できた。

 一縷の望みをかけ魂源(エクストラスキルを)確認する。

 無色透明クリスタル スフィア真眼(サードアイ)に攻撃力はないことはわかっているので残りの2つに望みをかける。

 逆に言うと、その2つに戦況を覆す力がなければ死ぬしかないともいえる。



 渡鳥(ポラリス)

 自分の位置を見失わない。絶対的な方向感覚を得ることができる。また、思考領域に地図を作製することができる。認識いている他者の位置特定も行える。


 真言(ピナー)

 あらゆる種族の言語を理解できる。



 そう、死ぬしかない。

 わずかな希望にすがっていたためだろうか?

 わずかな光に導かれた道を、よく確認もせずに踏み出してしまったが故だろうか?


 その先は、底の見えない絶望という名の谷だった。


 虚勢を張り、威嚇を続けていた。

 しかし、心は折れかかっていた。

 その気持ちが声に現れていたのだろうか?

 再び、鮪は距離を詰め、俺を殴り飛ばしていた。


 HP   31/50  →  29/50


 ああ、このまま嬲り殺されるのだろうか?

 ああ、このまま再び何もなすこともなくこの世を去るのだろうか?


 諦めにより、意識と世界を閉ざそうとしたその瞬間。



 目の前に何物かが立ちふさがる。



 俺と鮪とを遮るように。

 鮪から俺をかばうように。




 立ちふさがったのは――――――見捨てたはずの――――――妹(?)だった。

いきなりのDIEピンチです。

妹(?)が影が薄かったのですが、そろそろ前に出てきます。


11/26 ステータスをいじりました

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