195 ルリアと姉
◇◇◇◇
その日の夜。
あたしはダーウ、キャロ、コルコ、ロアとスイ、そしてクロと同じ寝台の中に入っていた。
サラは、今日はマリオンと寝るのでいない。
「わふ~わふ~」
「どしたどした? ダーウ。甘えたくなっちゃったの?」
どうやらダーウは甘えたい気分らしい。
寝っ転がりながら、あたしに体を押しつけてくる。
「今日のダーウは、いやダーウはいつも大活躍だものな?」
「ぁぅぁぅ~」
あたしは仰向けに寝っ転がるダーウの胸からお腹にかけてをわしわし撫でる。
「りゃむ~」
すると、ロアも一緒にダーウを撫で始めた。
「む……はっむぅ……るりあぁ~」
「どした? スイちゃん?」
「むにゅむにゅ」
スイはもう寝ていた。寝ながらあたしに抱きついてくる。
「スイちゃんも甘えんぼうだから、しかたないな?」
あたしはスイのことも撫でる。
撫でると、スイは「ふへへ」と言いながら嬉しそうな表情になる。
「りゃむ~」
するとロアもスイのことを撫でていた。
「ロアも、もっと甘えていいよ?」
「りゃむ?」
あたしはロアのことも撫でる。
「キャロとコルコもな?」
「きゅ?」「ここ?」
あたしはベッドボードに立つキャロを抱き寄せ、続いて枕元にいたコルコを抱き寄せる。
「みんな、すごくがんばったなー? な、クロ」
『うむ。みな頑張ったのだ! ルリア様も頑張ったのだ!』
クロは枕元に横たわり、自慢の二本の尻尾であたしの頭を撫でてくれた。
「クロ、ありがと」
あたしは守護獣達を撫でながら、窓の外を見る。
「馬小屋があまっててよかったな?」
『さすがは国一番の馬産地なのだ!』
ヤギ達と鳥達には、一時的に使われていなかった馬小屋に入ってもらった。
ヤギ達の体調が戻るまで、馬小屋を貸してもらえることになったのだ。
「ヤギたちになまえつけないとな?」
『不安なのだ。ルリア様は、ヤギとかつけかねないのだ』
「そ、そんなことないよ? ルリアはせんすがあるからな?」
『ふーん』
クロはあまりあたしのセンスを信用していないようだ。
これはかっこいい名前をつけて、驚かさねばなるまい。
「……かっこいい名前、かっこいい……メエメエとか……」
名前を考えている間に、あたしは眠ってしまったのだった。
◇◇
ルリアが眠りこけた後、部屋の中に入ってくる人影があった。
ルリアの姉リディアである。
「……」
いつも通りベッドボードに直立するキャロをリディアは優しく撫でる。
「キャロ。見張りをして偉いわね」
そして、寝息を立てるルリアの頬に優しく触れた。
ルリアは布団を跳ね上げ、お腹をだして眠っている。
そのお腹の上にそっとコルコが首を乗せていた。
「コルコはお腹が冷えないようにしてくれているのね」
「…………」
ルリアを起こさないように、コルコは何も言わない。
コルコは大きい鶏なので、乗っかったら重すぎてルリアが起きてしまう。
だから、首だけ乗せているのだろう。
「ありがとう、コルコ」
リディアはルリアの服を整えて、お腹を隠すと、布団を掛ける。
「ねーさま?」
「おこしちゃった?」
「んー、おからだは、もういいの?」
「ルリアのおかげよ、ありがとう」
帰宅したルリアは眠っていたリディアを解毒し、治癒魔法をかけた。
それからもリディアは眠っていたが、先ほど目をさましたのだ。
「むりはよくない」
「ふふ。ありがとう。でももうすっかり元気よ」
リディアはルリアの頬を撫でる。
「ねーさまもいっしょにねよ?」
「……そうね。それもいいかもしれないわね」
リディアはルリアの隣に横になる。
「ダーウは……本当に起きないわね」
「……ぁぅ」
ダーウはルリアの足元で気持ちよさそうに仰向けで眠っている。
「……ねーさま、げんきになって……よかった」
そういって、ルリアはリディアに抱きついた。
「ありがとう」
リディアは改めてルリアのことを撫でる。
出発前、リディアは父母から言われたことを思い出した。
ルリアは治癒魔法を使い精霊と話せる特別な子供であるらしい。
「本当に特別なのね」
「む? どした?」
リディアに抱きつくルリアは眠そうな目を向ける。
「何でもないわ。……ルリアはきっと偉大な、歴史に名を残す人物になるわね」
「そかな? ……むにゃ」
ルリアは眠りかけている。
「ゆっくりおやすみなさい」
「……ねーさまもな?」
リディアはルリアを抱きしめると優しく髪を撫でた。
「ルリアは何も不安に思うことはないわ。私が守ってあげるからね。私は姉なので」
「……む……にゃ。にへへ」
ルリアはほとんど眠りながら、にへらと笑う。
「可愛いルリア。ゆっくり大きくなるのよ」
そうつぶやいて、ルリアのことを撫でているうちに、リディアも眠りについたのだった。
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