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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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87話

 みんなに見送られて旅に出た俺は現在馬車の中にいた。次の街までは歩いて行くわけにもいかず、馬車での移動となった。


 ちなみに歩いて行くとなると、数日は掛かってしまうようだ。まぁ馬車でも丸一日かけていくような距離なので、わざわざ歩いて行く理由もない。


 馬車代は魔物が来たときには倒すという条件で無料ということになった。冒険者ギルドで依頼を受けたわけではないので、その条件としては妥当である。それにリカルドの紹介ということも許可をもらえた理由の一つである。


 こんな一度も護衛依頼を受けたことのない子どもを受け入れてくれるだけありがたいというものだ。もちろん馬車の護衛には俺だけではなく、ちゃんとギルドで依頼を受けたパーティが一緒にいる。


 ランクBが二人に、ランクCが三人というパーティでバランスの取れた良いパーティだとリカルドは言っていた。それに女性もいるということなので安心して一緒に行くことが出来るとも言っていた。


 俺は今回の旅はアルンから西の方の街へと向かって行くことにした。二つほど街を行けば、そこには三つのダンジョンが近くに街があるということで一応の目的地はそこにしたのだ。


 ダンジョンはすでに攻略していても最奥のところまで行けば、さらなる力が与えられるのでもらっておいて損は無いし、手っ取り早く強くなるにはそれが良いと思ったのだ。それにダンジョンを攻略するにあたって、色々と工夫して進んで行くことになると思うし攻略していく中で強くなるということもあるのでそれに期待することにする。


 まぁ細かいことは着いてから考えることにして、今は旅の道中を楽しむことにするとしますかね。


 今回隣の街まで行くのに、二台の馬車が行くことになっている。何かの商品と運ぶということで中身はわからないけど、それを運ぶこととなっているようだ。


 護衛である冒険者たちは先頭に一人、最後尾に一人、御者台にそれぞれ一人ずつ乗っていて、最後の一人は自由に動き回ってそれぞれ周りを警戒するという形にしている。御者台にいる二人は後衛職で、それ以外は馬に乗って周囲を警戒して進んでいる。


 御者をしているのは商人本人でこういうところで掛かる費用を削減しているようだ。


 それでも馬を多く使っていることなどお金が掛かってしまうのではないかと思うが、この森を抜けるにはここまでのことが必要であるということだった。アルンの街の周囲の森は魔物が多く、しかも奥に行くほど強い魔物が出て来る。森を抜けてしまえばこれと言って問題はないのだが、それまでが大変なことなのだ。


 魔物のおかげで盗賊などの人による被害は気にしなくてもいいのだが、その分魔物への警戒が他よりも大変になってくる。それでも魔物が多くいて、その倒した魔物の素材が集まるアルンには多くの商人が出入りして商売をしている。


 それだけ危険とわかっていても儲けることが出来るのだから商人としては来ないという理由はないのであろう。そしてそのこともあって冒険者たちには護衛依頼が増えるということなのである。


 まぁ今回は他の強い人たちが街から離れていることもあって、護衛の数も少なくなっていていつもよりも大変だということは出発前に聞いたことだ。しかも別の街でも人手不足になっているようだ。


 そんな中俺の扱いと言うと、一応は魔物が出たら対応してくれと言われたがそこまで期待している様子ではなかった。その証拠に俺だけ荷台の方にいるように言われた。俺の出来ることやランクのことは言ったのだが、信用されずただの子どもという認識が強いみたいだ。


 ランクのこともCではあるが、リカルドと一緒に行動していたことも有名なのでそれでおこぼれをもらったということになっているようである。そして彼らは別の街からやって来て、今はその街に戻っているということなのでそこまで詳しく知らなく、俺がダンジョンを攻略したことも知らない様子であった。


 そのせいで完全に荷物扱いを受けており、まぁ何もしなくていいのは楽だからいいのだが、なんだかやったことを否定されているので気分はそこまで良くはない。かと言って言い返しても余計にめんどくさい方に捉えられそうなので、それ以上は言ってはいない。


 こういうのは実際に見ないとわかってくれないものだからな。そのことに関しては放置でいいだろう。


 道中は魔物が多い森に挟まれているだけあって、数回魔物が現れていた。


 しかし彼らは慣れた様子で対処してみせていた。魔物の発見と同時に馬に乗っていた前衛が馬車に近づかせないようにして、御者台にいた後衛職の人もそれを援護する様に攻撃をする。


 そしてすぐに自由にしていた人も合流して、一気に魔物を倒していった。三人では手こずる相手だと判断した場合は、後ろの方の御者台に乗っていたもう一人の後衛職を呼んで攻撃役を増やしていた。


 終始最後尾にいた人は周囲への警戒を怠らず、いつでも動けるようにしている感じであった。


 俺も参加しようかと思ったのだが、馬車を出ると魔物の近くへと行くのを止められるので参加することが出来なかった。完全に俺のことを子ども扱いしているようだった。


 そんな扱いに結局何も言い返せないまま無事に森を抜けることが出来た。何度か休憩を挟んだがほとんど移動しっぱなしであった。森を抜けないと安心して休むことは出来ないし、どちらにしろ今日中には街には着かないのでどこかで野宿をすることとなる。


 つまり日が落ちないうちに森を抜ける必要があるということだったのだ。


 とりあえず予定していた通り森を抜けることが出来て、少し進んだところで今日は野宿することとなった。これだけ需要があるのだから宿場町など作ればいいのではと普通思うのだが、森から近いこともあって魔物に襲われることを考えると出来ないということだった。


「レヴィちゃん、疲れたりしてない?」


 みんながあれこれ準備している間俺は何もやることがなくぼーっと見ていたのだが、それを見て冒険者の一人が声を掛けてくれたみたいだ。


「はい。大丈夫ですよ、結局何もしていませんでしたから」


「いいのよ、そんなこと気にしなくて。準備も力が有り余っている男たちにやらせればいいのだし」


「そうそう、それに魔物退治も慣れている私たちに任せちゃえばいいんだし」


 もう一人もやって来てそんなことを言って来た。


「いや、でも」


「はいはい、私たちが良いって言えばいいのよ。それに森を越えたからこれから私たちも暇になるだろうしね。あ、それにレヴィちゃん可愛いからあまり不用心に男たちに近づいちゃだめよ。何かあったら私たちに言いなさいね」


 そう言って俺に何もさせないような感じであった。後半はなんか違うことを言って来たが。まぁ確かにこの先からはあまり魔物はいないらしいし、やることはさらになくなってしまう。結局街まで何もやることはなく終わりそうである。


 その後はみんなで食事を取り、早めになることとなった。しかし護衛する冒険者のたちは交代で見張りをするようであった。考えていなかったが確かに見張りは必要だな。魔物が襲ってこないとは限らないし、やらなければいけないことだろう。


 問題はそれに俺はどうやって参加させてもらうかである。正直それくらいはさせて欲しいのだが、完全に子ども扱いされているので難しいと思う。どうやって説得するか悩んだ末に出てきた案がこれだった。


「私にも見張りに加えて欲しいです」


「ん? 私たちでやるからレヴィちゃんはやらなくていいわよ」


「でも、冒険者である以上今後も必要になって来ると思うので、一緒にやらせてもらえませんか? どうやってやるのか、本当に出来るのかということも知りたいですし、どうかお願いします」


「いいんじゃねぇか? やらせれば、どうせ俺たちはやるんだし眠くなれば寝ればいいんだから」


「確かにそうね。それじゃあ私と一緒に見張りをしましょうか。眠くなったら寝てもいいからね」


 そうして俺は見張りの参加をもぎ取ったのであった。三交代で行うらしく、俺が参加するのは一番初めの時だった。


 寝るのは馬車の荷台は荷物がたくさんあるので使えるはずもなく、地面に横になって寝るということだった。そのことを心配して、俺に大丈夫かと聞いて来たがどちらにしろ俺は寝ることはないので特に気にしない。身体が痛くもならないし別に地面に横になることも抵抗はない。


 見張りに参加させてもらったが特に何も起きずに順番が回って来て交代し、その後も何も起きることなく朝を迎えることとなった。暇ではあったが、寝るときになぜか一緒に見張りをしていた女性が俺に抱き着いて来てその身体が柔らかかったということだけ言っておこう。


 その後一気に街へと向けて馬車を動かすのであった。最後までイベント的なことが何も起こることはなく終わってしまったのであった。



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