81話
思っていたよりも難しかったので他の人の話をするかはわかりません。
竜王の女の子の視点です。
「おはよー」
私はいつものようにみんなと比べて少し遅く起きた。父さんと兄さんは朝早くから家の目の庭で稽古をしていて、母さんは朝ご飯の支度をしている。私も何もしないというのは気まずいので母さんの手伝いをしたいところなのだが、まだ四歳の私では手伝うことは許してくれない。
そう、あの転生からすでに四年の月日が経っていた。とは言っても私の記憶は三歳より前のものは曖昧なものしかなく、しっかりと意識を持ったのは三歳になった時からだった。
今の私には若い両親と二歳年上の兄がいる。父さんは里の中でも屈指の実力を持っており、母さんも高い実力を持っているそうだ。そんな両親だからであろう、兄さんもまだ六歳という年齢であるにもかかわらず、周りの子どもたちどころか年上の子どもたちよりも強くなっていると隣のおばちゃんから聞いた。
ここが里というのはみんながそう言っているので私もそう言うことにしている。
「おはよう、ユキ。もうすぐ戻ってくると思うから先に座って待ってて」
「わかった」
するとすぐに父さんと兄さんが帰って来た。
「おはよう、ユキ。待たせちゃったかな」
「だからあの時に終わろうと言ったのに。ユキ、おはよう」
「おはよう」
こんな感じが私の新しい家族のいつも変わらない朝の光景だ。食べ終わると父さんは仕事へと向かう。父さんの仕事は周辺の魔物などを狩って、食べ物も確保をするというものでその中のまとめ役をやっているらしい。そして里の安全も守っているそうだ。しかし最近は娘、つまり私に自慢したいがために積極的に前に出て、獲物を狩っているそうだ。
母さんは家事の他にも里の子どもたちに勉強などを教える教師役をやっている。しかし学校などはないので青空の下やっている。一定以上の子供たちに読み書きのことから簡単な計算、後は戦い方なんかも教えている。教師役も母さんだけというわけではないので交代で行っているようだ。
兄さんの方は母さんの手伝いをした後は青空教室の方へ行っている。一日中あるわけではないので、それからは私と遊んでくれたり、友だちと遊んだりしている。
私はと言うと、まだ出来ることはほとんどと言うか何もないので邪魔にならないように大人しくしていたり、青空教室をしている隣の家で過ごしたりしている。手のかからないとよく言われるが見た目はともかく流石にこの歳になって余計な迷惑を掛けたくはない。まぁ四歳児ではあるから何言ってんだと言われるかもしれないけど。
この一年間で話を聞いたり、散歩するときに見たりしてわかったことは、この里には同じ竜人しかいないということだ。私の種族がそうであったから周りや親は同じだとは思っていたけど、住んでいるのはもちろんのこと里の中でも一切他の種族を見ることはなかった。
そのことから予想するにこの里は外との行き来はしない、閉鎖的なところなのではないかと思う。狩りや畑を作っていて食べるものには困ることはないし、色々な道具なども釣ったりしている場所にも行ったことがある。
一通り見たことはあるが全てこの里の中でまかなえていけるようになっている。もちろん直接聞いたことはないのであくまでも予想でしかないけど、竜というのは前の世界でも特別な存在だったからそういったこともあり得るのではないかと思っている。
まぁまだ子どもである私にとっては関係のないことだけど、将来的にはどうなるかわからない。この里から出てはいけないと言われでもしたら外の世界のことも見て回ることは出来ないし、おそらくはあの男子にもお礼を言うことは出来なくなってしまう。
とりあえず今考えても仕方のないことだけど、少しずつ周りの様子を見ながらそういったことにも触れていかないといけないことがわかっただけでも良しとしようかな。
全くわからず聞いてしまって変な雰囲気になるのも嫌だからね。
そうして穏やかな日々を過ごしていった。
それから六年という月日が経った。私は十歳になり、まだまだ子どもだけど色々とやれることは増えていた。
六歳になる頃には兄さんと同じように父さんとの訓練が始まって、私も血筋なのか竜王のおかげなのか、すぐに上達していって数年経てばすでに子どもの中では兄さんを除けば一番になるほどの実力を持っていた。
兄さんはやっぱり強くて私でもまだ勝つことは出来ずに、あっという間に大人たちに交じって狩りに行けるほどになってしまっていた。
竜人の成人になる年齢は十四歳からで、十二歳から参加しているというのは父さん以来のことだと言っていた。それを聞いた時はやっぱり血筋なのだなと思ってしまったほどだった。
流石にまだ簡単な狩りしかやらせてもらえないみたいだけど、それでも色んなことを教えてもらえることが楽しいと兄さんが話をしてくれた。
相変わらず父さんや兄さんは私のことが大好きな様子で、帰ってくるたびに色んな事を自慢しに来るのだ。しかし二人で張り合うということはしないようで、兄さんの頑張りも父さんは褒めてたりもしていて、兄さんも嬉しそうにしていた。その間の私はと言うと、返事を返す間も与えないほど色んなことを話して来るので、全て聞いているだけという状態になってしまっていた。
それでも私に話せることが大事なようで特に気にすることなく、話してくるので母さんが止めてくれるまでずっと父さんの膝の上で動かないようにしているというのがいつもの日常となってしまっていた。
私としては知らないことや里の色んなことを話してくれているので、ありがたく聞かせてもらっているから文句はなく、二人の話を聞いてあげているのだ。話のほとんどがどうでも良いような話だとしてもね。
しかし今日に限ってはそんなのんびりとした空気ではなかった。夕飯の時間に話があると言われ、食べ終わった後に話をするらしい。いつもとは違った雰囲気の両親に対して、私は首を傾げたがどうやら兄さんもわからないらしく、結局は話すのを待つしかないということになった。
「結論から言うとだな。ユキが成人したらこの里から出て行くことになった」
「はぁ!? どういうことだよ? 出て行くってなんでだよ!!」
突然の父さんの言葉に驚いて上手く頭が回らなかったけど、真っ先に声を出した兄さんの声で落ち着いて来て私もそれを聞きたいので、父さんの言葉を待つことにした。
「とりあえず落ち着け。これは成人してから教わることなんだが、今回はユキのことがあるから特別に二人に話すことになった。私たち竜人は竜神様を崇めているんだ。竜神様が大げさにして欲しくはないということで、これを知らせるのは成人してからで特に何か特別なことをしなくても良いということになっている」
この世界に来てから精霊に感謝するとか、神様に恥じない行いをしなさいなどのことは言われてきたけれど、この神様などと言うことは確かに今まで言われたことはなかった。急に宗教染みたことを言いだしたけどこの世界では本当に神様が居てもおかしくはない以上きちんと聞いておいた方が良いと思う。
これが前の世界であれば無視したり、否定したりするのが当たり前のことだったんだけどね。
「今回その竜神様からお言葉をいただいたそうだ。それがユキを里の外に出すということのようだ。詳しい話はすることはなく、ただユキが竜王の子だからということだった」
「何言ってんだよ。ユキは俺の妹で父さんと母さんの子どもだろ」
転生しているからか誰から生まれたかなんて今更どうでもいいのだが、実の子どもではないと言われたら衝撃だけどそれほど深刻なことではないように思えてしまう。どちらにしろ育ててくれたのは母さんたちなのだし。
「いやそうなんだが、そうじゃないだ。私たちがクラスというものがあるように、ユキもクラスがある。そのクラスの名前が竜王というもので、特別な意味を持っているだ」
それは確かに持っている。譲ってもらったものだし、忘れることはない。
「つまりユキはその竜王に選ばれたから外の世界に行って、やるべきことをやらないといけないというわけだ。これを無視するなんてことは出来ない、すでに決定事項ということになっている」
「どうにかできないの?」
「ああ、どうにもできない。竜神様のお言葉だ、無視するなんて以ての外だし隠しても意味はない。そしてこれは里の上の者たちで決まったことだが、本来竜人はこの里出ることは基本禁止しているので今回のことも里を出るのはユキだけということになった」
「それじゃあ、ユキを一人で何があるかわからないようなところに放り込むというのか!?」
「竜王というクラスにはそれだけの実力があるということだ。それにまだ何年かある、その間に外に出しても問題ない強さを持たせてやればいいということだ」
「それで父さんも良いと思っているのかよ!?」
「竜神様のお言葉は絶対だ、従うしかない。ユキもそういうことだ、わかったな」
「うん。わかった」
そういうわけで話は終わりとなった。みんなそれ以上は話すことはなく各部屋に戻って行ってしまった。
私としてはああ、なるほどな。という感じで納得できる話だった。特別な力を手に入れればその分何かをしなくてはいけないということはよくあることだ。具体的なことは何一つわからないけど、つまりはそういうことだということだ。
その次の日からは父さんとの訓練がより一層実践に近いものになった。これまでに比べてはるかに厳しくなったが、父さんは相変わらず優しく接ししてくれるので特に不満に思うことはない。
兄さんはあまり話すことはなくなってしまったが、それも時が経つにつれて普通に話すようになってくれた。
そんなこんなあっという間に私が成人になってしまった。
「それでは行ってきます」
「身体には気を付けてな」
最後に兄さん、父さん、母さんの順に抱き締められて私は里の外へと歩き出した。
腰には父さんがくれた一振りの刀を付けている。これは私のために最高のものを用意してくれたものだった。他にも良い装備を持たせてくれて私は旅立つことが出来た。
そして見送りに来てくれたみんなは私の姿が見えなくなるまで手を振っていてくれたのであった。
こうして今、私の旅が始まったのであった。




