21話
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ありがとうございます。
ギルドの中へと入ると、そこは前見た時とは全く異なる光景を見ることになった。
以前一回だけ見たことがあったが、確か奴隷商からギルドへと歩いて来た時だったか。その時はほとんど人がいない状況だった。
しかし今は、多くの人がギルド内にいて出入りも激しいことからも、本当に多くの人がこのギルドを利用していることがよくわかる。おそらく時間の関係もあったのだろう、あの時は夜だったからな。
俺はリカルドからはぐれないように付いて行き、壁の前で立ち止まった。
その壁には依頼が張り出されており、その中から選んで受付まで持って行くと、その依頼を受けることができるというシステムだ。
そこでランクCの四人の男たちとは別れることになった。
ランクDの依頼とCの依頼が張り出されている場所は違うところなので、彼らはそっちに行くようだ。
俺とリカルドの二人で受けるので、規則的にはランクBとDの二人の場合、ランクCからDの依頼が受けることが出来るようになる。
なので俺たちも受けようと思えば、Cの方を受けることができるだが、俺のこともあってまずはランクDの依頼を受けてみて様子を見ることにするようだ。
何も説明は受けていないのでわからないけど。俺の方も昨日、説明は面倒だから細かいのはしなくていいと言ったのでこういったことの説明はしないのだろう。まぁお互い一から十まで説明するのは疲れるからな。
依頼には討伐や配達、護衛なんかもあり、ランクFだと受けることができる依頼は街の中の依頼しか受けることができない。そのため主な依頼は配達などになって来る。
ランクEから街の外での依頼が受けることが出来るようになるが、その内容は簡単な採取や弱い動物の討伐といったものになる。
そしてランクDなのだが、このランクになると多くの種類の依頼を受けることが出来るようになる。
護衛なんかもランクがDになると受けることが出来るようになるものの一つだ。また討伐の依頼も魔物が含まれるようになる。
魔物とは、魔力を多く持った動物のことであり、その強さも普通の動物とは比較にならないほど強くなる。
ランクがDから上はその依頼の難易度が上がっていく形になっていて、遠くの方に行く依頼も受けることが出来るようになる。
この街の周りはとても豊かな土地で森も多いため、魔物の数もその分多くなり、その討伐の依頼も多くなってくる。
そう言ったこともあって、冒険者の数も多くなるということらしかった。
このランクのことなどは昨日リカルドに説明を受けていた。つまり俺たちが受ける依頼もその討伐依頼の一つということになる。
リカルドがどんなものを選ぶのかわからないが、俺は大人しく後ろ姿を見ながら待っていることにした。
依頼が張り出されているところはみんな必死に良いものを選ぼうと、群がっているのだ。
報酬が良くて簡単なものがいいのだろう。その兼ね合いは自分次第なので人によって変わってくるとは思う。こういった人混みは苦手なので、リカルドに任せられるものは任せておきたいと思うのであった。
冒険者といったら定番の先輩冒険者に絡まれるというものがあるが、俺はリカルドが常に近くにいることもあって、そう言った面白そうなイベントは起こらないようだ。
まぁ合ってもめんどくさいだけなような気もするが。
そんなどうでもいいようなことを考えていたら、リカルドが選び終わったらしく受付に行くぞ、と合図を送って来た。
リカルドのことをみんな知っていたのか、それともその迫力に距離を置きたかったのかわからないが、リカルドが選んでいる最中その周りには少しの空間が出来ていた。
そしてリカルドが壁から離れると、その場所に我こそはと人が群がっている様子を見て、思わず笑ってしまうのであった。
受付までの列へと並び、俺たちの順番になるまで待った。
受付の人物は俺も知っている人だった。名前はアーシャと言って、この人も美人さんだ。
俺が会う人みんな美人な気がするが、よく考えると奴隷は綺麗な方が高く売れるし、エルフもみんな美人ということで有名で、受付などの接客対応も綺麗な人の方がいいと考えることができるので、納得できることではあった。
ユアだけは可愛い系で俺にとっての癒しなので、このまま可愛いままでいて欲しいものである。
そんなユアのためにも俺は頑張ってお金を稼がないといけないので、今はそっちに集中することにしよう。
ちなみに俺が冒険者カードを受け取った時の受付もアーシャだった。その時はギルドの説明などはリカルドにしてもらおうと思っていたので、あまり話すことはなかったが、どうやら向こうも俺のことを覚えていたみたいだった。
「これを頼む」
リカルドは依頼が書いてある紙を受付へと出すと、俺たちに気付いて笑顔で対応してくれた。
「いらっしゃいませ、ってリカルドさんにレヴィちゃんでしたか。かしこまりました。では、冒険者カードの提示をお願いします」
俺とリカルドはカードをカウンターへと出す。
「はい、問題ないようですね。ありがとうございました」
それをアーシャはカードを何かで読み取ると、すぐに返してきた。
「しかし、本当にゴブリン退治でよろしいのですか? もっと良いものもあったと思うのですが」
「ああ、レヴィにとっては今日が初めてだからな。簡単なものにしようと思ってな。まぁ途中で他の魔物にでも会ったらどうするかはわからんがな」
「そうでしたか。あまり魔物を狩り過ぎないで下さいね」
「わかってる」
そう言うと、リカルドは出口へと向かって行った。
俺も手を振ってくれるアーシャに頭を下げて、リカルドの後を追った。
ギルドの外へと出ると、俺はリカルドの横へと並んだ。
「依頼内容はゴブリン退治だっけ?」
「そうだ。内容は多くのゴブリンを倒せばいいってものだな。ランクEでもたまに受けることができるやつだ」
「つまり簡単なものってことか」
「そうだな。教えながらであれば最初に受けるのにはちょうどいいだろう。それに依頼分をこなしてしまえば、他の魔物を倒してしまっても問題はないからな」
ゴブリンで様子を見て、大丈夫そうならどこまで行けるのか見るって感じなのかな。
「リカルドって見た目とは違って意外と慎重だよね」
「意外とってなんだよ」
「いやまぁ、もっとこう、当たって砕けろ見たいな感じだと思ってたよ。砕けるのはだめなんだけどさ」
「そんなことしてたら、命がいくつあっても足りないぞ。今回の場合は俺がいるから、多少は無理をしてもいいかもしれないが、レヴィのことは何も知らないからな」
「ふーん、そっか」
ご期待に添えるかはわからないが、一生懸命頑張らせてもらいますよ。
向かったのは街の南側の森だった。
基本的に街の周りはどの方角も同じような環境で、街を離れるごとに魔物の強さが強くなっていく。
目的のゴブリンは森の浅いところでも出て来るということだったので、今回はどのくらい深くまで行けるかを試してみるということになる。
街の外へとは冒険者カードを門番に見せれば、出ることができる。これは街へ入る時も同様だ。
ここからは俺が先頭になって進んで行くことになった。
何も知らないということはリカルドもわかっているが、とりあえず俺にやらせて危なくなったりしたら後ろから声を掛けるというやり方でいくらしい。
さて、俺は海にいるときから陸に上がって今に至るまでずっと、自分の魔力の制御の練習をしてきた。それは何かしらの別のことをやっていても同時に少しずつ行っていたほどだ。
そしてみんなが寝静まってからはとても暇だったので、集中できることもあってひたすら練習をしていたのである。
その成果を今見せるときがやってきたのだ。
まずは周囲の知覚からである。これはより広くより正確に周りの様子がわかるようになった。
正確な距離はわからないが、俺を中心に三つ先の家までのことであれば全方向で中の様子も正確にわかるほどになった。
普通そんなこと範囲を知覚しようとしても、頭の処理能力的に難しいとは思うのだが、この身体だからか俺には問題なく使うことができた。
流石に使いっぱなしは気が休まらないので、普段はもっと範囲を狭めてはいるけど。
今回の討伐ではこの能力が探索に役に立つと思うので、積極的に使って行こうと思う。
また水を生み出して、操る方だがこれも屋敷を掃除したときに感じたことだが、前よりも自在に操ることが出来るようになっていた。
そのためこちらの方も期待しておいていいだろう。
生き物を殺すことは牢屋での一件以来だが、この時はクズな人間だということをわかっていたので、特になにも思うことはなかったが、今回も大丈夫だと思う。
説明は出来ないがなぜか大丈夫という気持ちがあるので、大丈夫なのだろう。
ということで俺は後ろからリカルドに見守られながら、森の中へと入って行った。




