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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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14話

 それからその日は、部屋の中で大人しく過ごしていた。


 ユアも昨日まで大変な目にあっていたのだし、他に何か出来ることもないので、大人しくしているしかないとも言えるけど。今は休むことも大切なことであろう。


 夕食はまたお昼ご飯を食べた部屋で、みんなで集まって食べることとなった。


 その時、無事にクランを作ることが決まったことや、クランの名前が野良の住処に決まったことがリカルドの口から発表された。


 名前に関してはみんなから高評価をもらえることができたので、それについてはとても安心した。まぁお世辞のようなものであってもわからないので、とにかく良い方に受け取っておこう。そっちの方が精神的に楽だ。


 どういった感じのクランにするのかとか、そういった細かい話はまだ後にすることにして、でもそれぞれで何かいいのがあるのであれば考えておいて欲しいということも言っていた。


 ただ単に俺たちが暮らしていくというクランよりも何か目標みたいなものがあった方がみんな頑張れるし、楽しくなるとも思うので俺も少し考えてみようと思う。


 そして、クランの活動拠点となる建物の下見だが、明日見に行くことが出来るようになった。


 いくつか貴族が使っていた屋敷があるらしく、そこの中から選んで俺たちの家に出来るということだった。


 お金もギルドからの紹介というのとギルドからの支援で払うことが出来て、とりあえずは俺たちは何も心配するようなことはないということだった。


 下見に行くのは、俺とユア、リカルドに女性が一人行くこととなった。


 別に俺が行くかなくてもと言ってみたのだが、お前が行かなくてどうするんだと言われてしまい、俺が行くのが当たり前のことになっているらしく、何も返すことが出来なかった。


 そもそもなぜ俺が行くことが前提になっているのやら。どんなのがいいのかというのもよくわからないんだけどな。


 そしてもちろん俺が行くのであれば、ユアも行くと言い出して体力面なども心配はあったのだが、譲ることはなく結局行くことになってしまった。


 後は家のことは基本的に女性たちに任せることになると思うということで、女性も一人行くことになった。


 その女性にとっては街を通ることなど、男がいるところに通ることもあると思うので大きな負担になってしまうとは思ったが、家事をしない俺らだけで見ても、どんなのがいいのかわからないので、付いて来てもらうことになったのだ。


 移動は馬車でするということだし、建物の案内も女性がしてくれるということなので、心配することもないと思う。そのことを知って女性本人も安心している様子だったのがわかった。


 その女性も頑張りますと、力強い返事をしてくれたので、大丈夫だろう。


 その女性の人はクランの女性たちの中ではまとめ役みたいな感じらしく、今回の建物の下見は野良の住処のトップに近いメンバーでいくことになったというわけだな。このメンバーであれば他の人たちも文句はないだろう。


 リカルドとその女性はまとめ役だが、子どものまとめ役は俺とユアではない気がするのでそこんところは微妙ではあるが。


 その後はシャワーを浴びて、ユアは今日一日俺に付いて回っていて疲れたのか、部屋へと戻るとすぐに眠ってしまった。


 リカルドもやることがないのか、部屋でのんびりと過ごしていた。


 俺の方も特にすることはないので、ユアの隣で横になってみた。


「レヴィ、もう暗くしていいか?」


 リカルドは俺が寝ると思ったのか、聞いてきた。


「うん、リカルドがいいなら消しちゃっていいよ」


 俺は別にどちらでも構わなかったので、そう返事を返した。


 そしてリカルドは部屋の明かりを消して、ベッドの中へと入って行った。


 俺は完全に暇になってしまった、寝ることも必要ないので暇つぶしに魔力の操作の練習や、感知も出来るかなど色々と試して練習してみることにした。


 魔力自体は俺も水を生み出したり、操ったりしていた時に感じていたのだが、この身体のせいか、特に意識することなく使うことが出来たので、問題はなかったのだが。それでも練習すれば、より上手く使うことも出来るようになるだろうと考えたのだ。


 実際に水を生み出しての練習もいいが、魔力だけの練習も必要だろう。


 まぁ異世界物の物語の多くもそういった練習や能力があったので、きっと出来るようになると思うし、やっていて損することはないと思う。


 それに夜の暇つぶしでやるのだから、少しくらい無駄になろうと気にするようなことではないのだから。


 そうして今日の夜も更けていき、やがて朝を迎えるのだった。


 朝になり、また今日もリカルドが朝食を持って来てくれた。


 どうやら、朝は他のみんなとは一緒に食べないらしい。まぁ朝が弱い人や子どもたちもいるから合わせるのが難しいのだろう。


 今日の予定は、もう少ししたら建物の下見が出来るよう準備が終わるので、それを待ってから行くらしい。


 移動手段は馬車で、建物の場所自体は冒険者ギルドから歩いて行ける場所にあるようだが、いくつか回る予定なので馬車での移動が必要になってくるのだとか。


 今日の午前中に終わればいいとリカルドは言っているが、そんなに掛かるものなのだろうか。


 前の世界でも家探しはしたことがないし、どれだけ時間が掛かるのかがわからない。まぁのんびり行って、良さそうな家が見つかるといいなと思う。


 それからしばらくして、準備が出来たみたいだった。俺たちは女性を迎えに行き、そのまま下へと下って行った。


 そしてギルドの裏口の方から出ると、そこには一台の馬車が止まっていた。


 表の入り口は冒険者がちょうど依頼を受けに来る人が多い時間帯なので、裏口からの出発となったようだ。


 俺も人が多いのは得意ではないので裏口から出ることが出来るのは助かった。それに女性もユアのこともあるので、そういった配慮をしてくれたのであろう。


 馬車の近くには一人の女性が立っていた。そして俺たちに気が付くと、こちらの方へと近づいてきた。


「初めまして、本日は建物への案内をさせていただきます。アミュールと申します。よろしくお願いします」


 アミュールと名乗った女性は、二十代前半くらいかで、茶色の綺麗な色のした髪の毛で、すらっとしていて、いかにもお姉さんという感じのしっかりしてそうな人だった。


「よろしく頼む」


 短くリカルドが返事をすると、俺たちもそれに合わせて頭を下げた。


 どうやら馬車の御者はアミュールがやってくれるそうで、俺たちは後ろに乗っているだけでいいそうだ。案内が女性であることもありがたい。


 まぁ馬車と言っても、屋根もなく座れるようにもなっていないので、荷物を運ぶようなものだが、どうやらこういうのは街の中を移動するのには当たり前のようなものらしい。


 もちろん貴族はこんなものには乗っていなく、普通の中が見えないようなものに乗っているのだが、一般的な庶民はこういうのが普通らしい。


 馬車に乗る直前に思い出したのだが、そう言えばユアはこの馬車に乗ることは平気なのだろうか。そう思って聞いたところ、これなら大丈夫という返事が返ってきたため、俺は安心して馬車の方へと歩いて行った。


 荷台には俺、ユア、女性と並び、俺の向かいにリカルドが座った。


 ユアはいつものことだが、女性の方もまだ完全には男性に近づくことが出来ない様子だった。


「すみません」


 申し訳なさそうに言っていたが、リカルドは気にするなと返していた。


「では、出発しますね」


 全員乗ったことを確認したアミュールは手綱を握り、馬車を動かし始めた。


 行く順番など事前に話していたのか、特に話すことなく出発したのには少し不思議に思ったが、リカルドが何も言わないので大丈夫なのだろう。


 それよりも今はこの馬車内での会話を俺がどうにかしないといけないみたいだな。


 少し気まずい空気が流れているような気がしてならない。


 リカルドはあてにならないし、女性はリカルドや馬車の外を気にしてか、落ち着かない様子だし、ユアは俺以外の人がいると大人しくなるからな。


「今日はありがとうございます。しんどくなったら私に気軽に言ってもらって大丈夫ですからね」


 俺が女性に対して話しかけると、驚いた様子で返してきた。


「ありがとうございます。しかしレヴィ様、私などに敬語は必要ありません。もっと楽に話して下さい」


「え? さま?」


「はっ、私としたことが自己紹介がまだでした。申し訳ございません。私の名前はマリーと申します。気軽にマリーとお呼び下さい」


「じゃあ、マリーって呼ばせてもらうけど、私のこともレヴィでいいよ? それに私の方が年下なのだし敬語も必要ないよ」


「いえ、レヴィ様に対してそんな恐れ多いことですので」


 マリーは十代後半くらいで、二十歳にはまだいっていない見た目でこげ茶色の髪をした綺麗な女性だ。マリーに対してもしっかりとしたお姉さんのように思ったのだが、そんな人にこんなことを言われても困ってしまうのだが。


 俺はなんでこうなっているのかわからずリカルドの方を見てみると、リカルドも俺が言いたいことがわかったのか、答えてくれた。


「クランに入った女性たちはみんなこんな感じだぞ? なんでもレヴィに助けてもらったのだから、自分たちの最上はレヴィなんだとか」


「はい、その通りです。私たちは精一杯レヴィ様のために尽くしていきたいと思っています」


「そこまで気にすることないと思うんだけどなー」


 俺は何を言っても無駄なことを悟ると、誰にも聞こえないように小声でつぶやくのだった。


 俺の知らないうちにどうしてこうなっているのだろうか。


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