113.あの日
◆◇◆◇◆◇◆◇
休日、昼前までのんびり寝てから目覚めると次兄が大荷物を抱えていた。
「んじゃあ行ってくるわ」
またかよと嫌味を伝える間もなく次兄は出て行った。またなのである。兄は警備をかいくぐり街を出、そして山に登るのだ。街を許可なく出るだけでもバレれば塀の中なのに、整備がされていない山を登るとは。一体何がそんなにいいのか。聞けば「そこに山があるからさ」というテンプレを返されたが法を破る理由にはならない。
うちの家族は自分勝手が過ぎる。親は再婚したと思ったら蒸発するし、長兄は監獄だし、次兄は今まさに捕まろうとしているのだ。こっちの身にもなって欲しい。
で、家に残された俺たち。
「また2人っきりだなー」
「静かでいいよ」
そう答えたのは弟のミギリ。ソファを占拠し熱心に端末を睨んでいる。大学生なので勉強をしているのだろう。何と真面目なのか。きっと家族を反面教師にしたに違いない。もちろん俺を除く。
自分の考えに頷いてから気になったことを言う。
「あんまり長時間見てたら目に悪いぞ」
「適切な距離、照度、こまめなまばたきを意識すれば問題はないよ」
そうなのか。まあ弟が言うならそうなんだろう。だって賢いもんな。
あれ? そういえば。
「ちょっと待てよ。買い出し当番は兄貴だったよな? 行ったか?」
「さあ」
さてさて、冷蔵庫を見てみればあるのは寝かしているパンのタネがひと固まり。詰め物もおかずの材料も無い。
「買ってから行けよ!」
揺れる冷蔵庫をあとにリビングに戻るとミギリは1ミリも動いていなかった。
「やはり空であった。さて、つまりどちらかが買い物に行かなければならない。この任務を果たすべきなのはどちらだと思う? もちろん兄である俺が行こうと思う」
「どっちでもいいけど。配達頼んだら?」
「配達料もったいないし」
「そう」
兄の威厳は保てなかったようだ。まあいい。
「ちょちょっと行ってくるわ。留守たのんだ!」
適当に着替えて家を出るが返事は無かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
徒歩で食料品店に向かう道すがら、景色を眺める。液晶が宣伝をまき散らし、人々は練り歩く。上を見れば飛んでいく斬新なデザインの車。うーむ。徒歩で十分だな。買う金が無いわけではない。
いや待てよ。またしばらく2人だから食費の配分を……。
と、上から音が聞こえてくる。
見れば輸送車が降ってくるではないか!
「あ、これ知ってる! 転生トラックってやつだ!」
端末を弟は勉強に使うが俺は小説を見るのに使う。最先端機器の有効活用ってやつだ。へへ。
て、待てよ。
「いや死ぬだけだってこれ嫌だあああああうおわあああああああ!?」
◆◇◆◇◆◇◆◇
なんかいらんことも思い出したけど、あれが弟との最後だった。一緒に住んで、話も一番していたのに、今では何を考えてるか分からない。
これからも分からないだろう。だって俺はここに置き去りにされたから。きっともう会えない。
でも俺はここから脱出する!
えーっと、誰か来てくれるよね?
次回投稿は4/3(日)です。




