111.捜索
「そしたらビャ―となってヘリックスが連れ去られたんだよ」
「ビャ―っていうのはどういう意味?」
「走り去るときの擬音! そのぐらい早かったんだって!」
「はぁ」
騒動が収まると衛兵たちが建物の周辺で捜査を始めていた。
取り囲んだはずなのに結局誰も捕まえることは出来ず、犯人たちの手掛かりを探しているのだった。
そして側でローダーが一生懸命衛兵に説明をしているのをエルテは眺めていた。
「それでお前ら、犯人を知ってるって? ならアジトとか知ってるんだろう?」
「え? ……えーっと? 知らないぞ」
「じゃあそっちの新人!」
「名前と異世界人ってことしか知らないわよ」
「はあー」
嫌らしいほど大きなため息をつかれる。情報が無いのはそっちもだろうに。
と、向こうで大声が聞こえる。
ヘリックスの雇い主と思われる人物が衛兵に叫んでいた。
「私の護衛が連れ去られたのだぞ! しっかり調べてもらわないと困る!」
「しかし護衛なのに簡単に拉致されて、役に立たないんじゃないですか? このままクビで良くないですか?」
「む、それもそうだな。よくよく考えれば一度も役に立っていないし。じゃあもういいか。他の奴を雇おう」
「うわぁ……」
ヘリックスが帰ってこれたとしても職は失ったようだ。どうでもいいが。
だが急に連れ去られて心配ではある。
「みなさん、ズタケ様が現れたと聞いたのですが」
「サピ! なんでまた共和国に?」
ローダーが真っ先に気付き騒ぐので見ると荷物を持ったサピがいた。入国してそのままこの街へ来たという感じだ。
「ズタケ様が共和国にいると情報を得て来たんです! でも入れ違いになってしまうなんて……うう」
「またおっさんかぁ……」
あからさまに落ち込んでいるローダーをサピは見向きもしなかった。
どうでもよいのでエルテは話を戻す。
「それでヘリックスがなんで連れ去られたのか、手掛かりはないの?」
「あ、えーと、俺には見当も付かないぞ」
「え? ヘリックスさんが? 連れて行って何の役に立つんですか?」
「そうよねー」
本人がいないのをいいことに皆好き放題を言う。いや、いても言うのだが。
「サピさ、そういうの調べたりするの得意じゃないのか?」
「え? ヘリックスさんの使いどころですか?」
「あ、いや。拉致した組織のことだよ」
調べられるのかとローダーは一瞬疑問に思ったがスルーした。
少し考えてサピは答える。
「あー、そっちですか。そうですね。ズタケ様も関わっていますし、もちろん調べますよ。世間は狭いですから、すぐに分かると思いますよ」
かなり頼りになる返答。サピと一緒に調べればすぐに解決するかもしれない。
「大体の目星とか付いてないの?」
「怪しいと言えば結社の名をよく聞きますね」
「結社? なんだそりゃ」
「結社とだけしか聞いたことありませんが、これまた異世界人の集まりみたいです」
「結社ねぇ」
異世界人の集まりなら辻褄は合う。まさかヘリックスを勧誘する気だろうか。人の見る目が無いのだろうか。
「ローダーは結社って聞いたことある?」
「いや……無いけど家のみんなにも聞いてみる。エルテはどうする」
「こっちは衛兵や騎士団の仲間と街の人聞いてみるわ。夜にローダーの家で情報交換しない?」
「了解ですよ。さっさとズタケ様を探しましょう!」
「いや探すのはヘリックス……まあいいけどよ」
張りきっているがズレているサピにローダーは再度肩を落とした。
次回投稿は年が明けて1/2(日)です。




