やっつめ「それはそれ」
お話は現在に戻ります。
困惑する俺と呆れる親友。
駐輪場で若干の恐怖体験を経たあと、ややフラつきながら自転車で帰路に着いた俺。
頭の中はさっきから混乱状態でぐるぐるしっぱなしだ。
「いがらし」という名前にころころ変わるあの表情、そして何故か逃げる様に去って行った、あの女子高生。
何処となく雰囲気もまことに似ている気がする…。
似てはいるんだけど、あれがまことだなんてそんな筈無いよな?
考えてもまるで答えは出てこない。
ーーーやっぱりここは奴に相談してみるか…。
その翌日の昼休み、俺は弁当を手に隣のクラスへと向かった。
「おーい花村ぁ!」
「ん?どうした健太?とりあえず座りなっての。」
ーーー花村保。
小学校の途中から中高ずっと同じ学校で過ごしてきた親友だ。
子供の頃から体格は良かったが、そこからぐんと身長が伸び、がっちりした体格になっている。
今ではサッカー部での活躍も目覚ましく、TVの取材が来る程だ。
俺は教室の隅にあった椅子を持って来て対面に座ると続けた。
「あのさ、何から話して良いか分からないんだけどさ小学生の頃にまことって居たじゃない?」
「…ああ懐かしいな。」
「確か引っ越して居なくなっちゃったんだけどさ、その後どうなったかとかは…知らないよね?」
神妙な顔つきをする花村。
少し言い難そうにしながら口を開いた。
「いや、それがさ隣の市にあるお爺さんの家に預けられたとかって、その後は俺も知らないんだけどさ。」
…いや十分詳しいじゃないか。
「それで?」
「お父さんの道場には、たまに来ていたみたいだって。」
あれ?何でそこまで知ってんだよ?
「…詳しいなストーカーか?」
「ちげーっての!」
何故か顔を真っ赤にする花村。勿論ストーカーというのは冗談のつもりなのだが、こう変な反応をされると困ってしまう。
「もしかして好きだったとか無いよな?」
「そ、それは…否定も肯定もしない…けどな。」
ーーーなんだと!?
「お、おう…。何ていうかさ、今の世の中じゃ色んな愛の形があって良いと思うよ?うん。でもお前モテそうなのにちょっと勿体ないよな。」
「は?何言ってんだっての?」
「まことってその、男でしょ?」
「女子だぞ?あいつ。」
「そうそう、そうだよな…うんうん女子…えっ?そうなの!?」
俺の脳が突然の“女子”という言葉を理解し切れず聞き流しそうになってしまった。
「あのさぁーお前いつも自分の事を名探偵とか名推理人とか言ってる癖にホント鈍いっての!」
「…ごもっともです。」
ーーーすっかり呆れられている。
「お前は真琴と同じクラスになった事無いから見た事無いかも知れんが体育の時とかもちゃんと女子の服装だったし、それ以前に普通分かるっての!!」
「ごめんなさい分かりませんでした…。」
短く整えられた髪をバリバリ掻くと一つ大きくため息をつく花村。
何かを決めた、そんな表情をしている。
「いい機会だから言っておくけど、俺は普通に女が好きだし、本当は真琴じゃなくてその…お母さん、真凛子先生に憧れてたんだよ。」
ーーーそれはそれでどうなんだろうか?
「俺達が生まれる前、この辺り一帯を荒らし回っていた暴走族がいたってのは聞いた事位あるよな?」
「なんとなくだけど…。」
そう、この辺りには昔、有名な暴走族が居たという。
確か二十名位が爆音のバイクに跨り毎晩の様に走り回っては騒音を撒き散らしていたらしい。
「その暴走族、愚霊越人吠惑斗って言うんだけど大学生三人組で殴り込んで壊滅させたっていうのは知ってるか?」
「えっ知らない…なにそれ怖い?たった三人で壊滅させた?」
「うん。その三人組のリーダーが真凛子先生だったんだよ。」
あのお母さん温厚そうでそんな乱闘する風には見えなかったのに、人は見かけによらないとは言うけどそんな事があったのか。
「そしてさ、サメならサメらしく海でも泳いでなっ!!って暴走族全員、単車ごと海に沈めたんだってさ。痺れるよなぁ…。」
…なんか滅茶苦茶過ぎて流石に嘘臭い。
成り行きでお母さんの話になってしまったけど、そらそろ肝心のまことについて話を振ってみるか…。
応援のほどよろしくお願いいたします。




