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ふたつめ

 通学路を一人、ふらふらと蛇行しながら自転車を漕いでいる俺。

月曜日の朝からこんなでどうすんだ!!

精神的にも肉体的にもやたらと疲れて、ぐったりしているのが判る。

正直、周囲を見る余裕すら無い。


まったく何やってんだか…。


 それもそれもさっきのあの子。

これ程の敗北感を味わわせるとは本当にたいしたものだ。

しかし俺もこのまま終わる気はさらさらない。


さて、どうする?どうする俺?

恐らく同学年ではあろうけどまるで面識は無いのだ。


…そういえば何故知らないんだろう?

同学年なら一度や二度見かけた事があって当然のはず。


そうだ、まずはそのご尊顔を拝ませて貰おう。

己を知り敵を知れば百戦危うからずとかいうやつだ。

決して、かわいいかどうか知りたい訳では無い。

だから今、俺の脳内から「かわいい」という言葉を削除した。

もうかわいいとかそんな事はどうでも良いのである。


ギギギギギギ…ガスッ!!


自転車が道の脇にある車両止に当たり歩道に倒れ込んでしまった。


派手な金属音に混ざりボテッという鈍く惨めな重低音を立てながら横たわる俺。幸いスピードも出ていなかったので音の割にダメージは少なく、身体には痛みがじんわりと伝わってくる。


だがそのお陰でハッとした。あのままでは交通事故を起こしていてもおかしくはない…。

その実、真横を走っていた車がビーッという電子的なクラクションを鳴らしながら通り過ぎて行った。


「くそっ!なんなんだよ!!」


俺はカゴから落ちたバッグを拾うとそのまま地面に叩きつけた。


正直、八つ当たりだと思う。


でも何故か、あの子の事が頭から離れない。

そして叩きつけたバッグの中から、もそもそとお弁当を取り出して無事を確認したのだった。


…ふとバッグの下敷きになっている赤くて可愛らしいボールペンが目に留まり、何となく拾い上げるとそのままポケットに挿して再び学校へと急いだ。


 放課後、俺はさっさとバッグに荷物をかき入れると無言のまはま勢い良く立ち上がった。


椅子が勢い良く滑り背後の机にガツンと激突。

後ろの席の田中くんが驚いてドミノ倒しの様に座っている椅子ごとバタンと背後に倒れ込んだ。


「さて…いくぞ!」


俺は走った。


走って校内の駐輪場に飛び込んだ。


日差しで暖められた屋根がチンッ…チンッと鳴っている。

そこは人気も無く、そしてほんのり機械油と砂埃の臭いがしていた。


今すぐここで、誰にも知られずにあの子の自転車を探す!


そう俺は小学生の頃なぞなぞが得意で“名探偵ケンちゃん”と渾名された程の推理力を持つ男。

まずはあの子の自転車の漕ぎっぷり、あの身体能力の高さならまず運動部に間違い無いだろう。


そして急いで来たから誰も居ない。


つまり人目につかないので自転車は探し放題なのだ。

万が一誰かが来ても自分の自転車の位置を忘れて探しているフリをすれば良し。

あの子も部活で来ないから絶っっっ対にバレない!


…我ながら完璧じゃあないか!


さてあの自転車、特徴的な緑色をしていたよな?ならすぐに…あれ?


…見つからない。


そんな筈は…いや沢山の自転車の中に紛れると緑色は意外と目立たないのか…。


俺は夢中で探した。そして…遂に見つけた!この見覚えのある緑色は、あの子の自転車で間違い無い。

嬉しさの余り思わずサドルを両手で鷲掴みにしたのだが…。


ーーーバァン!!


掴んでいるサドルの上を誰かに叩かれ我に返った。


意表を突かれた俺は身体が硬直し上手く動かない。

こわばった両手をそのままにそっと顔を上げるとそこには…。


「変態!!」


鬼の様な形相をしたあの子が立っていた。

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