4 医療
マリエールが到着するとニ回目の陣痛が始まったところだった。アンドロイドに聞くとまだ当分出産には至らないとの事だった。
4 医療
マリエールが現場に着くと2度目の陣痛が始まっているところだった。お恥ずかしながら直接出産の指揮を執った経験がない。結婚もしてないし勿論出産もしていないし出産の経験がない者が執っていいのかという疑問はあるが、豊富な知識に裏打ちされたアンドロイドと協力して行うなら問題ない。妊婦は五月蝿いがアンドロイドは冷静に呼吸法の指導をしている。妊娠も出産もする事のないアンドロイドが妊婦の指導をしている風景は有り得ないもののような気がするが医療用ロボットの構想はあったのだ。万更有り得ないものでもないのだろう。マリエールは状況を聞く。
「12分前から2度目の陣痛が始まりました。僅かに胎児が産道によっていますが生まれる兆候には至っていません。妊婦の体温36.8度、血圧136ー78、脈拍76、です。まだまだかかると予想されます。」
全く出産に至る気配無しという事か。
「帝王切開を用いるべきかどうかの判断はどうなる。」
アンドロイドは、機械的に、
「帝王切開を用いるかどうかの判断は、1、帝王切開を用いなければ出産できない場合、2、帝王切開を用いなければ母子のどちらかが死ぬ可能性が高い場合、3、帝王切開を用いる事が母子にとっていいと判断される場合ですが今のところどの判断にも至っていません。そういう状況になればお知らせしますがそうなるかどうかも判りません。ただ産道が硬いので可能性はあると思いますがそうしない方策も必要でしょう。」
アンドロイドにそうしない方策というものを聞いた。
「先ず初歩的な事として、妊婦が出産に協力する事です。例えば呼吸法です。ヒィヒィフゥという感じです。胎児を押し出すイメージですね。続いてお腹を上から下へ押すことです。さらに当時に産道を開いて引っ張ってやるようにサポートしてやる事もできるでしょう。だいたい以上が通常のやり方です。通常でない方法もありますがこれは帝王切開ができない場合の話しですので、ここまでやってどうしても出産できないなら帝王切開です。」
なるほどと思った。
妊婦を観察した。呼吸は荒いが意識はしっかりしている。マリエールを不快そうに眺めている。こんな子どもが何の用だとばかりだ。本当は貴方よりも10歳以上年上なのよと叫びたくなるのを押さえて、マリエールは妊婦に、
「まだまだ長期戦になりますから、食事は取れませんが喉が乾いたら仰って下さい。落ち着いている時なら水は飲めますから。」
妊婦はマリエールの大人びた口調に驚いたようだ。ただ、「はい」とだけ答えた。
それから何度か陣痛を繰り返して破水した。急に周りの緊張度は上がった。アンドロイドの一体が腹をを押し始めた。第ニ段階だ。もう一人のアンドロイドが呼吸法を即す。妊婦は時々悲鳴を上げる。三体目のアンドロイドが、
「山場です。」
アンドロイドが産道に手を入れ胎児を誘い出す。胎児が頭を出して。
「オギャ」
と泣いた。マリエールはへその緒を切った。
「おめでとうございます。」
とマリエールは言った。
「ありがとうございます。」
と産婦は答えた。
破水があり一気に緊張が走った。呼吸法、お腹を押す方法、産道から胎児を迎えにいく方法を併用して出産は成功した。




