大きな手掛かりを求めて
研究施設に降りると、皆はパソコンを弄って色々と調べていた。私はフォルティさんが調べているものを覗いている。私が調べた時に分からなかった事が分かるかもしれないし。
「基本的にリラさんが調べた内容が書かれているかな。何か違いとかあるかな?」
「う、ううん……特に何もなさそう……」
「だよね。シェリアさん、そっちはどうですか?」
「同じね。色々と調べてみているけど、特に面白い情報はなさそうよ。怪物に関しては、あまり研究が進んでいないみたいね。そもそも詳しく調べようにも近づいたら殺されるというものだから、調べづらいようね」
「それでも直に情報を見られるのは大きいね。スクショだと分かりにくい部分も出来ちゃうから。見ただけで怖気を誘うような見た目だけど、普通に他のゲームに出てきたりするボスモンスターにも見えるね」
確かに普通のボスモンスターにも見えるけど、根源的な恐怖を誘うこの感じは、他のゲームにはない要素だ。それだけ特別なモンスターとも言える。
「こんな怪物がフィールドを歩いていたら、そもそもゲームどころじゃないわよね。仮に戦うとしても、もっと情報が欲しいけれど……」
「うん。これ以上は何も得られなさそうだね。手がかりと言えば、ここの研究員が残した日記みたいなものだけ。これも結局月面に避難したって事と怪物が宇宙から来たって事が分かるくらい。明確な弱点が分かると良いけど……」
「そうですね……やっぱり調べるべきは、こういうパソコンじゃなくて、日記を調べるべきですね。そういえば、リラさん、前に感じた気配は?」
そう言われて、私は周囲を見回す。あの時感じた気配はどこにもない。やっぱり一人でいる時にしか感じないようなものなのかもしれない。
「な、ないよ……」
「集団でいれば、互いに正気を保てるみたいね。まぁ、それもいつまでかは分からないけれど。その時が来る前に、あの一番下の階層に行くわよ。ちゃんと調べられていないけれど、全く調べられていないところの方が新しい情報がある可能性は高いわ」
「わ、分かりました……」
「ですね」
「それじゃあ、私が先導するから付いてきてね。リラちゃんは速度上昇の演奏をお願いね」
「は、はい……!」
雷冥の速度上昇(大)の演奏をしながら皆に付いていく。アルシャさんが地図を見ながら進んでくれるので、特に迷う事はない。ただし、崩落場所などの迂回しないといけないルートはあるので、道に迷う事はなくても、ルート変更を余儀なくさせられる事はある。こればかりはどうしようもない事なので仕方ない。
そうして着いた場所は、通路の行き止まりだった。周囲には特に何かがあるような感じはしない。
「この辺りがその入口になるはずだけど……扉っぽいところはないね。やっぱりリラちゃんの歌かな」
「あ、は、はい……」
私は『昼つ方シンフォニー』を演奏し歌う。すると、周囲の壁に光が走っていく。壁の光は私の歌に共鳴しているような感じだ。皆が周囲を警戒してくれているので、私は歌を続ける。
光は私達の正面にある壁へと集まっていく。壁の中央から上下に光が走り、壁が左右に割れていく。
「ちゃんと歌で開くようになっているのね」
「まぁ、ここまでの部屋もそうだし。問題はこの先に何があるか。真っ暗で見えやしないね」
「リラさんの光で一応照らせてはいるみたいですけど、結構先までありますよ?」
「行くしかないじゃない。リラは、そのまま歌い続けなさい。最大限の光量で行くわよ」
シェリアさんの指示に頷く。私が歌い続けている間は、【神聖歌唱】と【神聖奏】の二つが発動して、光が周囲を照らすのでこの状態が一番周囲を照らせる。意思疎通が首での相鎚しか出来ないのが、かなりの難点だけど、そこら辺は読み取りが上手い人達が多いから問題がない。
本当にこの点は恵まれていると思う。
「本当に通路ね。扉も何もないわ」
「地図ではどうなってるんですか?」
「ひたすら真っ直ぐ行って、大きな部屋に繋がる感じだね。途中に小部屋があるって事はないはず」
周囲を見回しても、壁壁壁というだけで、特に何かがあるわけじゃない。上にある照明は大体割れてしまっているので、本当に暗い。所々は照明が生きているけど、それも光量が乏しいので、私から発せられている光の方がよく見える。
「大分壊れているわね。でも、瓦礫がある程度掃除されている感じね?」
「確かにそうですね。周囲の亀裂とかに比べて床に落ちてる瓦礫が少ない気がします」
言われてみれば、通路は歩きやすいように瓦礫が撤去されている。ここまでの通路とは全く違う感じだ。ここまでの通路の瓦礫はずっとそのままだった。頭の中で比べてみると、全然違う事が分かる。
「態々瓦礫を撤去するような人が来たって事だよね?」
「まぁ、そうでしょうね。でも、ここに来る人って誰なのかしら?」
「アルタさんでしょうか?」
「歌姫? まぁ……確かにあり得ない話じゃないわね。態々『昼つ方シンフォニー』を含めた四つの曲を渡してくるくらいだもの。それにNPCというだけで割と怪しいわ」
アルタさんがここに来ているという感じで話が進んでいる。ただ、怪しい人がアルタさんくらいしかいないというのは私も同感だ。司書さんもいるけど、司書さんは図書館にいる。でも、アルタさんは、色々な街を巡ってライブをしているので、こういうところにも来ているという可能性は十分にあり得た。
「あっ、そろそろ部屋に出るよ」
正面から差し込む光が大きくなってきた。部屋の灯りは生きているみたいなので、私も喋られるようになる。まぁ、喋るとは限らないのだけど。
部屋に入ると体育館二つ分くらいの大きな部屋に着いた。こんなものを地下に作ったのかという感心が胸を過ぎるのと同時に耳を劈くサイレンがなる。
「うわっ!? 何!?」
「シェリアさん! 前!」
フォルティさんの声に私も正面に視線を戻すと、中央の床が開いて何かが上がって来た。
それは私達よりも遙かに巨大なロボット。十メートル以上はあるかもしれないような戦車型ロボットが赤いサイレンを光らせている。
どう考えても施設の防衛機構としか思えない。あれと戦わないといけないのかぁ……えぇ……




