何人欲しい?
「そうだったのか……。それはすまなかった」
俺はきゅっと眉根を寄せる。
知らなかったとは言え、幼馴染に大きな負担と犠牲を強いてしまっていたことに胸が締め付けられる。
ふっと、昔の麗奈の姿が脳裏を過ぎる。
確かに、俺が病に罹患する前の麗奈は、今とは違い、女の子らしい服装を好み、女の子らしい女の子だった。
きっと、そんな子が傍にい続けたら、きっと俺は爆散し続けていただろう。
当時、俺は自分のことで精いっぱいだった。
だからこそ、麗奈の変化とその意味に気づくことができていなかったんだ。
今気づいても遅いだろう。何をやっていたんだ俺は……。
しかし、そんな俺の後悔を軽やかな声で受け流す麗奈。
「気にしないで。私が好きでやってきたことだし。でもね、もうそんな自己犠牲マシマシな人生は止めにすることにしたの。だって、これ以上自分を犠牲にしても、得なさそうだし」
う、うん、と喉を鳴らす麗奈。
「それじゃ、改めて聞くね。美里ちゃんのことどう思ってるの?」
「いや、どうって、だから、クラスメイトというかなんというか」
「じゃあ、なんで肌着が爆散し続けているの? 私が気づかないとでも思った? ずっと君を傍で見てきた私が、見逃すとでも思った??」
俺は麗奈の鋭い眼光に思わず息を飲む。
「でもね、それはいいの。蓮が誰の事をどう思おうが、想おうが、それによって爆散しようが、それは君の自由だもん。私にそれを止める権利なんてない」
でもね、と彼女は続ける。
「権利はないけど、許せないの。ずっと、私の傍にいて、ずっと私が想ってきた蓮が誰かに取られるのが絶対に嫌なの。だから、決めたの。蓮の服を人前で爆散させて、社会的孤立に追い込んで、私だけが君に優しい世界にするって。怖がらなくても大丈夫だよ。君の傍に誰もいなくなっても寂しさを感じさせないくらい、君のことを私が愛してあげる。愛して愛して愛して、服がなくても寒くないくらいに愛してあげる。だから、安心して爆散してよ。私だけが君の傍にいればそれでいいんだからさ」
麗奈の矢継ぎ早の言葉と想いとマジ顔に、俺はただただ息を飲むしかなかった。
「これからも、ううん、これからは、よろしくね。さ、学校に行こう?」
「いや、行こうって……俺、全裸……」
「言ったでしょ? 君には私さえいればいいの。私の愛さえあればいいの。だからさ、このまま学校に行って社会的に孤立しよ? これまで君が築き上げてきたモノなんて、壊しちゃえばいいんだよ。無理して完全完璧を取り繕うよりも、ありのままで生きていったほうがきっと幸せだよ」
「い、いや、ちょっと待て! それは駄目だって!」
俺は服を着るべく一旦家に入ろうとするが、その俺の手を麗奈はがしりと掴んで離さない。その目には一切の冗談がない。
「ほら、一緒に行こう?」
「ぐっ……! すまん、麗奈!」
俺は麗奈に掴まれた腕を思い切り振り払うと、素早くドアを開け、家の中に飛び込んだ。
なんとか、家の中に入ることができた俺は、大きく深呼吸をする。
丸見えの胸部がこれでもかと上下する。
とりあえず、服を着なければと二階の自室へと向かう。
「んぐう!」
ドアを開けるとなぜか麗奈がいた。
変な声でた。
「もう、不用心だぞ。君がいつも通り沿いの窓の鍵を開けっぱなしにしてるのは知ってるんだから」
二階の窓から入り込む身体能力ぅ。
もはや、思考が追い付かない俺は、麗奈の一挙手一投足に驚くばかり。
「さ、行こう?」
麗奈は再び俺の手を取った。
「いや、でも……」
「私といるの、いや?」
「え?」
見れば、俺の手を握る麗奈は震えていた。
瞳にも涙が溜まってきている。
―――蓮のことが好き
そう言った時の彼女の声と熱と表情は真剣だった。
病気のことは置いていて、そこは俺も真摯に受け止めなければいけないとこだ。
「そういうわけじゃ……ない。もちろん、俺だって麗奈といるのは楽しいし、その、好きだと言ってくれたことは嬉しい」
それは嘘じゃない。
ただ、状況が状況なだけで。
いや、ほんとに状況。
まだ全裸だよ、俺。
「ふふ。よっし、じゃあいこっか!」
「さっきまでのしんみりとした雰囲気は⁈」
麗奈は俺の手を引き、窓から外へと飛び出していく。
いやだから、身体能力ぅ!
俺は瞬時に肌着を着込むことができるので、とにかくありったけの肌着を着込んだ。
そして、そのまま学校への道を麗奈と歩く。
麗奈はこれでもかと俺に密着をしてくる。
これまで認識できていなかった大きなあれが、俺の腕にぎゅむりと押し当てられる。
ずっと、脳がフル稼働している。
ずっと、麗奈から溢れてくるエロスと俺に入り込んでくるエロスをなんとかするために、フル稼働している。
それでも、肌着が破れていく。
一枚。
二枚。
三枚と。
着込みに着込んだ肌着を破っていく。
「ねえ、蓮?」
「んぎゃい!」
耳元での麗奈の声と吐息。
そのあまりの熱とエロスに俺の肌着は一気に破けていく。
くそぅ。不意打ちは防げない。
「ふふっ。今ので肌着、十枚ってところかな?」
麗奈は淫靡な笑みを浮かべながら、こちらの爆散枚数を推定する。
あっている。
すごい。
凄いけど怖いぃ。
「嬉しいな。これまで蓮は私で爆散することは絶対になかったから。まあ、私がそういう風に仕向けてたんだけど」
「麗奈……」
「でも、もう遠慮しないって決めたらこんなにも嬉しいんだね。君の服を破くことが。一枚破くごとに、二人だけの未来が待っているって思うとゾクゾクする。ねえ、蓮は家事得意だよね? 私がしっかりと稼いでくるから安心して家にいてね。あと、子どもは何人欲しい? 私は君との子どもなら何人だって大丈夫だよ?」
あばばばばばばばっばば!
麗奈の気持ちは本当に嬉しいけど、未来の収束の仕方が怖い!
未来を語る麗奈の目には、トロンとした光が揺蕩っていた。




