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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第5章「協力者編」
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第98話「レイの罠と不穏な影」

 エリスと共に学園を出てから大体2時間が経過した。

 オレとエリスは今、街の西側にある魔道具屋に来ている。最初に行った学園の近くの魔道具屋、次に行った街の東側にある魔道具屋に続き、この場所で3軒目だ。

 エリスは結局ここまで何も買ってはいない。2軒目に行った東側の魔道具屋でも色々と見ていたが、全部まわってから決めたいと言ってそのまま出てしまった。


「ねぇリダン君、これは?」


「これは光の第4位魔法『ライトシールド』が発動できる魔道具だな」


「あたしでも使えそうかな?」


「練習すれば発動はできるだろうが、これは細かい制御が難しい。あまり推奨はできんな」


「へぇーそっか。じゃあこれは止めとこっかなぁ」


 エリスは気になった魔道具を見つけてはオレにその詳細を聞いてくる。先ほどからこんな風な問答が続いており、既に20分くらいは経った。


「こっちはどういう魔道具?」


「それは警笛を鳴らすための魔道具だな。発動すると周囲に大音量を発する」


「あー、なんか見たことあるかも。これを使えば周りの人に自分の危険を気付いてもらえるってこと?」


「そういうことだ。これなら貴様でも簡単に使えると思うぞ」


「でもこれって直接的に身を守れるものじゃないよね?あくまでも周りの人頼りっていうか」


「まあそうだな。周囲に誰もいなければ意味の無い魔道具だ」


「じゃあこれは無しかなぁ」


 エリスの魔道具選びの様子は真剣そのものだ。

 その様子を見るに、少なくとも先ほど話していた危機感がどうこうという話は紛れもない本心だったように思える。

 いつも内心と言動が一致していないエリスだが、どうやらその全てが嘘というわけではないらしい。オレは少しエリスを疑いすぎていたのかもしれない。


「あ、これはさっきのお店でも見たよね?確か、相手の視界を奪う魔道具だっけ」


「ああ。光の第2位魔法『ライトバースト』を発動する魔道具だな。閃光を破裂されて周囲を光で包むことができる。相手を怯ませることが出来るが、先ほども言ったように闇雲に使えば自分の視界も奪ってしまうから使用には注意が必要だ」


 この魔道具や先ほどの『ライトシールド』が発動できる魔道具のように、光属性の魔法は自身の身を守ることに長けたものが多いため、護身用の魔道具として良く使われているらしい。


 エリスはその後も色々と悩んでいたようだが、結局は何も買わずにこの魔道具屋も後にした。


「気に入ったものはなかったのか?」


「うーん...。結構良さそうなのはいくつかあったんだけど、これだってピンとくるのはなかったんだよねー」


「そうか」


「なんていうか、これを持ってれば絶対安心!っていうのが欲しいんだけど、流石にそれは高望みしすぎなのかなぁ」


 市販されている護身用の魔道具は精々気休め程度の機能しか持っていないため、それだけに身の安全を委ねるのが少々心許ないのというのは確かだろう。

 そもそも、それを持っているだけで絶対の安全が保障されるような魔道具があるのならば、ほとんどの人間がそれを持っているだろうし、大きな事件なんてそうそう起こらない世の中になっているはずだ。

 そうなっていないという事は、現状存在している魔道具の性能が足りていないという事に他ならない。


「まあでも折角リダン君に付き合って貰ったんだし、何かは買って帰ろうかなー。最初のお店にまあまあなのはあったし」


 望んでいたレベルの物は見つからなかったため、エリスはある程度で妥協するつもりのようだ。


「ちょっといいか」


 そんながっくりしている様子のエリスの前に、オレは一つの魔道具を見せる。


「何これ?ポータブル?」


「見た目はポータブルと似ているが、中身は違う。これはオレが作った魔道具だ」


「リダン君が?」


「ああ。こいつは闇属性第10位魔法『ゲート』を発動できる魔道具だ」


「ゲートって、空間を繋げて行き来できるっていう魔法だっけ?」


「そうだ。ちなみに発生するゲートは、こいつを発動した場所とオレがいる場所を繋げるように設定してある」


 オレはそう言った後、実際に魔道具にマナを流して見せる。するとオレの手にある魔道具が光りだし、その数秒後、オレの傍に小さなゲートが二つ出現した。この二つのゲートは繋がっているため、このゲートの片方を通ればもう片方から出るようになっている。


「へぇーすごい!そんなのが作れちゃうなんて流石はリダン君だね!」


 エリスは興味深そうにオレの手にある魔道具を眺めている。


「けど、これがどうかしたの?」


「これを貴様にやる」


「え...?」


 オレの発言が意外だったのか、エリスはあからさまに困惑した表情を浮かべる。


「これっていつでもリダン君のいる場所にゲートが開ける魔道具なんでしょ?あたしなんかに渡していいの?」


「そう言っている。それがあれば、何があったとしてもゲートを開いてオレの場所まで逃げられるだろう」


「...」


 あげると言っているのに、エリスは中々オレの手から魔道具を受け取ろうとしない。まあ、今までずっと素っ気なかったリダンがいきなりこんなプレゼントを渡して来たら警戒するのは当然だろう。

 だが、オレの計算ではエリスはこれを必ず受け取ると踏んでいる。状況が状況だけにエリスは強く警戒しているようだが、この魔道具自体はエリスが欲していた絶対の安全を保障するといっていいものだからな。

 それに、ここでリダンからのプレゼントを受け取らないというのは普段のエリスの態度に反することになる。常に仮面をかぶり続けているエリスがここでその選択はしないだろう。


「じゃあ、ホントに貰っちゃうよ?」


 エリスは恐る恐るオレの手から魔道具を受け取る。


「一応言っておくが、緊急時以外は使うなよ」


「分かってるって。リダン君の事を裏切るようなことはしないよ」


「ならばいい」


「えへへ...リダン君からこんなプレゼントを貰えるなんて思わなかったなぁ。ありがとね、大切にするよ」


 先ほどまでは少し警戒心を露わにしていたエリスだったが、いつの間にかいつもの喜ぶ演技をする姿に戻っている。


(おいレイ)


 喜ぶエリスの様子を見ていると、不意にリダンから声をかけられた。雰囲気からして、オレに何か文句でも言いたげな感じだ。

 イヴの一件の後から、オレに所有権があるときにリダンがオレの行動に対して何か言ってくることはほとんどなくなっていたのだが、何かリダンの気に障ることをしてしまったのだろうか。

 まあイヴの一件ではリダンに対して一定の不信感を抱かせてしまっていたし、もしかしたら募らせていたそれが今爆発したのだろうか。もしそうなのだとしたら、返答は少し慎重になったほうがいいかもしれない。


(どうかしたのか?リダン)


(先ほどゲートを開いたのは貴様自身か?それともその魔道具の力か?)


(オレ自身だ)


(やはりそうか。ならばいい)


(久々に声をかけてきたと思ったら、そんなことが聞きたかったのか?)


(魔道具自体にゲートを開く力があるのならば言いたいことはあったが、そうでないのなら問題はない)


 オレはそこまで聞いて、リダンが声をかけてきた理由を察する。


(エリスに面倒な物を渡したんじゃないかと思って確認してきたのか?)


(そうだ。まあ分かっているならばいい)


(安心しろって。前から言ってるだろ?リダンの不利益になるようなことはしないさ)


 何事かと思ったが、どうやらエリスにゲートの魔道具を渡したせいで、面倒事に巻き込まれることを懸念して声をかけてきたらしい。

 それにしても、さっきのゲートの仕組みを見抜くとは流石リダンだな。

 リダンに言った通り、さっきのゲートはあの瞬間にオレの手によって構築したものだ。ゲートを構築する機能など、エリスに渡した魔道具には本当は搭載されていない。

 あの魔道具は先日ショッピングモールで買った道具で作成した、ポータブルを改造した魔道具だ。ポータブルのように相互に連絡を取れるような機能は無いが、代わりに位置を特定する機能と盗聴する機能を搭載してある。

 これでエリスがあの魔道具を持ち歩いている時は、いつどこで誰と会話したのかを知ることができる。もしエリスが裏切り者なのであれば、いずれボロを出してくれるだろう。


「そろそろ帰ろっか」


 何も知らないエリスが笑顔でそう言う。


「ああ」


 オレとエリスは並んで学園の方へと歩き出した。


「っ!」


 その直後、突如として複数の方向から強烈な痛みが刺さってきた。

 オレは反射的に周囲を見回すが、周囲には街を歩く人間が数人いるくらいで特に変わった様子はない。


「どうかしたの?リダン君」


 オレの様子を不審に思ったのか、エリスが顔を覗き込んでくる。


「いや、なんでもない」


「そう?ならいいけど」


 オレはエリス不審に思われないよう、視線を前へと戻す。

 だが、まだ刺さってくる痛みは終わっていない。複数の人間達がリダンに対して強い負の感情をぶつけてきている。一つ一つがエリスに勝るとも劣らない強烈な感情だ。


(リダン。誰かが隠れてこっちを見てるってことで間違いないよな?)


(そのようだな)


(心当たりはあるか?過去に似たような感情をぶつけてきた奴がいたとか)


(さあな。俺を嫌う奴など掃いて捨てるほどいる)


(そうか)


 リダンにはこんな感情をぶつけてくる人間に心当たりはないらしい。


(フィフスって奴らの可能性は無いか?ミールが言ってただろ)


(十分にあるだろうな。だが、断定はできん)


 リダンの言う通り、相手がフィフスとかいう集団なんだとしても今はそれを確かめる術はない。

 刺さってくる感情から相手の大体の位置は分かるが、今は相手をしない方が賢明だろうな。こんな場所で暴れたとあっては、これまでオレが少しずつ塗り替えてきたリダンへの印象が地に堕ちてしまう。

 オレは仕方なく、刺さってくる感情を無視して学園へと向かう。

 この感情は、それから学園に戻るまでずっと刺さり続けていた。


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