エンドオブチー牛
比呂保保の息子 比呂くんは
数百億年に渡ってハヤットのペットとして宇宙の併合、救済活動を手伝わされてきた。家畜のように未来を見せられ必要な技術の知識を叩き込まれ見た未来を正確に解釈し、新しい提案を無限にさせられてきた。
この宇宙で最高最新レベルの知識を常に詰め込まれて、見た未来を超速で正確に見るためには脳のスペックを上げる必要もあった。しっかり重労働に耐えられるように英才スポーツ教育も施されて全宇宙1000種競技 宇宙オリンピックで金メダルを取るくらいあらゆる宇宙中の生物の中で優れた肉体と脳を搭載した未来を見ることのできる最強のチー牛に育っていた。
ここまで無敵で自由っぷりな比呂君でもハヤットの空気を操る技術で固められた軍隊 組織 数の力には敵わず、
人とウェーイすることが苦手なチー牛はいくら頑張っても個としての価値を上げることはできても人を巻き込む力にはなかなか勝つことができなかった。こうしてハヤットにいいように数百億年ほど使われ、宇宙の救済のために働かされてきた。
50年前、ブラックホールの特異点に比呂君が指揮を取って開発した宇宙艇で到達することができ、そこで父親である比呂保保と再会した。
比呂君はここではもう必要な仕事から解放されて次の宇宙への変換点が終わるまでの間、ハヤットから休暇をもらい比呂保保の家にホームステイすることになった。
そこでどんな日常を過ごしてきたのか、どんな偉業を成し遂げてきたのか、など話しながら後半はひたすらお笑い番組などを見てだらだら二十年ほど過ごしてきた。
こうして親子の絆を新たに、辿々しいながらに結び直して自分たちが親子である事を確認し合いながら穏やかに宇宙の転換期まで過ごした。比呂君は物心ついてから初めて会った父親に戸惑いつつも、愛というものを初めて認識し緩やかに打ち解けていった。
一方比呂保保の方は、全宇宙で最も優れた頭脳と肉体を持つ息子が喋ってる内容があまりにも難しくて何を言っているのか半分くらいしか理解できなかった。 比呂保保はこの特異点で膨大な時間を過ごしてきたものの、地球から脱出してきた冴えないチー牛達の遺伝子を持つ冴えない連中の小さな村で何万年と暮らしてきたから、全宇宙の中心の大都会で全ての意思決定の場に数百億年ほど参加してきた一流アスリートでもある息子とは知能が5次元分くらいは差があった。
アリの巣を攻撃してもアリはその攻撃をする人間を認識できないように、知能の次元に差がありすぎると存在を認識することができない。
時々比呂くんの喋る内容は比呂保保にはスライムがぐにゃぐにゃになって次元を歪めてるんじゃないかというような感覚になることがよくあった。最強最高の環境で一流の教育を受け続け適切な負荷を与えられ続けて数百億年の時間を費やしていた比呂君は、次元をいくつか変更することができるような進化を遂げていた。ハヤットたち他 宇宙の都の住人は大体ある程度そう言った進化を遂げていて、それができない種は学歴が低いという感じで今時の宇宙ではいい仕事に就けない感じになっていた。
比呂保保やチー牛の桃源郷の住人はそこまで長く生きていないので全員そんな次元変換など認識できないし存在すら知らなかった。
比呂保保「なぁヒロ君 僕と話す時はその次元変換して会話するのやめてくれないかな、、? ゲップしてるような感じで下品だよ、、せめて食事中くらいはさ」
比呂君「あーごめんよパパ 最新の宇宙理論の説明って通常次元で使う言語だと概念の説明が不可能でさ、次元を数次元上げた状態じゃないと発音も認識もできない概念なんだよね」
比呂保保「それはもう聞いたし、宇宙船で使われてる技術とか聞いてる限り察しはするけど、僕にはそもそもそれ聞こえないし認識できないんだからさ」
比呂君「パパには多分できるはずだけど。 開いてないだけで 僕が教えればすぐ開けるよ?」
比呂保保「勘弁してくれ そんな下品なゲップで吐き出すようなラップを喋るような音 恥ずかしくてできるか!そこまでして頭良くなったり進化なんかする気ないよ 僕は
大体、進化したっていいけどもう少しマシな音で喋るようにデザインできなかったのか?お前らの時代じゃ進化は自分達がデザインした進化をしていくって話じゃないか 選んでその状態を作ったなんて正気とは思えないね」
比呂君「そりゃパパ 数百億年も経ったらファッションも流行り廃り出るしさ パパの初期の時代だって、オスがスカート履いたりデブがイケてる時代とか、おかめっつらが美人だった時代とか色々あっただろ?そんなの全宇宙の種族が集まる最先端の宇宙セントラルで人間だけの価値観や美意識で流行り廃りが決まるもんでもないさ 結果的にラップとゲロっぽい感じがイケてるってなってそこがベースに次元変換され始めたんだよな 歴史をしっかり辿ると納得できると思うよ」
比呂保保「フーン まぁいいけど とにかくそんな食事中にゲロのモノマネやラップなんてされたらたまったもんじゃないね しかもさらにその上の次元で会話するとスライムみたいなブヨブヨしたものが空間を歪めるじゃあないか あれなんか酔うんだよ こっちがゲロ吐きそうになる」
比呂君「これも慣れさ 便利なんだよ 情報を圧縮して概念を一発で伝えられるから これ僕のデザインの進化で100億年前くらいに賞をとってスタンダードになったんだぜ?」
比呂保保 「そんな賞取って嬉しいのかね 高次元生命体にまで進化してもまだ競争や嫉妬 比較なんかしてるなんて僕の感覚では狂気の沙汰さ」
比呂君「こんなのスポーツみたいなもんだよ 競争が嫌な人は地方宇宙でゆっくり暮らしてたさ セントラルはそれが好きな人が楽しみながら発展させてきただけだよ バスケ好きな人がバスケを一生懸命やるのと同じじゃん やりたくなければやらない選択をすればいいだけだよ」
比呂保保「僕はスポーツが嫌いなんだよ 運動苦手だし。スポーツで例えるな お前本当に僕の息子か??」
比呂君「それは保証するよw 僕の開発した遺伝子チェックキットは数万世代先まで正確に遺伝子情報から取り出せるからね。どんな場所でどんな思想でどんな生活をしてきたか、微細な書き込まれた情報から映し出せるんだよ。 そしたらしっかり僕の出身地 親 その先祖までしっかり出てきた。 ちゃんと父さんの細かい人生まで僕は知っていたよ、苦労したね。 でも諦めずに人生の壁を超えて過酷な原始時代を生き抜いてきた父さんを俺は尊敬してるんだよ。」
比呂保保「フン あのまま平穏な日々を送ってくたばりたかったものだ こんな人生になるなんて思いもよらなかった
お前はこれからどうするつもりなんだ?」
比呂君「しばらくは休暇を楽しむよ 僕はハヤットにずっとコキ使われてきたから休暇をもらえたのは数百億年ぶりなんだ 疲れることのない体で常に最大に進化した脳をフル活用して、次元のコントロールで脳を休ませながら活動させる技術も開発してるから眠らずに働き続けることができるようになってるけど、それでも眠りたいもんだし。この宇宙存続プロジェクトのために休みなしで働き続けてきたけど結局このプロジェクトは延命措置はできたけど失敗だよ この宇宙はもう滅びる 救う手立ては僕でも作り出せなかった 僕ができないなら他の誰がやっても無理さ」
比呂保保「それでようやく休む許可が出たってわけか お前はハヤットとうまくやってきたんだな」
比呂君「うまくやってきたわけないだろ あいつは俺たちの星を滅ぼしていいように俺を使ってるだけさ 奴隷のようにこき使われた結果として成長して、ハヤットの宇宙帝国と併合統制に貢献したから多少今でこそ待遇は良くなったけど、昔は家畜並みの扱いを受けてたんだ」
比呂保保「そうか あいつは俺によくわからない感情を向けてるからな 俺の息子であるお前は何か特別に妙な扱いを受けたのかもな」
比呂君「ねぇパパ ハヤットを二人で倒さないか?」
比呂保保「そんなことできるならとっくにやってるよ 何度殺そうとしたかわからないくらいだね 僕の人生はあいつに常に付け狙われてありとあらゆる妨害を受け続けたんだ 原始時代の洞窟でどれだけ酷い目にあったか やっとあの過酷な原始時代で洞窟を追いやられるなんて死を意味したんだぞ 泣きながら追放されて、でもその先で自分の集落を作ってもあいつのせいでそれも全て崩壊したんだ 仲間達も死んだよ どこまで行っても回り込んでじゃまをされた
その後で国も滅ぼされて、宇宙の果てまで逃げてきたのにあいつまた僕たちが作った桃源郷を無茶苦茶にしやがって 悪魔とはあいつのことだ」
比呂君「僕も遺伝子情報からその様子は知ってるよ 歴史も知ってるし パパがお笑い芸人をやってた頃のことも知ってる 僕も酷い扱いを受けた あいつは確かに宇宙併合後に宇宙をまとめ上げて宇宙を平和に導いたよ でもだからって僕たちチー牛 チギュリアンたちが受けた扱いが良かったわけじゃない もうあいつが作り上げた宇宙帝国も宇宙ごと滅びる 軍隊ももう宇宙でチリジリになって、今はあいつの側近やパリピ仲間だけで小型船に乗る分しか仲間はいない 次の宇宙になった時に、新しい世界でまであいつの思い通りにさせるつもりはないよ」
比呂保保「あいつを倒せるのか?」
比呂君「僕が今まであいつに手を出せなかったのはパリピが常に周りにいて毎日パーティを開いてたからだ あいつはこの数百億年一人で居るってことが一回もなかったし1日の欠かさずパーティを開いて毎日のように飲み会をしていたよ。常軌を逸したやつだよ 理解できない だがそんな感じでノリで指示してるうちにみんなやる気になって全てがうまく運んでいった。あんなことができるやつ すぐに人間を思い通りに操るやつを見たことがない。誰よりも近くであいつを見続けてきたがあいつを撃ち倒す隙なんてどこにもなかったよ。でも宇宙転換が起きる時は別だ もう宇宙崩壊も近づいて宇宙帝国も半壊状態 できることはやり尽くしたが、ここにきてそもそもあいつが操れる知性を持った生物の数自体がもうこの宇宙に限られた数になった。実際のところもうここにいる連中以外は宇宙の崩壊に巻き込まれてほとんど絶滅してる。 ここが最後の場所だ。 あいつは仲良しや宇宙転換をやり過ごすのに必要な人材だけをなんとか船に詰め込んで、ここに辿り着いた。 概ねの作業は終わってここも支配下に置いたから安心してるようだ。俺にここにきて休暇を許可したのは、俺だけが最後に何をするかわからないから作業に参加させなかったのさ。
俺はハヤットに捕まって家畜にされた時点であいつ自体の未来は見えないようにされてるし命令には逆らえないようにされてる。そこから数百億年 俺も成長したしあいつより遥かに優れた知能を持ってる、ちょっとづつその服従状態を解除するようにしてきた。完全に解放するのは無理だけど、こんな会話をこっそりしてもバレずに思考することができるまでになったんだ。そしてパパ 父さんが協力してくれれば、おそらくあいつを倒せる。 宇宙が転換するそのタイミングでね。
比呂保保「今更もう命に執着もないが。」
「あいつを消せるなら協力は惜しまんよ
比呂君「父さんがそういう事は見えていたよ」
比呂保保「で 何をすればいいんだ?」
比呂君「簡単だよ あいつを殺せる武器と手順を整えて欲しい 僕は服従用の細胞を脳に埋め込まれてるからそういうことができないんだ でもいろんな装置と訓練によって指示を出して行動を取るくらいはできるようになった でもそれをこっそり行えるには同じ遺伝子を持つ相手くらいにしかシークレットで情報伝達することはできない 僕には肉親は居なかった でも今は父さんがいる」
比呂君「父さん 俺はわざわざこの五十年間倒産の前で高次元語を展開して使い続けたのは父さんにもこれが受信できるようにするためだったのさ ずっと五十年間父さんの高次元感覚を感知できるように訓練させてもらっていた 父さんは気づかなかったかもしれないが高次元の中では僕と父さんはずっと会話して訓練を続けていたんだ」
比呂保保「なんだって!!??」
比呂君「高次元状態の父さんはまだ低次元状態での感覚が訓練されてないから統一されていない 低次元の父さんは訓練をしたがらなかったから高次元の父さんとは寝ている時くらいしか連結されなかったけど、準備はもうとっくに終わってるんだ 父さんはもう必要な内容を全て知っているしそのために必要な訓練も終えている 僕が追加したさらに上の次元の世界はまだ全宇宙の誰も到達してない次元だ ハヤットたちもどんな計測器でも観測できない これは父さん 同じ遺伝子を持つ相手とに間にしか作れない次元だけど そこで僕と同等の能力を身につけるまでずっと父さんを鍛えてきた
あとは低次元の父さんが自分自身の高次元状態に繋がることができれば それだけで全て伝わる あとは宇宙転換のタイミングであいつを刺すだけだよ」
比呂保保「全くついていけん、、 何がなんだかまったくわからんが どうすれば高次元に繋がるんだ、、?」
比呂君 「瞑想でもしたり寝てればいいよ 起きたり何か活動したり思考したり考えことしたりするのがよくない なるべく寝ていてくれれば勝手に高次元の父さんがアクセスしてくれる」
比呂保保「ほう 寝てればいいのか それなら得意だ!」
比呂君「頼んだよ」
こうして比呂保保は数年間ほとんど眠って過ごした。
そして宇宙転換の当日が来た。