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その8

 イルは悔しそうにアンディを睨んだ。しかし、アンディはまだ涼しげな表情をしている。これには流石のイルも怒りが爆発した。


「よっしゃあ!わかったやってやるやってやらあ!ぜってぇ勝つ!!」

「あら良い掛け声ね」


 余裕綽々のその顔面めがけて、イルはパンチを繰り出したが、軽くかわされてしまう。その隙にパンチをしていない方の手で、髪を掻き上げた。額に紋が浮かび上がる。


氷尖片(アイス・ピックス)!」


 唱えるのとほぼ同時というとんでもない早さで、彼の周りに氷の破片が浮かび上がった。そのまま破片がアンディめがけて飛びかかる。

 けれども、それでは初めの方の流沫泡(バブル)と同じだ。アンディは楽々それらの攻撃をかわして見せる。が、イルもそれくらい解っていた。アンディが破片をよけるのに集中し、バランスを恣意的に崩した瞬間を見逃さずに唱える。


滑床(スリップ)!」

「へ?」


 アンディの足場がガチガチに凍りついた。重心がずれていたアンディの体は見事にひっくり返・・・らなかった。彼はすぐさま肘を曲げた。するとまた、水の紋ストリームが浮かびあがる。


「なっ・・・?!」


 観戦していたロジーナがまた妙な声を上げたため、シュールからじろりと睨まれた。慌てて口を押さえた彼女に、ビルがまた説明する。


「単紋使いって言うのは、一種の魔法しか使えない魔道士のことであって、一つの紋しか持っていない魔道士のこととは限らないんですよ」


 「とは言ったものの、結局一つの紋しか持ってない人の方が断然多いんですけどね」とビルは笑って付け加えたが、ロジーナの耳に届いたかは不明だ。とにかく、目の前にいる凄い魔道士の技を全て記憶しようと必死なようだ。真似は出来ずとも、学習は出来る。熱心な新人に、ビルはつい笑みをこぼした。


 外野の動きはさておき、水の紋ストリームの紋を発動させて唱えた呪文はこれだった。


海童の海壑(カム・オーシャン)


 すると一瞬で結界内に大量の水が発生した。どのくらい大量かと言うと、倒れかかったアンディが転ぶことなくぷかぷかと浮かぶほどの量である。子供用プールの水量など、軽く超えてしまっていた。

 けれどもこの魔法を使うこともまた、イルの計算内である。


「それを待ってたぜ、凝雨細工(アート)!」


 すると彼の作った水が、イルの手元に集まりだした。かなり多くの水がそこに集まり、剣の形を成したところでキンキンに凍りつく。凝雨細工(アート)は現存する水や氷、雪を使って物を作りだす魔法であり、大量の水があればその分立派で、大きな武器を作ることができる。イルは、これを狙っていたのだ。

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