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第55話:美香の覚悟

美香はいつかこうなる気がしていた。

翔太を守るために、ずっと嘘をついてきた美香。

母親として覚悟を決める。

写真を見た瞬間、美香は目を閉じた。


――やっぱり。


心のどこかで、ずっと思っていた。


いつかこうなるって。


太郎と再会したあの日から、美香はずっと怖かった。


「会わない方がいい」


最初にそう言ったのは、本心だった。


太郎と関われば、また何かが壊れる。


あの頃と同じように。


美香は昔から知っていた。


太郎は優しいけど、弱い。


流されてしまう人。




だから美香は、何度も距離を取ろうとした。


でも結局できなかった。


好きだったから。




今でも。




スマホの画面を見る。


街灯の下に立つ、翔太。


そして泣きそうな顔の陽菜。


二人とも、まだ何も知らない。


大人たちの嘘も。


裏切りも。

壊れた関係も。


全部、私たちが作ったものだ。




美香はゆっくり息を吐いた。


「太郎」


隣で固まっている太郎を見る。


「私ね」


小さく言った。


「こうなる気がしてた」


太郎が驚いた顔をする。


美香は少しだけ笑った。


悲しい笑いだった。


「だから本当は、翔太のことも言うつもりなかった」


ずっと秘密のままにするつもりだった。


翔太が普通に大人になるまで。


太郎の人生と交わらないまま。


それが一番、平和だから。


でももう遅い。


真美はすべてを壊しにきている。


美香はもう一度写真を見た。


翔太。


あなたを守るために、私はずっと嘘をついてきた。


でも――

もし守れないなら。


覚悟を決めなきゃいけない。


母親として。

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