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第53話:絶対許さない

「この人の子供、実は太郎の子なんだって」

美香を指差し陽菜に打ち明ける真美。

陽菜はとてもショックを受ける。

真美の「絶対許さない」という言葉が、家の中に重く残った。


太郎はしばらく何も言えなかった。


陽菜は不安そうに太郎の腕をつかんでいる。


「お父さん…」


太郎は陽菜の肩に手を置いた。


「大丈夫だ」


そう言ったが、自分でもその言葉に自信はなかった。


真美は廊下の壁にもたれながら、楽しそうに二人を見ていた。


「陽菜」


突然、真美が呼んだ。


陽菜はびくっと肩を震わせた。


「なに…」


真美は笑った。


「お父さんね」


陽菜をまっすぐ見ながら言う。


「浮気してるの」


陽菜の顔が固まった。


太郎はすぐ言った。


「やめろ」


だが真美は止まらない。


「しかも相手はね」


ゆっくり階段の下を見る。


そこには美香が立っていた。


真美は指をさした。


「この人」


陽菜の目が大きく開かれる。


「え…」


太郎は叫んだ。


「真美!」


だがもう遅かった。


陽菜は美香を見ていた。


混乱した顔。


そして震える声で言った。


「本当…?」


太郎は言葉を探した。


だがすぐには出てこない。


その沈黙が答えになってしまった。


陽菜の目に涙が浮かぶ。


「お父さん…」


太郎の胸が締め付けられる。


真美は笑っている。


「ほらね」


そしてさらに言った。


「しかもね」


太郎の心臓が止まりそうになる。


「この人の子ども」


真美の声は楽しそうだった。


「実は太郎の子どもなんだって」


空気が完全に凍った。


陽菜の顔から血の気が引く。


「……え?」


太郎は思わず叫んだ。


「やめろ!」


だが真美は狂ったように笑った。


「最高じゃない?」


陽菜は太郎を見た。


目が震えている。


「本当なの…?」


太郎は言葉を失った。


否定できない。


その沈黙を見て、陽菜の涙がこぼれた。


「嘘でしょ…」


太郎は陽菜に近づいた。


「陽菜、聞いてくれ」


だが陽菜は後ろに下がった。


「やだ」


声が震えている。


「もう…やだ」


そして泣きながら言った。


「家族ぐちゃぐちゃじゃん!」


その言葉は太郎の胸を突き刺した。


陽菜は走って部屋を出ていった。


「陽菜!」


太郎は追いかけた。


だが階段の下で止まる。


玄関のドアが開く音。


そして——


バタン。


外に飛び出していった。


太郎は慌てて靴を履き外へ出た。




夜の道。


陽菜の姿はすでに少し先にあった。


「陽菜!」


太郎は走った。


だが陽菜は振り返らない。

泣きながら走っている。


その時だった。


後ろから美香の声が聞こえた。


「太郎!」


太郎が振り返ると、美香の顔は青ざめていた。


そして震える声で言った。


「翔太がいない」


太郎の心臓が止まりそうになった。


「え?」


美香はスマホを見せた。


そこにはメッセージ。


送り主は——真美。


太郎の背筋が凍る。


メッセージにはこう書いてあった。


「翔太くん、さっき見かけたよ」


さらに続く。


「陽菜と同じ学校なんだね」


太郎の頭が真っ白になる。


そして最後の一文。


「二人とも壊れたら面白いね」


その瞬間、太郎は理解した。


真美の狙い。


それは——


子どもたちだった。


陽菜。

翔太。


二人を巻き込んで、すべてを壊そうとしている。


太郎は夜の道を見つめた。


泣きながら走っていった陽菜。

そして、どこにいるかわからない翔太。


太郎の人生で最大の選択が、今まさに迫っていた。


守れるのか。

すべてを。


それとも——

すべて失うのか。

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