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第32話:娘の目
娘にママは好きかと聞かれても答えられない太郎。
それだけで子供には十分だった。
数日後。
太郎は陽菜に呼ばれた。
「パパ」
「なに?」
陽菜は真っ直ぐ太郎を見る。
「浮気ってなに?」
太郎の胸が締め付けられる。
「……誰に聞いた?」
「ママ」
太郎は何も言えなかった。
陽菜は続ける。
「パパ」
「ママのこと好き?」
太郎は答えられなかった。
その沈黙。
それだけで、子供には十分だった。
陽菜は小さく言った。
「やっぱり」
その一言が刺さる。
太郎は嘘がつけない性格だった。
娘のためには嘘も必要なことを。
知っていたのに。




