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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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85/106

85:あと一年弱で会える。

 移住者の護衛のためにゼナスまで来てくれた王国騎士団が帰っていった。

 いや、次の移住希望者をまた護衛するために戻ったのだ。

 二ヵ月後。また百人弱を連れて彼らはゼナスへとやって来た。

 数日休むと再び戻り、また二ヵ月後に百人弱を護衛してゼナスへ。

 そしてまた数日ゼナスで休み、小隊長が「次で最後です」と言って戻っていった。

 またまた二ヵ月後、彼らは五十人ほどを護衛してゼナスに到着。

 その時には国王陛下からの手紙を持っていた。


 フェアリー・ワイバーンを使わず小隊長に託したのは形式的にその方がいい内容だったからだ。


「この地に王国騎士団を?」

「はい。増えた領民のこともございますし、彼らのここでの暮らしが安定してから、ですが」


 小隊長と父上殿の話の場に、俺も加わることになった。といっても聞いているだけだ。

 元々ここは対蛮族用の砦を築くために開拓が始まったようなものだ。それを歴代の着任者が私腹を肥やすために利用しただけで、まったく進んでいなかったけれど。

 資材がない、資源がない、人手が足りない、人手を増やせば食糧難になる。

 そんな言い訳を続けて。


 王国騎士団がこの地に駐屯する。

 その決定は急遽くだされた。

 というのも、きのこたけのこ聖戦が開戦したあの時期。エルフの里から戻って来たリディアレーゼが、不穏な知らせを持ってきたからだ。


「スケールワームが、こぞって南下しておるのじゃ」

「スケールワーム? 名前からすると、鱗を持つワームですか?」

「うむ。蛮族どもが砂漠を渡る際、スケールワームを乗り物として使う」


 こんな話を聞かされた時はぞっとした。

 ワームは大きく、一体で数十人の蛮族を運べるのだ。だから騎乗用として利用するのだとか。

 ただ、野生のワームを従順させるには時間がかかる。というより、ほぼ無理らしい。

 だから野生のワームをおびき出し、そこで雌雄を出合わせて卵を産ませる。その卵を奪って、孵化した時から育てるのだ。それでようやく、従えさせることができる、と。


「随分気の遠くなるような方法ですね。攻めてくるにしても、何十年と先になるんじゃ」

「たわけっ。人とモンスターの成長速度を同じと思うな。ワームどもは長く生きているから大きいのではない。食ったら食っただけデカくなるのじゃ」


 従属させるのは数体でいい。残りの卵と、その両親は餌になる。

 早ければ七、八年で百メートルに成長するだろうって。


 この件はすぐに王室に報告してある。で、決まったのが王国騎士団を常駐させる、というもの。

 そのためには砦や、騎士団の受け皿となる宿舎も必要になるわけで。

 これは大急ぎで砦を錬金しなきゃならないな。

 できれば大きな城壁も築きたい。

 岩をいっぱい砕かなきゃなぁ。






「ロックン、行くのじゃ!」

『ブォ』


 砦の建設を開始した。

 今や町と呼べるほどの規模になったゼナスの西にある山は、その大部分が岩でできている。

 山は、ゼナスより南にややせり出し、そこを起点に城壁を東に伸ばすことにした。

 そしてゼナスの真南の位置に砦を築く。そこは硬い土と砂漠の境界線にあたる。

 城壁から堤防を伸ばし、砂船が着岸できるようにもしよう。


 それらを錬金するのに必要な岩は、山から直接持ってくる。

 いや、()()()くるが正しいのかな?


 少し山の方まで登って、錬金魔法で岩を砕く。その砕いた岩を、エルフたちが精霊魔法でロックンを憑依させる。そしてロックン自らが城壁の建設現場まで歩いていく、と。

 俺も錬金魔法で岩のモビ●スーツを作って、魔力を駆使して動かす!

 一日一体を動かしただけで限界だけどね!


 だけどそんな努力が実り、城壁は毎日数十メートルの速度で伸びていく。ついでに俺の魔力量も増えていった。

 城壁の高さは十メートル。厚さは三メートルと、上に人が立てるようにもしてある。

 騎士団の詰め所兼宿舎は、城壁沿いに錬金。そこから城壁に直接上がれるよう、渡り廊下で繋ぐことにした。

 

「はぁ、はぁ……ディルよ。壁の途中にあるあのでっぱりはなんじゃ?」

「ん? ネズミ返しだよ。壁をよじ登って侵入しようとする奴がいても、あれで蓋をされたらその先は登れないだろう? まぁモンスター相手に通用するかどうかはわからないけど」


 ただ、あのネズミ返しになっている部分の上表面は、ドリアンも真っ青になるような無数の棘がある。

 反り出たネズミ返しを攻略しようと手を伸ばせば、棘に刺さるっていうね。

 さらに、城壁の上から神経毒でも垂らしておけば、刺さった瞬間、毒に侵されじわじわと。

 くく、くふふふふふふ。


「お主……悪い顔をしておるの」

「ディルは時々ワイルドになるにゃ~。そこがまだカッコいいにゃよぉ」

「カ、カッコいい……ど、どうも……」


 目がハートになっているキャロから逃げるようにして作業へと戻る。

 だけど毎日城壁錬金ができるわけじゃない。他にもやることはたくさんあった。


 子供たちを通わせる学校を錬金し、人も増えたし役場なんてのも用意してみた。

 元の男爵領から来た人たちの中には、自分の店を持っていた住民もいる。

 パン屋、雑貨屋、野菜や果物を売るお店、日用品や衣類の店、そして飲食店。


 ずっとお金を持たずに暮らしていたゼナスの人たちにも、ついに通貨を使う時が来たんだ。

 畑仕事や砦づくりをした日には、当面の間、日当として報酬を払うように。

 でもいきなりお金を手にさせるのではなく、まずは大人たち全員にお金の使い方を教え込んでからだ。


 少しずつ、ゼナスの先住者たちもお金の使い方を覚えてきた頃。

 約一年半をかけて、ついに城壁と砦、騎士団の詰め所兼宿舎。そして、彼らの家族を迎え入れるための家が完成した。


「はは。これはもうちょっとした城塞都市、だな」


 人口五百人をようやく超えるかどうかの、こじんまりした都市だけどね。

 王都の方ではもう秋も終わるころか。

 年末には王国騎士団百人が着任してくる。同時に彼らの家族も一部が移り住む。

 単身赴任の人もいるけどね。やっぱり家族揃ってという人もいるし、百人の騎士たち世話ってのも必要だからね。食事や掃除の面で。

 

 来年にはジークとティファニーのお披露目会に出席することになる。

 俺も同行するつもりだ。


 仮初の婚約者候補になって二年とちょっと。

 この間も変わらず、俺たちは手紙のやり取りを続けていた。

 最初はちょっと気恥ずかしさもあったけど、まぁ文字だけのやりとりで相手の顔をみているわけじゃない。

 だからなのか、すぐに普段通りの文章を書けるようになった。


 まぁ、顔を見なくて済むからという理由だけじゃないんだろうな。


 エヴァンゼリン嬢。


 彼女の誠実な人となりが、俺に安心感を与えてくれるのかもしれない。

 彼女ももうすぐ十歳か。

 たった一度しか見ていないけど、ずいぶんん大きくなっただろうなぁ。

 うちのティファニーだって成長しているんだし。


 あと半年たらずで会える。

 そう思うと、不思議と顔が緩んだ。

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