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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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74/103

74:最高にカッコいいけど、最高に燃費は悪い。

 王都を出発し、馬車に揺られること一時間。

 突然、馬車が停止した。


「どうしましたか?」


 と前方の小窓を開け、御者のセダストンに声をかける。

 

「それがですね、ディルムット坊ちゃん……」


 振り返ったセダストンは、困ったような表情を浮かべていた。

 何かあったのかな?

 扉の窓を開けて顔を出すと、街道を塞ぐ一台の馬車と、その前に仁王立ちした二人の人物がいた。

 大人と子供。見覚えのある顔だ。


「どないしましたん?」 

「はぁ……顔を合わせずに帰れると思ったのに」

「あぁ、出はったんですか」


 そう。出たんだよ。あの親子が。


「ディルムット! よくも伯父であるこの俺を騙してくれたな!」

「あれれ~? 僕に伯父なんていたっけかなぁ」


 と、とぼけながら馬車を降りる。

 街道のど真ん中で仁王立ちしていたのはオズワルズと、その息子のランドファスだ。


「と、とぼけるな! 俺は! お前の! 正真正銘伯父だ!」

「え……そんな強調して言うことでもないんじゃ……伯父はいないって言われて、そんなに寂しかったんですか? うわぁ、ドン引きだなぁ」

「だ、黙れクソガキ! いや、そんなことはどうでもいい! 岩塩で儲けているんだろう。分け前を寄越せ。お前もシュパンベルク家の者なら、伯爵家を支援しろ!」

「そんな家訓ありました? 僕はおじい様からも聞いたことありませんし、そもそも我が家は伯爵家から完全に別家しているんです。これ、二年前に父上も言っていたでしょう? もう忘れたんですか?」

「そ、それが血の繋がった家族に言う言葉か!」


 家族? あいつ、今家族って言ったか?

 どの面下げて家族なんて言っているんだ。バカじゃねーの。いや、バカなのか。


「おい、ディルムット。パパがこう言ってやっているんだぞ。金を寄越せ」


 ……これが九歳児のセリフなんだから、驚きものだね。

 

「はぁ……わかりやすく言ってさしあげます。誰がてめぇらなんかに金をやるもんか、バーカ」


 と言ってやると、二人はしばらく口を閉じて、それから、俺が言った言葉の意味を理解したらしく、顔を真っ赤にして喚きだした。


「バ、ババ、バカ、バカとはなんだバカとは!」

「オ、オレ様のことを、バカって言ったのか? バカって言ったのかぁ!?」

「あぁ、言ったよ。バーカバーカ。ランドファスのバーカ」


 うん。我ながら子供じみているな。反省しよう。

 よし、反省した。


 そうだ。どうせ子供じみた嫌がらせをするのなら、アレを錬金しよう。


「みんな、馬車から降りてください。あ、セダストン。馬車のポールを馬から外してくださいね」

「え……ま、まさか坊ちゃん。アレをやるんですか?」

「あわわわわわ。首都で購入した土産を下ろしますさかい、ちょっと待ってぇな。ロバート卿、手伝ってぇ」

「アレか。ディルムット様。角は一本。一本のユニコーンを希望いたします」

「はぁ……どうして殿方は、アレがお好きなんですかねぇ?」


 ロバート卿は少年のような瞳を俺に向け、それからフィッチャーに突かれ馬車から荷物を下ろし始めた。

 その間に俺も仕込みをしておく。

 この馬車にはある()()をはめ込んだ、俺が錬金した馬車だ。

 本物の馬車をじっくりしっかり観察して、セダストンに何度も何度もダメだしをされて錬金した傑作だ。


 セダストンが馬車の本体と馬とをつなぐポールを外したら、馬車にはめ込んだアレ、浮遊石に魔力を流し込んで浮かせる。


「うう、う、浮いた!?」

「うわぁ、パパ、オレあれが欲しい! おいディルムット。その馬車を寄越せ!」


 というランドの声を無視。

 そして、壊れる危険のあるような荷物が全部下ろされると「坊ちゃん、いいですよ~」とマーガレットが教えてくれた。


 クク。クククククク。

 この二年で俺が錬金に錬金を重ねて作り上げた最高傑作。

 とくと見よ!


「錬金――うおりゃあぁぁぁ!」


 気合の声と共に両手を付き、馬車を包む魔法陣を出現させる。

 光の中、馬車の形が変わっていった。


 腕が生え、足が生え、頭には一本の角。

 鎧を着た人間っぽく見えなくもないそれは、全高三メートル弱。

 それぞれの関節部分はジョイント式で、パーツは直線的に錬成してある。

 これを見ても誰も思うまい。


 これが、剣と魔法のファンタジーに不釣り合いな存在だということを。

 そう。これは……。


「見よ! これが僕の二年間の集大成。ロボット・ゴーレムだ!!!」


 そう。俺が子供の頃にあこがれた、ロボットプラモデル。

 あれを錬金魔法で再現したものだ!

 細部はほとんど想像だけど。

 

「素晴らしいです、ディルムット様!」

「いやまぁ、今回も凝りましたねぇ」

「ははは。馬車が元に戻るのか心配ではありますが、悔しいことにカッコいいのは間違いないんですよねぇ」

「私にはわかりません……」

 

 概ね好評なんだけど、女性には人気がない。キャロは大興奮するけど。


「ゴ、ゴーレム!? そ、そんなものを作って、ど、どうしようというのだ!?」

「パ、パパ。オレ、やっぱりアレ絶対に欲しい!」

「このロボット・ゴーレムは僕の命令にしか従いません。僕のゴーレムですから。さぁ、ゴーレム。言っても理解しない連中には、身をもってわからせてあげましょう」


 そう言って俺はゴーレムの肩に飛び乗る。

 このために体も鍛えたんだ。

 この世界の人は、地球人の数倍、数十倍も身体能力が高い。もちろん、何もしていなければ地球人とそう変わらないけど。

 でも鍛えると、二メートルの高さだってジャンプできるんだ!

 ちなみにロバート卿は、三メートル以上飛んでいる。


 ロボットの肩には手すりも付けてある。この手すりも、バックパックからのエネルギーを通すパイプっぽくディテールして、カッコよくした。

 あぁ、最高だ。


 そして何が最高かって。

 こいつは……

 動く!!

 

「う、うう、う、う、動いた!?」


 ロボットが前進する。

 ガション、ガションという効果音が欲しいところだけど、元は木なのでドスンドスンという音だ。

 浮遊石を使わなきゃ、こんな重い物を動かすのは難しい。

 

「うわぁー、カッケェ!」


 ランドファスはすっかりロボットの虜のようだ。

 だったら、俺のロボットに踏みつぶされるのは本望だろう。

 

「やっつけろ!」

「「え」」


 二人目掛けて、ドスンドスンドスンとロボットが駆けだす。

 実を言うとこれ、ロボットの構造を高速で錬金しなおして動かしているだけ。

 頭の中で動いているイメージをすることで、常にそうなるよう形を錬金し続けているんだ。

 だから……もの凄く魔力の消耗が激しい!!!

 そして、直進しかできない!!!!


 慌てて左右に逃げた二人の間を通過し、奴らの後ろにあったボロボロの馬車の前で停止。

 空手チョップで馬車のポールを破壊すると、馬が俺を見て頭を下げた……気がした。そして逃走。

 御者も同じく逃走。それを確認してから後退。そして全力タックル。

 護衛なのか、騎士っぽいのが二人いたけど、そっちも既に逃げている。馬が驚いちゃったからね。

 魔力でコーティングされた俺のロボットは、同じ木製ならこちらの方が強い。

 遥か彼方に吹っ飛んだ奴らの馬車。

 

 うん。あの方角は山だな。大丈夫。誰にも迷惑かけないはずだ。

 たぶん。


「うあああぁぁぁぁぁ。なけなしの金で用意した馬車があぁぁぁ」


 そういえば、二年前にゼナスへ来た時、うちから馬車を奪っていったらしいけど。あれはどうしたんだ?

 もしかして売ったんだろうか。


 ロボットを頑張って回れ右させ、オズワルズに向かって突進。


「悪党退治だ。行け、ロボット・ゴーレム!」

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ」


 ドスンドスンとオズワルズを追いかける。

 真っ直ぐ逃げてくれるから、真っ直ぐ追いかけられるぞ。

 ようやく右に向きを変え、ランドファスの方へ向かって走り出した。


 ゴーレムを止め、ゆっくり体の向きを変える。

 そして逃げるオズワルズを再び追いかけた。その先にランドファスもいる。


「ふふ、ふははは。あぁーっはっはっはっは。そうれそうれそうれぇ。逃げろ逃げろ」

「ひぎいいぃぃぃぃっ」

「パ、パパ!? こっち来ないでよ。うわあぁぁぁぁ」

「ぎゃははははははははははは」


 楽しいなぁ。楽しいなぁ。

 やっぱロボットは最高だぜ!

 やがて二人が蛇行しながら逃げ始めたので追うのをやめ、四人のところへと戻った。


「あぁ、疲れた。魔力も限界だ」

「ディルムット様、素晴らしい動きでした!」

「いやぁ、これが『自動』で動くようになれば、いろんな意味で大儲けするんですけどねぇ」

「兵器利用は無理だよ。錬金魔法が使える人じゃないと、できないことだし。あと今のでほとんど魔力使い切ったからね」


 最高にカッコいいけど、最高に燃費は悪い。


「あぁー、ディルムット坊ちゃん……馬車、元に戻してくださいませんか?」

 

 セダストンが苦笑いを浮かべ、そう言った。


 「……わかった。ごめん」


 残った魔力を絞り出し、なんとか馬車を元通りにした。


「坊ちゃま。角が残ったままですよ」


 元通りじゃなかった。

 でも、もう、無理……。

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― 新着の感想 ―
錬金し直して形状変更して前進!! その発想はなかったw それならいっそ、パンジャンドラム方式でも威嚇にはよかったんじゃないかと…… ※英国面マニア以外に受けませんねw
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