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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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65:女の子と文通!?

「ディル様ぁー! コロコロ部隊来たよぉー」


 村の北側で作業をしていた俺の所へ、チクが小走りでやって来る。

 その足元にはサッカーボール数倍の大きさになる玉が転がっていた。それを転がしているのはコロコロたちだ。

 山から村へ連れ帰ったコロコロは、雄雌それぞれ三匹ずつ。

 すぐに各々の番が十個の卵を産んでくれ、生まれたコロコロは間もなく大人になる――という段階まできた。

 まぁ各住居にコロコロひと家族とまでは、まだいかないけどね。

 そうなる日も近いだろう。


「ご苦労さん。立派なウン玉ですね。じゃあ溝を掘っているんで、そこへお願いするよ」

『キチチ』


 ウン玉。それはコロコロたちの()()でできた玉。

 村の子供、特に男の子たちはストレートに「うんこ玉」って呼ぶけど、そこはまぁ、いろいろ配慮して「ウン玉」って呼ぼうねってことにした。


 このウン玉、見た目はほぼ普通の土と同じ。

「うん」なのにニオイもないし、べとつきもない。むしろ少し乾燥しているような感じだ。

 最初に村へ来た大人のコロコロのうち、雄たちはこうしてウン玉運びを手伝ってくれる。

 彼らがウン玉を運ぶ速度は意外と早く、チクが小走りするぐらいのスピードだった。


 コロコロたちがウン玉を、俺が錬金魔法で掘った溝に転がしていく。その際、ウン玉をほぐしながらばら撒いてくれるのだ。

 そこにジョーロを使って、水をかけていく。

 しっかり湿らせたら、溝を掘った時の土を戻して終わり。

 こうすると、ウン玉の養分が周囲の土に浸み込むことを砂漠の民に教えてもらった。


 砂漠で農作物を育てられた理由ってのが、これだったんだ。

 さすがに、コロコロのウン玉があっても砂では野菜は育たない。でも、狭い土地と少ない水とで生き永らえたのは、やっぱりコロコロのおかげなんだろうな。


「な、ディル様。なんでこーんな何にもない場所に、うんこ玉撒くんだよ」

「ウン玉ね。ウン玉。うんこなんて言ってたら、女の子に嫌われるぞ」

「いーよ、別に」


 よくないし、数年後後悔するからな。絶対。


「んっんっ。()()()を何故、畑でもない場所に撒くのか。実にいい質問だね、チクくん」

「な、なんだよ。急に変なしゃべり方してさぁ」


 畑は村の南側から東側に、L字のように広がっている。しかも砂漠の民が五十人近く来てくれたので、畑は倍近く拡張。今もなお、広げている最中だ。


 ここは村の北側。ここからだと西の山から落ちてくる滝も見える。

 こちら側は畑にはしないが、代わりにここは――。


「牧草地、にするんですよ。チクくん」

「ぼく、そう……え!? じ、じゃあ、これからは牛を遠くまで連れていかなくてもいいってこと!?」

「今すぐじゃないけどね。でも将来的にはそうなるといいなって思っています」


 そのために、先日物資を届けに来てくれたアスデローペ卿に、温暖な地域でもよく育ち、且つ家畜が好む牧草の種を探してほしいと依頼した。

 卿は心当たりがある、そういって笑顔で帰った。

 採掘はまだ始まっていないけれど、お試しの岩塩を100kgほど渡してある。質のいい方をだ。

 笑顔だったのは、岩塩があったからだろう。


「牧草がうまく育ってくれれば、牛の数だって増やせる。鶏もね」


 豚は……食用肉は砂漠のモンスターで十分だしなぁ。いらないかな?

 できれば山羊も飼いたい。チーズの種類が増すしね。


「おーい、ディル坊」

「あ、親方。こっちですよ、こっち」


 村の方から親方がやって来た。何かあったのだろうか?


「坊。村の壁を強化するための石が溜まりすぎててな。邪魔だってんで、そろそろ錬金してくれねぇか?」

「あ、忘れてました! やることがたくさんあって、古い記憶から順に消えていってしまいますね」

「おいおい。まだ若ぇんだから、年寄りみてぇなこと言うな。まぁ確かにずーっと大忙しだったもんなぁ。仕事を頼みに来て言うのもなんだが、たまにゃしっかり頭と体の両方を休ませるんだぞ。いいな?」


 そう言って、親方は大きな手で俺の頭を撫でた。

 その手は凄く硬くて、とても暖かかった。

 

 親方は両親と同じように、俺のことを心配してくれる。優しくしてくれる。

 そして、頼ってくれる。

 それがたまらなく嬉しい。

 前世では得られなかったものだから。


「ありがとうございます、親方。でも、今日は頑張らせてもらいますね」

「ほどほどにしとけよぉ」

「チク、コロコロたちを村まで護衛してあげてね」

「まっかせてくれ、ディル様!」


 村へ戻って、だがそのまま南門から出ていく。

 門のずっと先に、山積みになった岩がこんもりと置いてあった。


「さぁ、やりますかね――錬金、魔法!」


 タンっと地面に両手をつけば、巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 山積みだった岩が、まるで魔法陣に吸い込まれるかのように消えると、次の瞬間にはズゴゴッと音を立てて壁が生えた。

 厚さ五十センチ、高さ三メートル、横幅は五メートル程度。


「なんでぃ。この程度しか作れねぇのかよ」

「仕方ないですよ。岩を柔らかくする成分を含んだ部分は、抽出してありますので。あと組織の粒同士の接着が弱いものや、隙間の多いものは圧縮して固めてあるので、元の表面面積よりは小さくなってますから」

「よくわからねえが、まぁ岩はいくらでも出るからな。またすぐ溜まんだろ」


 村をぐるっと囲む壁も、着々とできてきた。

 将来のことを考え、壁は今あるものより五十メートル外側に広げている。おかげで壁のすぐ外側が畑になってしまった。

 まぁ元々、結構な広さがあったんだよ。その広さに対し、家屋があるのはほんの一部だけ。人が少なかったしね。

 畑で野菜がしっかり採れるようになったら、移住希望者を募集するつもりだ。その辺りは国が募ってくれるから、こっちは受け入れるだけでいい。

 


 ――とまぁ、毎日忙しく過ごしています。

 そうだ。前回もらったお返事にあったもの。さっそく試してみました。

 同封してあったレースを付けてみたのですが、どうでしょう?

 家族はみんなかわいいと言ってくれるのですが、身内贔屓だと思うので、客観的な意見を聞かせていただきたいなと思って。


 またぜひ、お返事をください。


                   ディルムット・シュパンベルク



「フィッチャー。手紙とこれをお願い」

「はいはい。自分もなかなかいいと思いますよ、これ。見た目の派手さはありませんが、涼し気ですし、レースを口元に着けたことでかわいさもありますから」


 エヴァンゼリン嬢の返事に、ポーチとして使えるものはどうかと書いてあった。

 その際、ポーチの口にレースを付けてみたらかわいくなって、貴族の令嬢が欲しがると思う――とも。

 で、作ってみた。もちろん、錬金で。

 俺に手作りなんて、無理だからさぁ。

 

 封筒に水色のレースリボンも入れてくれていたので、それを使ったんだ。

 いい返事があれば、改めて公爵様にレースリボンの発注をお願いしようと思う。

 それとは別にもうひとつ作ったのは、竹のランタンだ。

 竹筒に、『点』で絵を描いて、それに合わせて穴を空けた簡単なものだ。

 

 気に入ってもらえるといいけど。


「くくく。ディルムット様、お手紙のお返事書かれているとき、楽しそうですねぇ」

「そりゃねぇ。辺境の特産品のこと考えるのは、結構楽しいよ。どうなるかがわからないからこそ、期待もあるっていうか」

「いや、そういう意味じゃなくって……はぁ。八歳の男の子じゃ、まだ色恋は早いですかねぇ」


 い、色恋!?

 な、何を言っているんだフィッチャーは。

 ただ手紙を書いているだけじゃないか。ラブレターでもないんだし。

 文通だよ、文通。

 女の子と文通しているだけじゃない……か……。


 お、女の子と文通!?

 女の子と!


 い、いや。ただの手紙のやり取りだから。

 俺は八歳、エヴァンゼリン嬢なんか五歳だぞ。そんな恋愛感情なんて、ないに決まってるじゃん。

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