63:ようやくゼナスの開拓を
ドワーフの住居兼石切り場から村まで、竹のローラーコンベアを錬金して通し、毎日じゃんじゃん石を運び込む。
アスデローペ卿が来たときのことを考え、少し幅の広い竹ローラーコンベアも砂漠まで繋げた。
畑仕事の合間の作業ということもあって、一日二軒の錬金が精いっぱい。
それでも、一ヵ月もあれば村人だけでなく、騎士やその家族の住居も完成した。
これから来るであろう、出稼ぎのためにやってくる砂漠の民用の住居もだ。
どの家も同じ素材で、形も二パターンしかない。でも、統一感があるから見た目的にはいい感じだ。
「日本の住宅って、個性あり過ぎて統一感とかなかったもんなぁ。どちらかというと外国の観光地みたいに、統一感のある建物がずらっと並んでいる方が綺麗に見える。と、思うんだよね」
「何の話にゃ?」
「主は時々よくわからぬことを口走るのぉ」
「……あ、うん。前に見た絵本の話なんだ。気にしないで」
はぁ……この二人が来てから、常にずーっとそばにいる。独り言も気を付けないとな。
「あ、コロコロは元気にしているかな? 新居は気に入ってくれただろうか」
「コロコロかえ。既に卵を産んでおったぞ」
「本当に!? この調子だと、各家庭にいきわたりそうだ。でも、増え過ぎたらどうすればいいんだろう?」
「大丈夫にゃ。コロコロは意外と賢いにゃ」
「うむ。増えすぎれば当然、餌不足に陥る。そうはならぬよう、ちゃーんと産卵数を調整するでな」
至れり尽くせりだなぁ。
コロコロは時々、日光浴をするらしい。そのときには、サラサラの砂の上でゴロゴロするんだとか。
子供たちが増えるなら、砂漠から追加で砂を持ってきてやらないとな。竹ローラーのおかげで、砂を運ぶのも苦にならないし。
それは騎士に頼むとして、今日からまた山に登る。
村の住居、そして水路と川、さらに水を貯めておくための池も準備済みだ。
村の人が畑仕事をしている間に、俺はそっちを進めていた。地面の土をくり抜く様に錬成し、丸くしておけばコロコロが動かしてくれる。その土は粘土として使えそうだとリディアレーゼが言うので、水が来たら村を囲む壁材として利用するつもりだ。
水を引く準備も整ったので、今度は山の上で川を堰き止めている大岩をどかす作業へと向かう。
「じゃ、始めますね」
ちょろちょろと水が流れる滝の上で両手をつき、まずは崖の一部を錬金魔法でごっそりくり抜き、形を整える。
滝つぼの下は岩塩洞窟があるので、水の流れを少し北にずらすのだ。ほんの十数メートルほどね。
ついでに、以前は地中を流れていた水を、今度は地表を流れる川に変える。
そのために、登ってくる間ずーっと川を錬金しながら歩いて来たんだ。いやぁ、大変だった。ここまで二日半かかったからな。
水が流れやすくするため、傾斜をつけるため崖上の土をごっそりくり抜いたんだ。
あと、なるべく地面に座れないよう、川底部分の土は錬金魔法で圧縮して固くしてある。特に水はけの悪い土の成分を使って。
「ふぅ。それじゃあ、まずはあの岩を砕きましょうか」
「しかしどうやって砕くのじゃ? 大きな岩ぞ」
「そう難しいことじぁありませんよ。錬金魔法で、岩の成分分解をするんです」
鉱石から金銀を抽出したように、岩からあらゆる成分を抽出する。すると勝手に粉々に砕け、堰き止めていた水によって押し流された。いい具合に砂利として川底に溜まってくれるだろう。
「は、はは。本来の錬金とはまったく別ものじゃの」
「魔法、だからね」
「すっごいにゃ~。んで、後はあっちの方かにゃ?」
キャロは西側にある滝のことを言っている。
お隣のリーガル領は、ずっと前から水害が比較的発生しやすい土地柄だった。理由は、山から流れる雨水や雪解け水のほとんどがゼナスではなく、リーガル領に流れていたからだろう。
リーガルの領主と父上殿が手紙でやり取りし、流れる水の二、三割をゼナスの方へ引き入れることになった。
手始めに、見えている滝の水をこっちに流してみようってことに。
まずはこの川の上流へ辿りながら、川幅を広くするため土を錬金しまくる。
抜き取った土は丸く錬成して――。
「じゃ、コロコロ。お願いしますね」
掌サイズだったコロコロは、すっかり大きくなって大人の両手ほどのサイズになっている。
この山から連れ帰った初代コロコロの雄二匹に来てもらい、土の移動を手伝ってもらった。俺たちも土団子を転がしながら、西の滝へと到着。
運んだ土団子を錬金し、カッチカチのブロックにして滝へと流れる水を堰き止めた。
残りの土は、水が未練がましく滝の方へ流れていかないよう、それまで川だった場所の盛り土にする。
「どうですか? 川幅足りますかね?」
「ん~……大丈夫そうにゃ~」
「うむ。むしろまだまだ余裕はあるの」
「よかった。ですが今はよくても、春先の雪解けで水量が増すかもしれません。今年はいったん、ここまでにしておきましょう」
そう話すと、キャロとリディアレーゼがキョトンとした顔をする。
砂漠で生まれ育った二人は、雪を知らないのかもしれない。
見せてやりたいな、雪。きっとビックリするだろう。
「さ、村へ戻りましょう。帰りながら、川がどうなっているか確かめないと」
「うむ。そろそろ里から人手が到着するころであろう」
「キャット・ルー族からも十三人ぐらい来るらしいにゃ」
「ありがたいです。水が村までくれば、作物の成長もよくなるはずですから」
自給自足ができるようになれば、ようやくゼナスの開拓を進めることができるようになる。




