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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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119/128

119:さ、さぁて。帰ろうっと。

「それでは公爵様。転送の魔導具、よろしくお願いいたします」

「うむ、任せておくがよい。これでわしも、ゼナスをこの目で見ることができるの」


 予定より五日も長く王都に滞在した。

 そろそろ帰らないと、やりたいこと、やらなきゃいけないことは山積みだ。


「公爵位はわたしが継ぐ。つまり頼むのであればわたしを介するべきではないのか?」

「ヴァルドリヒ様が?」


 いや、考えたら当然のことか。

 ヴァルドリヒ様は北部に行かれていたから、爵位を継いでも領地に滞在できないから継いでいなかっただけだろうし。


「いいか。わたしの目の届かぬ場所で、密会など絶対に許さぬからな!」


 なんで密会。

 子供がそんなこと、するとでも思っているのか。

 そんな発想をする大人の方が、不純だぞ!


「お父様」

「まぁ魔導具のひとつぐらい、置いてやらんこともない」


 エヴァ嬢が呼んだだけなのに、手のひらクルーが過ぎる。


 転送の魔導具をひとつ、ヴァルドリヒ様へ預ける。これも騎士団の詰め所近くに設置された、王都と行き来する魔導具の隣に置いてくれるそうだ。


「まぁまずこちらから不届き者どもが悪用することはないと思うが、そちらも設置場所には十分気を付ける様に。二十四時間体制での監視は必須だからな」

「はい。こちらも騎士団の詰め所近くに、部屋を錬金しようと思います」

「……錬金するのか」

「はい。地下室を錬金しようかと」


 そう伝えると、地下室は錬金するものじゃないとか、感覚がおかしいだのぶつぶつ言われた。

 おかしいことなんて、一言も言ってないのにな。


「ディルムット」

「はい、ヴァルドリヒ様」


 ヴァルドリヒ様が身を屈め、俺と目線を合わせる。それから小さな声で「大公に気を付けろ」と仰った。

 気を付けろって、どういうこと?

 ヴァルドリヒ様、大公が嫌いだからって俺が大公嫌いになるような根回しはよくないなぁ。


 良くないのだけど……あの時、気のせいかもと思った舌打ちを思い出してしまった。

 気のせいだと思いたい。

 あんな優しそうな顔で笑う人に、裏があるなんて考えたくなかった。


 だけど。

 人間って生き物には外面なんてものがある。

 前世の両親だって、俺の一番古い頃の記憶だと、結構外面を意識していい人ぶってた頃があった。


「わたしの思い過ごしであればいいのだがな」


 ヴァルドリヒ様はそう言って、俺から受け取った魔導具を見つめた。

 もしあの時、大人数対応の魔導具も錬金できるかもしれないと、そう答えてたらどうなっていたか。


 どうにかなっていたかもしれないし、どうにもなっていなかったかもしれない。

 はぁ……ヴァルドリヒ様も俺も、思い過ごしであってくれぇ。






「ではエヴァ嬢。魔導具の設置場所を錬金したら、起動具合の確認も兼ねて遊びに行きますね」

「はい! た、楽しみにして、おりましゅ。はふぅ、ひと、ひと」


 あはは。また人を食べてら。

 意識すると、まだ緊張するようだなぁ。

 意識すると……いったい何を意識しておいでか!?


「兄さま。成功したらホーヘンベルク家への転送魔導具も作ってよぉ」

「兄上、僕からもよろしくお願いしますっ」

「はいはい」


 そのために、ヴァルドリヒ様からミスリルをちょこっとだけいただいている。

 たくさん錬金すると、他の貴族にも気づかれてしまうし、これ以上は錬金しないようにしないと。


「ディル、ジーク、ティファ。荷物の積み込みも終わりましたし、そろそろ出発しますよ」

「母上、すぐ行きます」

「道中、気を付けたまえ。ディルムット」

「エーリヒ様、ありがとうございます。あの件、今度伺った時にお聞かせください」


 見送りに来てくださったエーリヒ様に、呪い発見器の件を託す。

 転送の魔導具をヒントに、あれこれ試行錯誤して錬金したものだ。


 呪いを発見するのは神聖魔法で、付与するのに高位司祭七人がかりでやってもらっている。

 ひとりで付与してもらうと、呪いの発見が一回発動。

 でも七人以上でやってもらうと、魔石が割れた。

 ただ発動すると十五時間ほど持続効果があるので、朝から発動させれば、食事や政務で触れるものを常に調べることはできる。

 週に一度、また司祭たちに付与してもらわなきゃいけないけど、まぁ王都の神殿が協力してくれるのでそこは大丈夫だろう。


 ただ、一週間持つと思う、って段階だからそのあたりの実際のことを聞く必要があった。

 それから、王太子殿下の「留学先から戻って来た」発表も数日後を予定している。

 その際の貴族たちの反応も気になるところだ。


「何故?」というような反応をした貴族がいれば、要監視対象だ。

 さて、誰かボロを出す奴がいるかな?


「エヴァちゃん、今度は私も遊びにいくわね」

「えぇ、きっと来てね、ティファちゃん」

 

 お互い同じ歳だし、すっかり仲良くなったみたいだな。

 公爵家からなら王都も近いし、令嬢方のティーパーティーにも参加しやすくなるだろう。


「エヴァ嬢……」

「は、はひ、ディ、ディルしゃま」


 あ、無意識に手を掴んでしまった。

 こ、この手をどうしたものか……俺はどうするつもりだったんだ?

 うぅん。

 うぅぅーん。


「エヴァ嬢。しばらくまた会えなくなりますが、きっと待っててくださいね。それから騎士団の方に稽古をつけていただいているようですが、決してご無理をなさいませんよう。怪我なんてもってのほかですからね」

「ひゃい。き、気を付けましゅ」


 その返事に、自然と顔が緩む。

 そして掴んだ手のやり場として、甲に軽く口づけをした。

 なんかこういうの、アニメで見た気がしたからさ。たぶんいいんだよね? これでいいんだよな?


 ぼんっと煙でも噴出しそうな勢いでエヴァ嬢の顔が真っ赤になる。

 その後ろで、般若のような形相を浮かべたヴァルドリヒ様と目が合った。

 

 さ、さぁて。帰ろうっと。


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